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第六十八話 大坂

後醍醐天皇は延暦寺に拠点をおいたが足利高氏なき今拠点を京にうつすことになった。

そして建武の元号は不吉として延元の号に改めた。


しかし京は戦禍を耐え抜き疲弊しきっていた。

また足利方についた三井寺の勢力からも圧力がかかっていた。

これも北畠と楠木軍の協力のもと制圧することに成功した。


ということで京を復興させねばと俺たちは立ち上がった。


まず大塔宮を中心とした勢力の登用を。

彼や楠木正成、赤松円心の意見を取り入れた政治を行うことに。


そして大坂の開発に向かう。

まあ本来はこの辺りの地域は楠木正成が支配していたが彼と協力するということで。

「楠木正成殿、本日はいかがいたしますか」

「ああ新田義興か」

足利高氏が死んだことにより湊川の戦いは発生しない。だから彼もその息子正行も健在だ。

「今日はお前に協力してほしいことがある。大坂のことだ」

元々播磨・丹波・摂津の国では北条が商業に力をいれていた。

得宗専制をとっていたため直轄地にしており商業を独占していた。


それだけでなく和泉・河内の国の守護も北条氏が歴任していた。


だからおおよその開発する場所はすでに栄えていた。

だが北条家の支配下にあったということで俺たちの入る余地があまりないというのも問題だった。


「かつての北条の所領は楠木正成殿の領地として、住吉、堺、四天王寺辺りを重点的に開発するのはいかがでしょう」

住吉や堺、四天王寺もかねてより南朝に縁のある土地だった。

だから反発も少ないだろうと予想した。

住吉は後の後村上天皇の時に行宮として活用された背景もあるけど。


「それはいいな。悪いが新田義興、現地に向かってくれないか」


ということで俺と楠木正成は大坂に向かうことに。

「寄りたい場所がある」

どこですかと尋ねると彼は正圓寺だと答えた。

「顔を会わせたいひとがいるんだ」

大坂五低山に数えられる聖天山に位置する寺だ。

「ここだ」

なだらかな山を上っていると楠木正成が口を開く。

「待ち合わせには早すぎたかな」

「そんなことはないさ」

目の前には法衣を身にまとった老人がにっこりと微笑んでいた。

「しかしお前さんにしてはよく無事にやってこれたな」

「そちらこそ」

「この辺りは幸い戦が少なかったからな。幸い貧乏暇なしで収入も余り得られないが私は手紙の代筆業で忙しくしておるしな」

どこか愉快そうに笑う。まさに好好爺といった風情だ。それにしても手紙の代筆?どこかで聞き覚えのある話だ。

「久しぶりだな兼好法師」

「こちらこそ久しぶりだのう楠木正成殿」

ってあの徒然草で有名な兼好法師じゃないか。

出やこの世に生まれては願わしかるべきこそ多かめれとか。

花は盛りに月は隈なきを見るものをやとかで有名な。

いやここは高名の木登りとかその辺りが人気かな。

俺のミーハー心に火がついたところで二人は会話を続ける。

「政治の世界に戻ることを引き受けてはくれないか」

「私は隠居した身。これ以上差し出がましい真似はできないさ」

「せめて延暦寺に掛け合うことくらいは」

「それも出来ない約束だの」

ほっほと快活そうに笑う姿とは反対に目付きはどこか鋭くこの激動の時代を生きてきただけあると思わされた。

「もしかして俺が大坂に来るようにしたのもこれが目的だったんですか」

「まあそんなところだ」

俺が質問すると楠木正成は素直に答えてくれる。

「しかしやはり兼好法師の力を借りるのは無理か」

「悪いが諦めてはくれないかのう」

老人に頼まれるとさすがに断れないのか楠木正成は静かにうなずいた。

「そうだな。ここは自分自身の力で切り開くべきなんだろうな」

一人呟くと兼好法師に別れを告げる。

「じゃあな」

「ほっほっほ。さらばじゃ」

二人の間には俺には見えないなにかがあったのだろう。

その後の視察も楠木正成はどこかスッキリとした顔をしていた。

かくして京の復興と大坂の開発は完了したのであった。

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