第七十四話 鎌倉防衛
俺たちが越前攻略を終えるとともに敵方は鎌倉を狙っているようだった。
ということで今回は北畠顕家とともに鎌倉防衛だ。
敵を向かい打つために鎌倉で戦の準備をする。
まずはたたら製鉄による鉄の生成を始める。鎌倉では江戸中期まで製鉄業が盛んだった。
以前にも述べたように稲村ヶ崎で砂鉄がとれることから製鉄業が進んだのであった。
これにより大量の刀や石火矢を作り上げることができた。
それに地形の確認。鎌倉は山と海に囲まれた天然の要塞と言われるほど攻めにくい場所だった。これは俺たちにプラスに働くことになる。
そして今回の大将の北畠顕家に話をする。
「北畠顕家殿」
「ああ新田義興か」
そうだった。俺は九郎丸だけど彼らの前では新田義興を名乗っていた。
「はい今回の作戦についてですが」
白川の関を越えて鎌倉までやってきてくれた北畠顕家は俺に笑いかけた。今日は機嫌がいいらしい。
「用事があるなら北条時行に一言申すとよい」
北畠顕家に北条時行が仕えているのであった。
「今回は足利義詮との戦いですよね」
「そうだ」
義詮は足利高氏の嫡男で以前鎌倉攻略をしたときは協力した仲だった。
「かつては力を合わせて戦った友も時が過ぎれば敵同士ということですか」
俺がポツリと呟くと北条時行が部屋のなかに入ってくる。
「失礼致します。久しぶりだな新田義興」
「お久しぶりです」
俺は膝をついて礼をする。北条時行と言えば彼と鎌倉で戦ったことは記憶に新しい。だがそれだけでない。京では彼が力を貸してくれた。
足利義詮とはまるで正反対だ。
こうして俺たちは出会いと別れを繰り返すのだろうか。ふとそう思った。
「今回の作戦だが足利義詮の軍を迎え撃つということでいいんだな」
「はい。なので防御を固めて遠距離から攻撃するという作戦です」
そのために遠距離攻撃に欠かせない石火矢や弓矢の補充をするのだった。
「そなたには籠城した経験がある。それを頼りにしている」
「まあ今回は籠城とまではいかないが防御に徹する戦になるだろうからな」
その言葉に身が引き締まる思いがした。
俺は由比ヶ浜に向かった。寄せては返す白波をぼんやりと眺めながら今後のことを考える。
足利義詮を倒したら次は足利直義が待ち受けている。それまでに作戦を練らなければ。
あと北畠顕家のことも気がかりだ。彼は上級貴族としてのプライドが高いため武士に頼ることをよしとしない。
もしこの戦いで劣勢になったときに俺たちが分裂しないためにも前もって信頼関係を構築しておく必要がある。
頭上を海鳥が行き交う。彼らの鳴き声と波の音だけが耳にはいる。
波の穏やかな一日だった。
こんな平和が続くのもあと数日だ。
それまでにしなければいけないことはたくさんある。
俺たちの戦いはあと数日まで迫っているのだった。




