プロローグ
猛将ダリウス死す!
国中を駆け巡ったこの報は国内のみならず、大陸中を騒がせた。
国内の民は悲しみに暮れ、政治屋はダリウスありきで開いた戦線の行く末に震えた。
他国の民は歓喜に酒を呷り、泣く子さえ笑ったという。
手勢による突撃のみで多くの国々を滅ぼしてきた鬼人の死は、大陸を更なる混沌へと誘う、はずであった。
眼が覚める。
なんだ、儂は確か戦場で射られて…。
また死に損なったか? 今度こそあの子に会えると思ったのだが。
あぁ明るくなってきた。起きたら戦況を把握して、いや寝ている場合ではないな。すぐさま駆けつけねば。
そんな事を思い、瞼を開けた儂の前に現れたのは贅肉の塊。
なんだこの肉塊は!?いや見覚えがあるぞ、若い頃の儂か!
これが走馬灯という物か?
混乱する儂に若い頃の姿をした儂が話し掛けてくる。
「さ~あ、パパでちゅよ~セシルぅ!ンンンンンン~」
やめろ、唇を突き出すな!離せこの肉塊!!やめろ!やめっ!あっ、あっ!!
その日、歴戦の猛将、戦鬼とも呼ばれたダリウスは若き頃の彼の息子、セシルに生まれ変わり、そしてファーストキスを失った。