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第六十五話 多々良浜の戦い3

一陣の風が吹いた。それが合図となり敵の弓矢の攻撃が激しくなった。

(これは上陸した方がよさそうだな)

視界が悪いなか石火矢や火槍は使えない。つまりは浜にいる敵への攻撃手段は限られてくる。

そして。

「足利高氏さまが参戦なさったぞ」

「それは真か」

情勢が敵に有利に働いたとなるとすかさず足利高氏が参戦してくる。

(形勢逆転か)

先程までこちらに有利に働いていた風は向かい風になっている。

「浜に上がるぞ」

俺が水兵たちに指示をする。彼らは土居・得能の水軍で天皇方に味方していた。

「はっ」

この場にとどまっていては敵の餌食となってしまう。

俺らが移動している間にも弓矢の攻撃は続く。

「なんとかならないのか」

新田義貞も焦っているようだった。

「ここは落ち着いていきましょう。焦って射損じたら相手の思う壺です」

「そうです。ここは冷静に」

俺と喜助が新田義貞に忠告する。

「そうだな。お前らの言うとおりだ」

彼は静かにうなずき情勢が変わるのを待っている。

「ここは腰を据えてじっくりと構えさせてもらおう」

新田義貞はゆっくりと弓矢を構える。

徐々にだが砂塵も少なくなってくる。

そして。

「今だっ」

風の向きが変わって追い風になる。

ビュン

新田義貞の矢が敵方に放たれた。

「ぐっ。なんだこれは」

「敵将新田義貞の弓だ」

そのチャンスを逃すまいと俺たちは急いで浜に上がる。


そこでは足利軍の兵士が待ち構えていた。

「行けっ」

足場の悪いなか敵を自前の鬼丸でなぎ払っていく。

向かう先は足利本陣が敷かれている高台だ。

「次だっ」

火槍を使って敵を威嚇する。火薬の音が低く響き渡る。

敵本陣にたどり着くまでもう少しだ。

「某、新田義興と申す、相手を願い出るものはいないか」

声を張り上げて一騎討ちを申し出る。すると。

「某、少弐頼尚と申す。新田義興殿のお相手引き受けさせてもらう」

筑前、肥前を治める武将の少弐氏が申し出を受けてきた。

「さてこちらから行かせてもらう」

少弐頼尚が刀を一振りすると忽ち俺の胴丸に切り傷が入る。

「くそっ」

俺も鬼丸で相手の攻撃を引き寄せる。

「次だっ」

相手の面を狙って刀を振るう。

「口ほどのものではないな」

鋭い太刀筋が俺の体を掠める。だがうまいこと避けきれた。

「生憎悪運だけは強いもので」

俺はそう返すと鬼丸で相手に切りかかる。

敵がそれをかわそうとするところが視界に入り軌道を変化させる。

「ぐっ」

ズブリと刀が刺さり相手は呻き声をあげる。

「はあ……はあっ……参った」

降参したと刀を砂浜に差しなんとか立ち上がりながらひとり呟いた。

「少弐頼尚殿が破れたぞ」

周囲の兵士がざわつき始めた。当然だろう。足利方の九州勢力は少弐氏が引き受けていたのだから。

「次のものはいないかっ」

俺の言葉に敵が縮こまる。どうやら先程の戦いで恐れられているようだった。

「足利高氏はいないかっ」

この中に敵軍の将である足利高氏がいるはずだ。

だが返事はなかった。

ならば。

「火槍で陽動作戦に出るぞ」

生憎だが火槍に威力は余りない。だが音による効果はてきめんで敵軍の馬は混乱して暴れまわっている。

そして足利軍の指揮系統が乱れこちらの攻撃にはもってこいだ。

(あれは)

敵軍の混乱のなか豪奢な大鎧を身に付けた男が目にはいる。

腰には立派な太刀を携えて混乱する軍勢のなか部下とやり取りをしているのが目にはいる。

「足利高氏殿、ここは逃げましょう」

「だが新田軍が押し寄せるなか退却すべきなのか」

「ここは引くべきです。あなた様の命よりも尊いものはありません」

彼は部下の言葉に従い退却するところだった。

「新田義興様」

喜助が隣にやってくる。無駄のない身のこなしでこちらに声をかけると自前の石火矢を構える。

「行きますよっ」

ドンッと腹のそこに響く音がする。

「なんだこれはっ」

「新田の配下がここに来たか」

部下が刀を引き抜くと足利高氏を逃がそうとこちらに立ちふさがる。

「早く逃げてください」

「すまない」

俺たちは男と戦うことになる。だが二対一では相手の分が悪いようで。

「ふんっ」

太刀を振り回すが俺たちは次々に避けていき相手を追い詰める。

そして。

「これで最後だ」

敵の急所に鬼丸を突き刺す。

「ぐっここまでか」

男が一言漏らす。

「ならば」

最後の一撃が俺の肩口に刺さる。

苦しい。ひどく傷が痛む。

それでも足利高氏を見つける。

「ここかっ」

混乱のなか一人大鎧を身にまとって逃げているのは目立つ。

だからすぐに見つけることができた。

「行けっ」

鬼丸を使って足利高氏の腹部を狙う。

ザンッ

金属がぶつかり合う嫌な音がして。

俺の意識はそれを境に途切れるのであった。

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