第六十九話 北国
足利の残党が越前の国に残っているらしいと聞いたのはそれから間もなくしてだった。
なんでも越前守の斯波高経が越後までその勢力を広げようとしているらしい。
ということで俺たちは北国に向かうことに。
今回は新田義貞と大塔宮、脇谷義助、備後守得能通綱と俺で行くことになった。
「大塔宮今回はご一緒いただき感謝申し上げます」
「何北国の経営は私も考えないと行けないと思っていたからな」
実際に戦いに行くとだけあって文武両道の大塔宮がいるのは心強い。
しかも彼がいるということで兵士も多目に連れてくることが出来た。
「脇谷義助は瓜生の杣山城に向かってくれ。あとは金崎城に向かう」
新田義貞が指示を出す。
「了解しました」
暖かい備後の国出身には寒さがこたえるらしい。得能通綱は体を震わせか細い声で返事をした。
やはり越前と言えば雪深い土地で有名だ。
移動をするだけでも一苦労だ。
ましてや戦なんてしたらこちらも大変だ。
とにもかくにも俺たちは金崎城を目指した。
ちなみに金崎城は木曽義仲対策に平清盛が作り上げたものだ。
場所は天筒山から敦賀湾に面したところにある。
深い雪のなか心が折れそうだったが一歩一歩進んでいく。
それにしても寒い。
「義興寒いな」
「凍えそうですね新田義貞さま」
新田義貞が身を震わせて俺に声を掛ける。当然だが俺も寒い。
「なにか対策はできないものか」
「そうですね俺に考えがあります」
「考えというと?」
「カイロ、というものを作るのはいかがでしょう」
新田義貞の知らない単語を出したので彼は不思議そうな顔をする。
「それはいったいどういうものなのか」
「自然と暖まる熱の塊みたいなものです」
「ほう面白そうだな」
ということで簡易カイロを作ることにする。
材料は砂鉄、食塩水、バーミキュライトと緑茶用ティーバッグ、紙コップが現代では必要となる。
だがそんなものこの時代にはないのでバーミキュライトを土で、ティーバッグを布で、紙コップを竹筒で代用する。
「砂鉄はどこで手にいれたんだ」
「鎌倉の稲村ヶ崎で集めました」
鎌倉は現在俺たちの支配地域となっている。そこの稲村ヶ崎では砂鉄が取れると有名だ。
たたら製法で砂鉄は鋼にされ刀などの原料とされた。
おっと話がそれてしまった。
「これをどうやってカイロとやらにするんだ」
「ちょっと待っててくださいね」
竹筒に砂鉄と土と食塩水を混ぜて、それを布に包んでやると簡易的なカイロが出来上がった。
「これで完成です」
「ほうこれは暖かっ……結構熱いな」
新田義貞は熱くて思わずカイロを落としてしまいそうになる。これは持っていられないほど熱くなるので実際にやるには注意が必要なのだ。
だがこれで一応暖をとれるようになり兵士たちの士気も下がらずにすんだ。
さて向かうは金崎城だ。
敵方の足利軍の残党と斯波高経の軍が途中襲ってきたがそれを掻い潜り目的地へと進む。
相手方も寒さのなか凍えていた。
ということで今回も車掛の陣を用いる。
車掛の陣は疲れた兵士を移動させつねに新しい戦力を出せるように円形の陣をとる。
中心に俺たちが待機するという寒い雪国で有効な戦術だ。
まあ北条時行戦で使った戦法だけど今回も使わせてもらうことにした。
かくして俺たちは金崎城にたどり着いた。




