魔物との戦闘
「じゃあ、自己紹介も終わったし早速行動開始するか」
俺はこれからどうするべきかを考える始めた。うーむ地図が無いから此処が何処だかさっぱりわからないな。しかし、こういう時こそこの世界で長年過ごしていると思われるレナの出番だ。
「なぁレナ、ここって何処なんだ?」
「此処は無人島よ」
その言葉を聞き俺は固まった。
「…もう一回言ってくれないか?」
「此処は正真正銘の無人島よ」
「…」
俺は思った。
「いきなりハード過ぎるだろぉぉぉ!」
「ちょっ!?落ち着いて!此処は人間が住んでる大陸に近い無人島だし大丈夫だから!」
「それでもサバイバル生活をいきなりさせる奴がいるかぁぁ!」
そして俺は数分程暴走していた。
「落ち着いたかしら?」
「あぁ、取り乱して面目ない」
落ち着きを取り戻した俺は先程人間が住んでる大陸のことをレナが言っていたのを思い出した。
「そういやレナがさっき言ってた大陸ってどんなとこだ?」
「そう言えばそんなこと言ってたわね。いいわよ教えてあげる」
おっ、レナが真面目モードになった。
「まず、この世界には主に3つの大陸が存在するの。一つは人間、エルフ、獣人、ドワーフ、妖精の種族が暮らすインペリア大陸、そして二つ目は魔族が占領しているヴェノヴァ大陸、最後が竜人族が暮らすガードリオ大陸と言った感じね」
「ふむ、質問いいか?」
「何かしら?」
「さっき言ってたけどここから一番近い大陸はインペリア大陸だよな?」
「そうよ、それどうしたの?」
「どれ位距離があるんだ?」
「うーん、どれ位だったけ…」
レナは暫く考えた後こう言った。
「忘れたわ!」
「よくそんなに胸張って言えるな」
俺は呆れながら他に聞くことがあったかを考える。そう言えばスキルの使い方を聞いてなかった。
「レナ、そういえばスキルってどうやって使うんだ?」
「あぁ、そういえば言ってなかったわね」
「使えなかったら意味がないからな」
「まぁ簡単よ、魔力が必要なスキルもあるけどやり方は大体同じだし。使い方は起こる現象を思い浮かべるだけで魔力を使う場合はーーーーきゃっ!?」
言葉はそこで途切れた。理由は俺がレナを胸に抱いて横に飛んだからだ。
「ぐっ!」
「ちょっと、いきなり何するのよ!」
「あれを見ろ…」
レナは俺が見ている方向へ目を向けた。そこには、銀色の毛並みの1メートル程の大きさの狼がいた。しかし身体には所々傷があり、そこから少しずつ血が垂れていて瀕死の様だ。だが、その目には殺意が溢れていた。生物は瀕死になると一番ヤバいって本当なんだなぁ…ってそんな場合じゃなかった!
「あれはシルバーキングウルフ…」
「とにかく逃げるぞ!」
「グウゥゥゥゥゥ!」
シルバーキングウルフとやらは逃がさまいと飛び掛かろうするが、俺は土を目潰し代わりに投げつけ逃げ出した。
「グワッ!?」
「今だ!」
土は上手く目に入り、暴れているのを全速力で逃げながら確認する。
「レナ、アイツは何なんだ!?」
「あれはシルバーキングウルフって言うAランクの魔物よ!」
「Aランクって意味が分からないがとにかくヤバイってのは分かった!」
暫くすると後ろから足音が聞こえて来て徐々に近づいて来た。速い!
「くそっ、もう追い付いてきたぞ!」
「しかたないわね!」
そういうとレナの手に風が集まり始めた。
「ウインドカッター!」
集まった風は不可視の刃となってシルバーキングウルフに襲い掛かったが、いとも容易く避けられてしまった。
「どうするの伶斗!?」
俺はこの状況から脱出する手段を考える。どうすればアイツから逃げ切れる、このままだと喰われてしまう、何か方法はあるか!?
その時俺は自身のステータスを思い出した。一か八かだがこれ以外方法はない!
「そうだ、俺のスキルだ!」
「あの〈植物王〉ってスキルのこと?」
「あぁあれでアイツを足止めすれば何とかなるかも知れない!」
「なら早くやって、私そろそろ疲れてきた!」
「お前が魔力を使うスキルの使い方教えてる途中で襲われたから分かんないんだよ、教えてくれ!」
「使い方は対象に魔力を流す様な感じで後は同じだから!」
そんな話をしていたらいつの間にか目の前にはとても高い崖があり、シルバーキングウルフに追い詰められた。
「ははっ、これはヤバイな」
「ねぇちょっと、早く何とかして!」
「分かってるけどもう足止めも何も意味無いだろ!」
ヤバイヤバイ、死んでしまう。もうアイツを倒す以外に生き残る術は無い。やり方は一応分かった。後は意識を集中させる。するとぼんやりと何かが全身を流れているのが分かる。多分これが魔力だろう。
後は魔力を手に集めて、何でもいいから使えそうな植物を思い浮かべる。
「お願いだから早く!」
アイツの足音がゆっくりと近づいてくる。手に魔力を集めながら記憶の中から昔、近所に生えてた松の木を思い浮かべる。
「ひっ」
レナが俺の後ろに隠れる。怖い、恐らく〈威圧〉の様な相手をビビらせるスキルだろう。だが怯えては駄目だ。倒すしかない。じゃなければ死ぬ。
「きっ、きた!」
シルバーキングウルフは俺達に向かって飛びかかって来る。だか俺は手を前に出して動かずに出て来いと強く念じる。
「ガァァァァ!」
「うぉぉぉぉぉ!」
シルバーキングウルフは俺の手に噛みつこう口を大きく開く。そして俺は手に集めた魔力を木へと具現化させる様なイメージで一気に放出した。その直後、手から何かが急速に伸びていき、ブスッと何かを突き刺した感覚とゴツゴツとした感覚を感じた。そして俺は反射的に閉じた眼をどうなったか気になったのでゆっくりと開いた。
「おぉ…」
「ガァァ…」
そこには俺の手から出現した松の木についている枝と葉に串刺しにされ、幹が口から尻尾まで突き刺さっているシルバーキングウルフがいた。そしてシルバーキングウルフは暫くピクピクと痙攣すると目から光を失い動かなくなった。その直後頭に音楽と声が響いた。
パラパラーン
『称号〈格上への勝利〉を獲得しました』
『スキル〈集中〉を習得しました』
「スキル〈魔力操作〉を習得しました』
『Lvが1から36に上がりました』
「はは、やった…」
倒せた。Lvも上がった。レナも俺も無事に生き延びた。安堵しているとレナが飛びついてきた。
「やったわね、すごいじゃない!」
「あぁ、生きてて良かった」
そして俺達は暫くの間生きてる喜びをわかち合った。