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成木正次

 入間守成木重正いるまもりなるきしげまさが次男、成木正次なるきまさつぐ

 それが俺に与えられた職業であった。所謂、武家。あるいは武士。詳しくは分からない。日本史を習ったのだって三十数年前だ。覚えているわけがない。


 扉を潜ったら視界が暗転した。そして気が付いたら畳が敷かれた部屋にいた。傍では小さな子供が正座をしていた。聞くとその子供は俺の小姓こしょうらしい。身の回りの世話をするのだと言う。


 それならと思って話を聞くとその小姓は流れるように答えた。


 曰く、俺は梶原大殿かじわらおおとのが家臣入間守成木重正の次男だという。

 曰く、俺がいるのは入間という地域にある入山城いりやまじょう下の成木家屋敷であるという。

 曰く、俺は20歳で、すでに初陣を済ましているという。

 曰く、俺には兄、姉、妹、弟がそれぞれ一人ずついるという。

 曰く……


 途中で父である成木重正に呼び出されたため小姓からの情報収集はそこまでとなった。俺は小姓を連れて父、成木重正の下へと参じた。


 小姓にある程度話を聞いて思ったのが、どうやら俺は割と良い身分であるらしいということであった。正直農民だとかあるいは、その下、奴隷や卑人の類であったらどうしようと思っていたのだ。その点、今の俺の身分は十分すぎるのではないかと思えた。


 しかしだ、だからと言ってそれが全くもって俺に有利に働くとは限らないのだ。案外、身軽な農民や商人の方が生き残れるやもしれない。


 そもそもだ。ここは日本ではない。

 日本を模して造られた世界、というわけでもないらしい。掛け軸のごとく飾られている地図を見てそう思った。あるいは、それがこの世界のほんの一部だけなのかとも思ったが、それもどうやら違うらしい。小姓に聞いたらこう言っていた。


 その掛け軸は「遥か東方の南蛮より伝えられし神の視点」と言われ、大殿から先達ての戦の褒美として成木重正様が頂戴したものでございます。


 綺麗に正座をして、両の手を膝の上に置いて、小姓はそう言った。南蛮だとか、戦だとか。所々気になるところはあったが、それ以上に小姓のかしこまった態度がむずかゆかった。


 神の視点。つまりは上から世界を見たということだろう。何とも仰々しいことだ。

 そしてその神の視点から見た世界は、何だろうな。表現に困る形をしていた。一番近い形は、円だろうか。何となく、ポテトチップスを中心で割ったらこんな感じになるんじゃないだろうかと思ってしまった。

 大陸とも呼ぶべき大きな島が五つ。その周囲には群島がまばらに。大きな島の外周を繋いでしまえば円になる。だからポテトチップスを割った感じ。


 まあ、何が言いたいかというと日本史は当てにはならんということだ。まあ、覚えてないから元より当てになどならんが。


「正次、どうやら西の野蛮人が森から出てきて近くにある村落で暴れまわっているらしい。お前に200の兵を預ける。西の野蛮人共を蹴散らして来い」


 俺の父である入間守成木重正が面白そうに口元をゆがめてそう言った。

 西の野蛮人。小姓によれば正式にはヤンヒと言うらしい。どういう字を書くのかは分からないが、意味はいにしえの言葉で「魂を売りし者」なのだという。いったい何に魂を売ったというのだろうか。


「おい、正次。聞いてるのか?」


 父である入間守成木重正が奇怪そうにこちらを覗き込んできた。俺は慌てて居住まいを正した。


「はい。分かりました。西の野蛮人を叩いて来ればよいのですね」

「ああ、そうだ。下に直実なおさねをつける。すぐ出立せよ」

「はっ」


 一礼をして父の部屋を後にする。外で待っていた小姓が後に着いてくる。俺はそいつに尋ねた。


「戦をするらしいんだ。西の野蛮人共だという」

「はっ。戦の支度ですね。直ちに」


 そう言って腰を折って去ろうとする小姓を呼び止める。本題はそこじゃない。


「あ、いや。待ってくれ。そうじゃなくてだな。……俺はどうすればいいんだ?」


 聞くのは何とも恥ずかしい気もするが、しかし分からないのだから仕方がない。仮に小姓に変な目で見られようとも、そこを怠って死んでしまっては意味がない。


「正次様は部屋でお待ちになっていてください。すぐに鎧刀一式を用意させます。それを着ましたら西門までお行きになってください。恐らく直実様が既に支度を終えて待っていらっしゃるかと思います」

「分かった」


 俺が頷くのを見ると、小姓は一礼をして足早にどこかへと去って行った。

 何とも便利な小姓である。打てば響くではないが、聞けばすぐに答えが返ってくる。それも怪訝な顔をせずに欲しい答えを返してくるのだ。あるいは、チュートリアルかヘルプの役割でも追っているのかとも考えはしたが、まあ答えが出るわけでもない。これが小姓の能力故なのか、あるいは小姓に与えられた役割故なのか。後で小姓にステータスを見せてもらうのもいいかもしれない。


 俺は小姓に言われるがまま部屋に向かった。父、重正の部屋から俺の部屋へは幾分か距離がある。慌ただしく動きまわる小姓や女中らを尻目に俺は部屋へ向かう道中しきりにこの度の戦について考えていた。


 そもそも、まず初陣なのだ。正しくは戦場に出るのは今回で4回目ということなのだが、如何せんそれはあくまで設定であって、俺自身は紛れもない初陣なのだ。緊張、あるいは戸惑いといった感情が押し寄せて止まない。


