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もし美醜反転の世界で、その世界の”不細工”な女の子と仲良くなったら?

作者: 橘 月菜

途中、視点変更で時系列が前後する時があります。

 ある日、RPGのオーガに似てるよなお前って言われている俺が……美醜反転した世界に、来たら。

 イケメン扱いされるのは、当然だったみたいだ。

 クラスの女子からイケメン扱いされて、凄く天狗になっていたんだと思う。


 調子に乗った俺はクラスで一番不細工な女の子、俺には美少女に見える子に声を掛けたんだ。 元の世界では不細工な俺に、元の世界では美少女が俺を”イケメン”扱いするのを期待して。


☆ 大賀 現在:教室


「何の本を、読んでいるの?」

「えっ、大賀君? えと、○×▽ってラノベ読んでるの」

「へえ、それ今度アニメ化する奴でしょ? 知ってる知ってる!」


 そう言いながら俺は、女の子に顔を寄せる。

 女の子からは、香水の匂いでは無く石鹸の香りがした。

 髪の隙間から覗く、女の子の小さな耳が赤く染まり始める。


 ―――耳を赤くして、可愛いなこの子。 みんなこの子の事を不細工で気持ち悪いって言うけど、俺にしてみたら凄く可愛い女の子。 この子を狙うライバルも居ないし、本当にこの世界に来て良かった!


 この子の名前は、七海シオリさんって言うんだけど。

 艶のある黒髪をセミロングヘアにした大人しい子で、制服の上からでも分かるほどの、大きな胸をしている。 豊満な胸に肉付きのよいお尻に反して、顔立ちは幼く。 元の世界でなら、きっとどこかの芸能事務所にスカウトされていそうだ。

 もし、七海さんが水着の写真集を出すなら……多少高くても、買っていただろう。


 そんなアイドル顔負けのナナミさんは、元の世界ではきっと男にモテモテで選び放題だった筈。 性格も今とは違っていたに違いない。

 だけど……この世界の男達に七海さんは、根暗アニメオタとか見た目が気持ちが悪いと陰で言われているのを俺は知っている。 たぶん……七海さんも、男達にそう言われている事は知っている筈だ。

 俺も元の世界で、クラスの女子に「オーガ、まじキモンスター」と陰口言われていのを知っていたから。


「そ、そうなんだ……♪ 大賀君も、ラノベを読んでいるの?」

「うん、読んでるよ。 そうだ……良かったら、七海さんのお勧めのラノベを教えてくれないかな?」

「わ、私のお勧め? えーと……何が良いかな……」


 七海さんは、少し嬉しそうにふんわりとした髪を揺らしながら華奢な肩を揺らした。 ラノベのページを捲る白魚のような手が、少し震えている。

 陶磁器のように白い頬が、赤く染まり始めた


 イケメンの俺に話し掛けられて、七海さんが嬉しそうだと俺は自己満足する。

 元の世界ではありえない状況に、俺は心の中で暗い喜びを感じた。


 それから数分、七海さんと話をした。

 特にアニメやラノベの話だ。


「それで……それで、そのリュークって人が……」


 七海さんは一生懸命、俺にお勧めのラノベの紹介をしていると……教室の扉が開いた。

 

「大賀!先生が、用事があるってさ」


 どうやら、俺の事を先生が呼んでいるらしい。

 女の先生なんだが、良く俺に雑用を手伝わせるのだ。

 その先生は俺視点だと、色気のある女の先生なので一緒に居る事に苦痛を感じない。


「ああ、今行くよ。先生に呼ばれたからまたね、七海さん」

「う、うん! またね大賀君」


 その後、自己満足のために俺は七海さんに話し掛け続けた。

 本を読む邪魔になると少しは思ったが……七海さんも俺と会話出来て、嬉しそうにしていたので問題はない。 主な会話の内容が、乙女向けラノベやアニメだったのは大変だったけど……七海さんの話題についていくために、逆ハーレムアニメを見たりラノベを読んで勉強をしたので何とかなった。


