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第八話 田楽

実際の太平記をモデルにした話です。

北条高時といえば田楽好きで有名だった。

そのため、鎌倉では田楽が大流行。庶民も貴族も武士たちも、身分など関係なく熱狂していた。


そして俺が武家造りの屋敷にたどり着いたのは日ぐれすぎ。

辺り一面真っ暗で屋敷のなかでドンチャン騒ぎをしているのが聞こえた。


「あっそれえ」

鼓や笛のお囃子に合わせて人影が舞う姿が見える。

正直いって酔っぱらいの千鳥足と大差ない。それなのに。


「よっ天下一でございますな」

「さすが高時さま、鎌倉一の舞いでございまする」


「鎌倉など目ではない。大和一であろう」

「ははっいかにも」


口々に誉めそやす男たちの声。そしてそれにご満悦な一人の男。つまり今踊っているのが。

「北条高時かよ……」


色々ショックだった。だってもうちょっと頭の良さそうな人だと思ったよ?

それがこんなおバカさんとは。


とそんなときだった。あらたな座が巡業にやってきたのは。

彼らの田楽は一目見て上手いとわかる。

さすがはプロだ。これ以上下手な芝居に心を痛める必要もない。


「ははっ酒じゃ酒じゃ」

「承知いたしました」


高時も気分がよくなったのか更に酒を追加する。もはや俺が入る隙など存在しない。

田楽のお陰かなんだか急に屋敷の中のテンション上がってきていた。


わあきゃあ、ドンチャン騒ぎどころではなくサタデーナイトフィーバーって感じ。今日は土曜日だけどそこは優しい気持ちでスルーして!頼みますから!


だけどなにかが妙だ。そして屋敷の中の侍女たちもそれに気がついたようで声を潜めて話をしているのがわずかに聞こえてくる。内容までは分からなかったけど。


「はっ1?」

再び屋敷のなかを覗くと、田楽を舞う人影が姿形を変えていた。


「天王寺のヨウレボシをみたいものよ」

と唄う姿は明らかに異形のもので。

中には翼が生えた人形や、天狗、山伏などがいて。


俺は屋敷の裏口から侵入。懐にある紹介状だけが便りだったが。

「あなた、秋田城ノ介殿を呼んできてくれないかしら」

案の定侍女の内一人に頼まれる。

「俺道わからなくて」

「だったら一緒にいきましょう」

手を引かれ、二人で屋敷を出る。


彼女の案内で秋田氏の屋敷にたどり着き、結局場を納めてもらうことになった。


最後に残ったのは散らかった鳥の羽や動物の足跡だけだった。


なんでもヨウレボシとは妖霊星のことで天下が乱れる際に降りてきて災いを起こすらしい。


つまり高時は自ら破滅を呼んでしまったのだ。


だけど反省はしてなくて今度は田楽じゃなくて闘犬にはまっちゃったんだって。

のめり込む男だね!

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