 廊下を渡って部屋まで行くと、すでに鎧を抱えた女中が準備をしていた。俺が部屋に入ると鎧を持って近づいてきた。着せてくれるのだろうと思って、部屋の中央まで歩いて立ち止まる。


「失礼いたします」


 そう言って女中が俺に鎧を着せ始めた。マネキンのごとく俺は黙ってそんな女中の様子を眺めながら、やはり頭はこれからの戦のことを考えていた。


 西の野蛮人に関してはよい噂を聞かない。男を浚えばその肉を食い漁り、女を浚えば気が触れるまで犯しつくすという。正に野蛮人たる所業だ。さらには奇妙な技を使ってくるという。聞いた話によると、何もないところから火を飛ばしてくるらしい。小姓が言っていた。


 だいたいは想像がつく。大方、魔法の類だろう。和風な世界に魔法を持ち込むとは邪道だろうと言いたくもなるが、それを言ったところでどうになるわけでもない。今回の戦で俺が死んだら開発者に散々文句を垂れてやろう。


 そんなことを考えていると、鎧を着け終えたようで、一番年嵩な女中が頭を下げて恭しく刀を差しだしてくる。

 俺は頷いてそれを受け取ると足早に部屋を出た。「ありがとう」とでも一言声をかければよかっただろうかと思ったが、今更引き返すのも変だろう。俺はすぐに頭の中を切り替えてどう野蛮人共を倒すか考えながら西門へと急いだ。


 西門につくと小姓の言う通り、すでに飯島直実が200の兵を用意して待っていた。


「待たせた」

「いえ、私も今来たばかりです」


 そう言って飯島直実が微笑む。カップルの会話じゃあるまいし。そんなことを思ってしまった。


「すぐに出立する。用意はできているか?」

「はい。歩兵100に弓兵40、槍兵が40に騎兵が20。皆、今すぐ出立できます」


 頭を下げて直実が言う。ついでに一枚の紙を差し出してきた。受け取ってみると、これから向かう予定の村落の図面であった。

 飯島直実とはこういう奴なのだろう。容姿は色白で細身。武士ではあるものの、その腰には刀ではなく脇差、背には弓を背負っている。よく気が回り、戦場よりも机の上を得意とする事務方。まあ、有体に言えば参謀というところか。たぶん。


「図面か。助かった。それではすぐに出立する」


 直実から受け取った図面を折りたたんで鎧下に押し込むと、用意されてあった自分の馬に飛び乗った。そうして直実に目配せをする。


「どうされましたか?」


 どうやら俺の目配せを直実は感じ取れなかったらしい。あるいはあえてスルーしたのか。小姓が懐かしい。

 俺は直実の傍まで馬を進めると、こっそりと耳打ちをした。


「兵の士気を上げてくれ」

「正次様の仕事でしょうに」

「苦手なんだどうにも」

「仕方ありませんね」


 苦手なんだ、本当に。大声を張り上げるのが。

 直実は溜め息を一つ吐くと、響くように二拍、手を叩いた。兵の注目がこちらに向く。

 すると直実はこちらを向いて微笑んだ。いや、あれは半ば怒っていたのかもしれない。


「正次様、皆が正次様の言葉を待っています」


 クソったれ。そんな言葉が漏れそうになった。

 兵の視線はこちらを向いている。直実は憎たらしい笑みを浮かべながら静かにこちらを見ている。つまりは俺がやるしかないらしい。


「よいか!」


 俺は声を張り上げた。思っていた以上にすんなりと声が響いた。


「今この時にも!西の村落は蛮族共の被害にあっている!」


 言いながら、だったら早く出立しろよと思ってしまった。しかしとて、言い換えるのは憚られる。俺は言葉を続けた。とりあえず、思いよ届け。40過ぎて、50間近のおっさんが何を言ってるんだと思うだろ?俺も思った。


「許せるものだろうか!いいや!許せない!断じて許すことなどできやしない!」


 昔読んだ小説はこんな感じだったろうか。以前見たテレビはこんなことを言っていただろうか。そう考えながら言葉を紡いだ。


「勇敢なる戦士達よ!我らが友を救いに行くぞ!」


 言ってて鳥肌が立った。何でかって?こっ恥ずかしいからに決まってるじゃないか。


「我に続け!」


 言っちまった。小姓に聞いた話では進軍する際は将は最後尾から少し前くらいを進むのだそうだ。俺の前では兵達が鬨の声を上げている。どうしようかと直実を見れば頭が痛いとでも言う様に、手を額に当てて首を振っている。


 ええい!ままよ!


 俺は馬に鞭を打って先頭を走り出した。後ろで直実が何か言っているが気にするまい。言っちまったものはしょうがない、男なら腹を括れ。所詮ゲームだ。間違ったところで本当に死ぬわけじゃない。

 俺は自分にそう言い聞かせながら馬を走らせた。頬に当たる風が少しだけ気持ちよかった。


  

まあ、正直何にも知らないど素人が書いてるからね、名称とか官位とかその他諸々、全部テキトーなんよ。うん。

だからと言って勉強する気だって端からないし。まあ、書いてる時気になれば軽く調べて、それでもわかんなければ適当に作っちゃえってスタンスだから。勘弁してな。

後、ステータス。ごめんよ、まだ出てこないや。次回か次々回くらいに出す予定。つっても前述のとおりさっぱりとしたものだからあんま期待しないでおくんなまし。


まあ、言いたいことがあったら感想にでも書いておくれ。

んじゃ、また次回。読んでくれてありがとう。

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