「もう七海さんは、俺への好感度MAXだろ。 そろそろ、別の女の子と話そうかな……そうだ、運動部のあの子とか……ぶつぶつ……」


 俺はこの時、本当に自分に酔っていたんだと思う……それが後に、大変な事になるとは知らずに。

 例えこの世界のイケメンになっても、元の世界の精神。

 本物のイケメンには、ほど遠い。

 そして……この世界は美少女ゲームのように、人間関係をリセットして再スタートなんてない事を。


☆ 七海


 私はお昼休み、人気の無い場所に呼び出されました。

 学校内で、アイドルのような人気の女にです。

 私が呼び出された場所に来るなり、女は気が立っているのか突然私の襟首を掴んできました。 目の前の女は私より大きいので、自然と私の身体が上に持ち上がります。


「もう、大賀君と話すの禁止。 分かった? これ、決定事項だから。 破ったらヒドイからね?」


 女は鼻息荒く、私にそう言いました。


「んぐっ……ふふふ」

「何……笑ってるの? 気持ち悪い」


 襟を掴まれ、喉元が締められます。

 息が苦しい……でも、その苦しさはなんだか心地良いです。

 だって、その苦しさを与えている彼女は……根暗やアニメオタ、容姿も最低のこの私に”嫉妬”をしているから。 この女は大賀君と親しく話す事すら出きていないので、羨ましいからこのような強引な手段で私と大賀君を引き離そうとするのです。


「けほっ……格下に見ていた、私に嫉妬してるの豚田さん?」

「な、なんでお前のような気持ち悪い奴に、あたしが嫉妬なんかしないといけないのよ!」


 女の大きい手が私の襟首を、前後に揺ります。

 私の頭がガクガクと揺れて、なんだか気持ち悪くなってきました……。


「ぐぅ……あはっ、あははっ」

「このぉ!笑うな!」


 目の前の男達にアイドル顔ともてはやされた女の顔が、醜く歪んで……ああ……可笑しくてしかたが無いです。 襟首を締め上げられ、息がさらに苦しくなって意識が遠くなりそうでも……私は……嬉しくて、笑いが止まりません。


☆ 大賀 数日後


「大賀君、ちょっと良いかな?」

「七海さんか、どうしたの?」


 放課後の帰り道で、七海さんが俺の家の近くで話し掛けてきた。

 七海さんは俺と同じ制服なので、まだ家に帰っていないみたい。

 先日までは、七海さんに話し掛けていたけど……俺は別の美少女を見つけて、仲良くするのに忙しいので最近はあまり話をしていない。


「大賀君、騙されてるよあの女に」

「えっ、突然何? 俺は誰にも、騙されていないけど?」

「ううん、大賀君は絶対に騙されてるんだよ? 本当だよ?」


 そう言って、七海さんは俺の袖をぎゅっと掴んだ。

 力強く掴んでいるのか、手が強張っている。

 俺を見つめる七海さんは、どこか暗い瞳をしていた。


「えと、状況が理解できないんだけど……あの女って、白星さんの事だよね?」


 白星さん、運動部の女の子で一人称が”僕”のポニーテールの似合う美少女だ。

 今現在俺が、仲良くなろうとしている女の子。

 ……俺が思い当たり、七海さんが言う”あの女の子”と言うのは白星さんしかいない。


「うん、あの女は大賀君の事を騙して……大賀君の事を一人占めにしているの。 だから、赦せないよね?」


 七海さんはそう言うと、にっこりと花がこぼれるように笑う。

 そのうっとりするほどの、可愛い笑顔に普通なら胸をドキドキさせるのだが……何故か薄ら寒い気配を感じた。

 俺を一人占めしているとか、どう言う事なんだろ?

