2.
この世にセシルとして生まれて早2年、久方ぶりに戦から離れた生活という物を堪能している。
「セシル様また何か考え込んでらっしゃるわよ。」
「若様は基本、目が死んでるからね。特に考えてなくてもあの顔よ。」
「え、老成しすぎじゃない!?」
「あやすと鼻で笑うらしいわ。絶対中身はおっさんね。」
幼児の前だからと好き勝手言い過ぎだろう、この使用人共め。
現在儂を悩ませるのは後悔である。
がむしゃらに腕を揮っていた頃には全く気付かない事にも、今の環境だと考えることに使える時間が多いので気付いてしまう。
あの時、セシルが殺された時、密入国していたヤクトの兵はなぜ武装していたのだ?
国章が彫られた甲冑まで着込んでヤクト兵だとアピールせんばかりではないか。
…嵌められたか? 誰にだ? 儂にヤクトを滅ぼさせて得をする者。
いやそんな者はいない。当時の儂に一国を滅ぼす力があると思う者はいない。
当時の我が国は他隣国との長きに渡る戦乱で疲弊していた。もちろん主戦派はいたが、新たに戦端を広げようと考える馬鹿はいないだろう。
だからこそ、儂が国境を強引に手勢のみで打ち破った際に、王達は焦って儂の、クラックリング家の取り潰しまでしたのだ。…後に撤回されたが。
では儂に恨みを持つ者。心当たりはあるが…。