 別に白星さんは、俺と普通に話をしてるだけだが……七海さんは、どうしてしまったのか? 俺には七海さんが何を言っているのか、まったく分からない……。


「その騙してるとか、置いといて……七海さんは、どうするの?」

「うーん、あの女がもう……大賀君に、近づかないように私が守ってあげる事にしたの。 良い考えでしょ? ほら! あの女がもし強引に大賀君に迫った時のために……護身用に、コレ持ってきたの」

「そ、それは……」


 俺は思わず俺達以外に人が居ないか、周りを確認する。

 七海さんが俺に見せたのは、果物ナイフだった。

 護身用と言うには、過剰防衛過ぎる物。

 これは……警察に見つかったらヤバイ奴だ!?


「七海さん、早くしまって……!」

「んっ」


 俺は七海さんの小さな手を押し手、学生鞄にナイフを強引に戻した。

 七海さんは、俺が手に触れると頬を赤くして嬉しそうにしている。

 警察とかに見つかったら、ヤバイのだが……そこの所を分かっているのだろうか?


「オモチャのナイフだから、大丈夫なのに……」


 オモチャのナイフでも警察に誤解されるから、大丈夫じゃないと思う。


 ………、


「えと……その自分の事は、自分で守れるから七海さんの気持ちだけで十分だよ」


 そう言って俺の袖を掴む手を離そうと、七海さんの手を掴むけど離れない……まったくもって、離れない!?

 この華奢な身体にどこにそんな力がって思ったが、美醜反転以外にも……貞操が反転してたのを、俺は思い出した。 この世界の女子は例え小柄でも、見た目に反して力があるので侮れない。


「もう、駄目だよ大賀君? 大賀君は、男の子なんだから。 女の私が守ってあげないと、いけないの。 分かったかな大賀君?」

「わ、分かったよ七海さん。 じゃあ、とりあえず! 俺の家は直ぐそこだから、今日は大丈夫……!」

「うん、大賀君の家直ぐそこなんだよね? 知ってるよ。 でも、お義母様は結構遅い帰りだよね……もし、大賀君の家に、強盗が入ってきたらと思うと心配だなぁ」


 七海さんは何かを思い出しているのか、右上を見ながらそう言った。

 人間何かを思い出す時……右上を見ると、テレビで聞いた気がする……。

 確かに俺の母親は、自宅に帰るのが遅い……なんで、知っているのだろう。


「………」


 七海さんは、幼い顔で心配そうに俺を見つめる。

 目にハイライトさえ入っていれば、素直に七海さんの心配が嬉しかったに違いない。


「ねえ……大賀君。 もし良かったらなんだけど……お義母様が家に帰るまで、私が中で待っていても良いかな? そうすれば、大賀君も安心して家に居られるから良いと思うんだけど……駄目?」


 小首を傾げて、俺にお願いする七海さん。


 七海さんは俺の視点だと、本を読んでるのが似合う美少女なのだ。

 だけど美少女だから……こそ! 迫力も凄いのだ。

 清純アイドルのような可愛い顔で、懇願されたら……俺には、拒否は出来そうにない。


「そうだね、お母さんが帰ってくるまでなら……」

「うん、ありがとう大賀君♪」


 七海さんは鈴が鳴るような可愛い声で、俺に嬉しそうにそう言った。


 だが、しかし……そうこの時の俺は、忘れていたのだ……ここが、貞操逆転世界でもある事を……。 俺の行いは、元の世界ですごい美少女が、一生女にモテ無さそうな不細工な男を家に上げるような事だと。


☆ 七海


 最近……大賀君が、別の女の子に話しかけるようになりました。

 それも、私のような不細工な女の子にです。

 大賀君はその女の子に、以前の私に話し掛けたように接し始めました。


「それでさ。 今度、一緒に買い物に行かない? 最近運動してないから、俺に合った運動靴を一緒に探して欲しいから」

「はい、僕で良ければ! 大賀君のために、頑張ります!」

「ただの買い物だから、そんなに力まなくても良いよ白星さん」


 白星さん、運動部で大きな大会にも出ています。

 大会の成績も優秀で、容姿が良ければきっとテレビや雑誌に引っ張りだこだったと言われていました。


「………♪」

「………!?」


 教室の扉の影に隠れて二人の様子を見ていた私に、白星さんが気がついて「羨ましいでしょ?」と言う目で見てきました。その目は、最近私が他のクラスメイトに向けていた目と良く似ていたのです。

 ”あの女”は……同じ不細工の私に、優越感を感じているのだと直ぐに分かりました。


「……ぎりっ」


 奥歯が鳴るほど、強く噛み締める。

 私の心は、一瞬の内に黒い感情でいっぱいになったのです。


 ―――あの人の隣は、私の居場所だったのに……なんで貴女が、そこに居るの? 本当なら今も私が大賀君とアニメやラノベのお話をしていたのに、どうして貴女が楽しそうに大賀君とスポーツのお話をしているの?


 私の知っている大賀君は、アニメやラノベが好きなんです。

 スポーツには、全く興味がありませんでした。

 きっとあの女に、毒されてしまったのでしょう。


「騙されてる……そうだよ、大賀君はきっとあの女に騙されて……だから、私と一緒に居てくれないんだ大賀君は。 教えてあげないと……大賀君に、あの女に騙されてるって」


☆ 大賀 現在:自宅


「わぁ……ここが大賀君の家の中なんだ。 なんか、私の家とはまったく違うね」


 俺の家の中を、キョロキョロしている七海さん。

 そんなに他人の家の中が、気になるのかと俺は思った。


「じゃあ、ここで待ってて七海さん。 俺は部屋に着替えに言ってくるから」

「う、うん。 私、ここで待ってるから」


 なんか居間の椅子の上で、ガチガチになっている七海さん。

 そんな七海さんを変に思いながら、俺は着替えに2階の自室に戻った。

 制服を脱いで部屋着に、着替える。

 季節は冬だが家の中は暖房で少し暑いくらいなので、上着は身体にぴったりの白のインナーシャツを着た。


「お待たせって、大丈夫七海さん? 顔が赤くなっているけど?」

「ぜ、全然大丈夫だよ大賀君?」


 居間に戻って来ると、俺を見た七海さんが一瞬で顔を赤くしてしまった。

 白かった頬が上気して、目が見開いているので様子が可笑しい。

 それに七海さんの視線は、俺の胸に感じる。 特に胸の所にソースの染みとか、無い筈何だけど……?


☆ 七海


 初めての異性の家に来て緊張している私に、さらに追い討ちを掛ける出来事がありました。

 大賀君は部屋着に着替えてくると言って、自分の部屋に向かい数分もしない内に戻ってきたのですが……。


 ―――白のインナーシャツ!? そ、そんなの着たら、胸が透けるよ大賀君!?


 そう心の中で、大賀君を注意しますが口には出しません。

 女性の自分が男性のその部分を、注意する事に躊躇する事と……もっと、見ていたいと言う欲望があるからです。


☆ 大賀 現在:居間


「七海さん、お茶で良いかな?」

「ありがとう大賀君……ふぅ、ふぅ」


 俺は七海さんの妙な視線を気にしない事にして、お茶とお茶請けを七海さんの前に置いた。 お茶を出された七海さんは小さな手でお茶碗を持ち、息をふーふーしながら熱いお茶を少しずつ飲んでいる。


 ………。


 窓の外はもう暗い。

 だけどまだお母さんは、お仕事で帰ってこない。

 俺と七海さんは、会話らしい会話は無く淡々と時間は過ぎる。


「ね、ねえ…… 昨日の○×△見た? 神回だったよね?」

「え、えーと、昨日は早く寝たから見てないかな」

「そう……なんだ」


 七海さんは手に持っているお茶碗を弄りながら、俺に昨日のアニメの話題を振ったけど……最近、白星さんとの話題に専念していた俺は、近頃アニメをほとんど見ていないのだ。

 俺は会話が続かない気まずさを覚えて、お茶のお代わりに席を立つと……居間の固定電話が鳴ったので、俺は受話器を取る。


『今日は仕事長引きそうだから、先に夕ご飯食べて良いわよ。 それじゃあ、忙しいから切るわね』


 今日に限ってお母さんは、残業とかどうすんだよこの状況。

 俺はそーっと、背後に居る七海さんの事を見ると……しっかりと受話器の声が聞こえていたのか、目をランランとさせていた。


「今日はお母さんが、残業で帰るのが夜遅くになるから……七海さんは、帰って良いよ。 夜遅くになると七海さんのお家の人も、心配するでしょ?」

「両親は私の事を、全然心配してないから大丈夫だよ。 お父さんもお母さんも、妹ばかり構って……不細工な私の事なんか、心配する筈ないもん」


 七海さんは、形の良い唇を尖らせて……少し拗ねたように、言った。

 俺は七海さんが美少女に見えていたので忘れていたが、この世界での七海さんの容姿は最悪の部類。 その容姿のせいで、家庭内に問題を抱えているのだろう。

 元の世界で俺の親とこの見た目のせいで、いろいろと喧嘩をしたので七海さんの気持ちが少し分かる俺は……つい、同情心を抱いてしまった。


「俺は七海さんが、不細工じゃなくて美少女に見えるよ」

「えっ……?」


 この美醜逆転で貞操逆転世界の女子に可愛いと、言って良いか迷った俺は……七海さんが、美少女に見えると言った。 突然美少女だと言われた七海さんは、顔を上げて信じられない者を見るような目で俺を見る。


「大賀君、言って良い事と悪い事ってあるよね? 私の事を、美少女なんて言ってからかうのは……とても、酷い事なんだよ。 自分でも分かっているんだから、私が不細工で気持ち悪い存在だってこと……」

「嘘じゃないよ、俺には七海さんが美少女に見えるのは本当だ。 だって本当に七海さんが、不細工で気持ち悪いなら話掛けないよ」


 未だに俺の言葉が信じられない様子の七海さんは、椅子から立ち上がり俺の目の前に来た。

 潤んだ大きな瞳が俺の顔をじっと見つめる。 そして七海さんは何か言おうと口を開くが……中々言えずに、口が半開きだ。 時間にして数秒、七海さんは何かを決意した表情でしっとりと濡れた桃色の唇をしっかりと開く。


「ほ、本当に私が美少女に見えるなら……大賀君、私に触れるよね? こんな醜い肌の私に……」


 そう言って七海さんは羞恥で顔を真っ赤にさせると、細い指で制服のボタンを外し……シャツを捲り上げて、シミ一つ無い真っ白なお腹を俺に見せつける。 シャツを捲り過ぎてブラジャーをしていないのか、マシュマロのようにふわふわと柔らかそうな下乳まで露出していた。


「お腹も全然大きくないし……出来物もない。 こんな醜い身体を、触れるなら触ってみてよ大賀君。 お父さんもお母さんも妹も、みんなが気持ち悪いから見せるなと言ってくるこの私の身体を」


 むわっとした甘い香りが漂ってきた。 七海さんの服の中に篭っていた、体臭が外に流れたのだろう。 その同年代の異性の匂いは、男の俺に意思を鈍くするには十分だった。 さらに好意的に思っている女の子の普段隠された肌が露出していると言う状況も相まって、血流が早くなるのも当然。


 もし、この状態で七海さんの身体にでも触れでもしたら……俺の一部が、我慢できるか分からない。 だけど七海さんを美少女だと証明するには、触らなければいけない。 だがしかし、元の世界では女性経験も肌に触れた事すらない俺では、七海さんに触れる事を躊躇してしまう。


「……無理をしなくて良いよ大賀君。 私が落ち込んで見えたから、美少女なんて言ってくれたんだよね」


 七海さんの表情が硬くなっている。

 結果は分かっていた、みたいな雰囲気だ。

 俺が躊躇したせいで、七海さんが誤解をしてしまった……だが、まだ間に合う。

 手を伸ばして七海さんの柔らかそうな、お腹に俺は触れた。 右手の手の平に感じるのは、張りのあるもっちりとした感触。


「ひゃん……ほ、本当に無理をしなくて良いんだよ大賀君?」

「俺は、全然無理をしていないよ? 七海さんの肌綺麗だし、触っていて気持ち良いよ」

「んっ……! そんなに、私のお腹を撫で回さないで……なんか、ぞくぞくするよ」


 俺は七海さんのおへその穴中心に、手で撫で回してみる。

 初めて触る異性のお腹の感触に、俺は心臓がどくんどくんと鼓動がうるさくなる程興奮をしていた。 何度触っても飽きがこない七海さんのお腹に、俺は夢中になってしまった。


☆ 七海


 あの大賀君の大きくて逞しく男らしい手が、私の……醜く女らしくも無いお腹に触れました。 大賀君の手が触れた瞬間、腰から頭に掛けて甘い痺れが走り。 身体を洗うために自分で触れるのとは、まったく違う未知の感覚に私は戸惑います。


 ―――な、何これ……? 何なのこれ? ただお腹を触られてるだけで、こんなに気持ちが良いの?


 未知の気持ち良さに、お腹の奥がじんじんと疼き始め……もっと、大賀君の手に触れられていたいと言う欲求が沸きあがりますが、頭の片隅で「もしかして、優しい大賀君が無理をしてくれているのかも?」と言う疑念が浮かびました。 大賀君はさっき私に触れる事を躊躇していたので、本当はいろいろと我慢してくれているのかもしれない……。


「ひゃん……ほ、本当に無理をしなくて良いんだよ大賀君?」


 ―――もっと……もっと、私に触ってよ大賀君! 私のお腹を、その大きな手で私を気持ち良くして!


 私は口で言っている事と、心で思っている事が反対でした。

 口では大賀君を気遣い……心では、男性の大賀君にもっと触れていたい。 気持ち良くさせて貰いたい。 むしろ……私が大賀君を押し倒して、無理やり本能のままに行動したいと思っています。

 それは性欲の強い女性なら、しょうがない事。 男性より女性が多いこの世の中で、大賀君みたいな美男子と二人きりで私は良く襲わず我慢しているほうです。


「俺は、全然無理をしていないよ? 七海さんの肌綺麗だし、触っていて気持ち良いよ」


 大賀君の手は動き出して、私のおへそを中心に撫で回し始めました。

 私のような醜い肌を、大賀君は汚らしい物を触るような手付きで触るのでは無く。 まるで大切な物を扱うように優しく触れてくれます。


「んっ……! そんなに、私のお腹を撫で回さないで……なんか、ぞくぞくするよ」


 ほぼ毎日している強すぎる性欲を抑える行為と違う気持ち良さに、一瞬息が詰まりました。

 ただ異性にお腹を撫でられる行為だけで、こんなに気持ちが良いのだから……本番はどれだけ気持ちが良いのだろうと、私はその事で頭がいっぱいになりそうです。


「これで俺が七海さんを、気持ち悪いって思ってもいないし。 本当に美少女に見えてるって、信じてもらえたかな?」

「あっ……」


 私のお腹を撫でまわしていた大賀君の手が、スッと離れていきます。

 未知の気持ち良さに浸っていた私は、突然の事に声を漏らしてしまいました。

 女の本能がもっと気持ち良くなりたいと、腰をズキンズキンと疼かせています。


「………」

「あの……?」


 ”信じるよ大賀君の事。 大賀君は私の醜い肌を、嫌々に触ってる様子じゃなかったし。 それに、優しく触ってくれたから信じられる”と私は言いそうになりましたが……その時、私の耳に悪魔が囁いた。


 ―――お腹を触られて、気持ち良くなっただけでお前は満足なのか? 不細工のお前が異性と二人きりで、こんなエロい事が出来るのは男の親が居ない今しか無いんじゃないのか? 男がお前に優しい今なら……もっとエロい事を要求しても、許されるんじゃないのか? クラスで一番……いや、日本で一番のこの美男子とエロい事が出来るのは今しかない!


 確かに今まで不細工として生きていた私に、今この瞬間がモテ気のピークのような気がします。

 大賀君は私の醜い肌に触れてくれて、さらに私のような不細工な女を美少女と呼んでくれる優しい人です。 ……ですが、それは何時まで私の事を”美少女”と言ってくれるのでしょう? 私にはそれが不安でしょうがありません。 自分の事を不細工な女だと自覚している私には、大賀君の言葉を完全に信じられる事が出来ずにいました……。


 ―――それに……この男は、最近お前以外の不細工な女と話すようになったみたいじゃないか? ここで一歩この男との関係を進めれば、あの女よりお前はリードする事になるぞ? もし、子供が出来れば……もうこの男はお前のものだ。


 悪魔の甘い囁きが私の判断を狂わせ始める。

 頭の中で悪魔の囁きは止まらず、私は大賀君との素敵な未来を思い描く。


☆ 大賀


 俺がお腹から手を離すと、黙ってしまった七海さん。

 俯いて何か考えているみたいだ。


「そう言えば……大賀君のお義母様って、今日は遅くなるんだよね?」

「あ、ああ……そうだけど?」


 未だに捲れ上がり、下乳が見えている七海さん。

 その状態の七海さんを見ているだけで、心臓が高鳴る。

 同級生の……それも美少女のその姿に、俺は正直ドキドキが止まらない。

 幼い顔立ちに豊満な胸、そんな七海さんが俺にだんだん近づいてくる。


「じゃあ、当分二人きりだね?」

「そうだけど……? どうしたの、七海さん?」

「………」


 七海さんは顔を上げて、俺に黙って微笑む。

 アイドルのような可愛い顔の七海さんの、微笑みは何かやばい事が起こる予感をさせる。 俺は無意識に後ずさりをしていたみたいで、気がついたら……もう、後ろは壁だ。 脳が痺れそうなほど甘い匂いが直ぐ近くに、七海さんが居る事を知らせる。


「はぁ……はぁ……ごくっ」


 七海さんの息遣いが聞こえる程近い距離に、俺と七海さんは居る。

 俺を見上げる七海さんの眼は、まるで……獲物を狙う肉食動物のようだ。

 獲物はもちろん俺だ。

 普段学校で接している大人しい七海さんは、そこには居なかった。


「大賀君は私の事を、”美少女”に見えるなら良いよね? 大丈夫、もし出来ちゃったら責任は私が取るから安心して良いよ?」

「ぐっ……!?」


 その瞬間俺は、床に押し倒されていた。

 抵抗なんて出来る筈が無い、この世界の女性は見た目以上に力が強い。

 元の世界の俺の身体なら何とかなったかもしれないが、この世界の俺の身体は見た目以上に力が弱い。


「何をしているのか、分かっているの……七海さん?」

「うん、今から私と大賀君は一つになるの」


 そう言いながら、俺を見下ろし……とろけた表情で微笑む七海さん。

 普段の七海さんと今のエロい表情をした七海さんのギャップに俺は、どきどきが止まらない。 これから始まる行為に、俺は自然と期待が膨らむ。


「じゃあ、始めるよ大賀君……んっ」


 七海さんは制服のブレザーを脱いで、俺の上に身体を倒しそのまま”重なった”。

 俺の上に七海さんが重なり、柔らかい肌の感触をインナーシャツ越しに感じる。

 七海さんの汗の匂いと甘い香りを身近に感じて、ドクンドクンと心臓が強く鼓動してうるさい。


 ―――俺は、七海さんと初めて……。


 ………。


「はぁ……はぁ……」


 七海さんは俺の上で、熱い吐息を吐いている。

 汗で濡れたせいで七海さんの、ワイシャツが透けて綺麗な素肌が見えた。


「………」


 あれから少し経ったが……俺の上に七海さんが重なった以外、何も無い。

 強いて言うなら、七海さんの汗で湿った太腿が俺の脚に絡まって来た事くらいだ。


 ―――どういう事だろう?


 本当に俺の上に重なっただけで、その後の進展がない……俺の腹に七海さんの胸が押し潰されて、そのままでも気持ち良いけどそれだけだ。 何が起きたのかと七海さんの方を向くと……はぁはぁと俺の胸に顔を埋めて息をする七海さん。


「はぁ……んっ……はぁ、はぁ。 これで大賀君と私の子供が出来るのかな?」

「???」


 もしかして……やりかたを知らない?

 そう言えば俺達、まだ18歳以下。 つまり大人のDVDや、イケナイ雑誌を買えない年。 さらにこの世界の女性は性欲が強いので、18歳以下はそういった知識を与えないように徹底している。

 もし性欲が強まる思春期にそういった知識を、女の子に与えてしまうと……獣のように、男達を襲い。 勉強など手がつけられない状態になるからだと言われている。


 だから……俺の目の前の七海さんのように意味不明な事になっているのだ。


 さらに七海さんは同性の友達が居ないので、そう言った知識を教えてくれる友達も居ない。 恐らく親も七海さんにそういった事を、教えて居ないのだろう……。


「私はあの女より先に、大人の女になったの……ふふふ」


 俺の胸元でくぐもった声で、そう勝ち誇る七海さん。

 俺はこの後、七海さんにどう説明すれば良いのか頭を悩ませた。


☆ 次の日の朝


 あの後、結局説明だけで時間を取ってしまい……母さんが帰宅して、大人の階段なんて登れなかった。

 仕事から帰った母さんは何故か俺達の状況を理解して「まだあんた達には早い」と、少し怒った様子で注意されので何もしていない。


「おはよう、大賀君♪」

「おはよう、七海さん。 七海さんの学校までの通学路って、俺の家の前通るの?」

「えーと……通るよ」


 七海さんの大きな瞳が、左右に泳いでた。

 アイドルのような可愛い顔に、嘘ついてますと書いてあった。

 どうやら本当に、白星さんから俺を守る事にしたらしい。


「じゃあ、学校に行こう大賀君♪」

「あ、ああ……」


 俺の腕が、七海さんの豊満な胸に埋まる。

 昨日から思っていたが、七海さんはブラジャーをしないらしい。

 腕に感じる布越しの胸の感触や、状態がいろいろ伝わって来てしまう……。


 ひそ……ひそ……ひそと周りは俺と七海さんを見て、何か話をしている。

 世間から見たらイケメンと不細工が朝から恋人みたいな事をしていれば、この反応は当然と言えば当然だ。


「皆に見られてるから、離れない七海さん?」

「こうしていないと、大賀君をあの女から守れないから離れたくないの」

「白星さんも別に、朝から堂々と襲うような子じゃないけど?」

「駄目だよ大賀君……きっとまだ、あの女の毒が抜けてないんだ……可哀想。 きっと私が、元の大賀君に戻して上げるからね?」


 暗い瞳で俺を見つめながら、そう言う七海さん。

 白星さん関連の話題を話すと、だいたい七海さんはおかしくなる。

 通常時でも昨日からおかしいが……白星さんの話題を出すとさらに、病的におかしくなる。

 俺は心の中で”どうしてこうなった”と呟く。

 初めて話し掛けた頃の七海さんは、大人しくて読書が似合う美少女だった筈なんだ……。 乙女向けアニメの話を、俺と楽しそうに話していた七海さんはどこに?

 まさか白星さんばかり話をしていて、七海さんを放っておいた結果なのか?


「あのね大賀君……教室に着いたら、お勧めしたい本があるの。 聞いてくれるよね?」


 そう言って、元の世界なら誰もが振り向く素敵な笑顔を浮かべる七海さん。

 次々とこの世界の不細工な女の子達と、仲良くなってハーレム作ろうとしたら。 一人目がヤンデレになって、ハーレム作るところじゃ無くなったみたいなお話です。

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[良い点] 面白かったです。 [気になる点] 美醜逆転の世界のラノベやアニメって男女共に人気キャラの絵面や描写が凄いことになってそうで気になる。
[気になる点] 白星さんバージョンも読みたい
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