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第六十四話 多々良浜の戦い2

喜助との会話も終わり俺たちは戦いの準備をしていた。

船の上では色々と難しいこともあったが順調に進んだ。


俺は自分の鬼丸の布で刀をぬぐい、新しい油紙で油をつけて刀の手入れをした。

そしてもちろんだが火槍と石火矢の使い方について喜助を筆頭に兵士たちにレクチャーしていた。


喜助も俺と同様に火槍と石火矢を周囲の兵士に教えていく。

そしてそれを教えた兵士たちが次々と味方に教えるというサイクルが生まれる。


ということで人手は足りてきたので喜助が俺に声をかけてきた。

「新田義興様某はいかが致しましょう」

「皆に火槍と石火矢の使い方は教え終わったか」

「はい」

「ならお前は新田義貞さまのそばで控えておけ」

「はっ承知いたしました」


新田義貞も甲板に上がってきた。彼が我らが棟梁、今回の総大将だ。

「準備はできたか」

新田義貞が兵士たちに声をかける。

「はいっ」

皆声を揃えて返事をする。ここから先は戦場だ。油断はできない。

「では行くぞ」

火槍に火をつけ威嚇射撃をする。ドンッと腹に重く響く音がして俺たちは攻撃を始めた。


敵方も浜から弓矢を放ってくる。

「ぐっやりづらいな」

そう文句は言いつつ石火矢に火をつけ足利軍に砲弾を向ける。

再び低く砲弾が鳴る。


「なんだこれはっ」

「新田軍は何をしているんだ」


どうやら火槍と石火矢の効果は絶大のようだった。これらはまだ日本に伝来していない武器だから当然だ。俺が教えた甲斐があった。


「これで菊池の軍が五百余いるからこのまま進めば勝てそうだな」


新田義貞がひとり呟く。

「それに援軍を入れれば五千でございます」

そこに一人の男が現れる。菊池武重だ。

以前菊池槍を導入するときに相談してきた男だった。彼は後醍醐天皇から肥後の守の位階を賜っていた。つまり新政府軍で九州を代表する武将だ。


再度石火矢が足利方に向けられる。

「くそっ」

「あれを止めるには船に移りこむしかない」

そうして船にのって来た足利軍の兵士が俺たちの船に移りこんできた。


「己新田軍めっ」

「菊地に負けていられるかっ」

彼らは太刀で俺たちに襲いかかる。

だがーー

ザンッ

自分の鬼丸で敵方に切りかかる。


「なんだあいつは」

「あれは新田義貞の次男の義興だ」


こちらも足利軍の船に乗り込み移乗攻撃をしかける。

「行けっ」

次々にやって来る兵士たちの攻撃を巧みに避けながら攻撃を続ける。


「新田義興殿、助太刀致す」

菊地武重が柄の先に短刀をつけた菊地槍で応戦する。

「かたじけない菊地殿」

俺は彼に感謝すると次の船に移っていく。


「新田軍に負けていられるか」


足利方も次第に兵が疲弊していくのが目に見えて分かる。


俺は鬼丸を振り回し敵の急所を狙っていく。相手は胴丸に大袖を身に付けているため動きが俊敏だ。

うまく俺の攻撃をかわしていく兵士たちもいたが目を凝らして敵を見定める。

「ふんっ」

狙いを定めたところを着実に切りかかっていく。


「このくらいか」

近くにいた船はあらかた片付けたところだった。


一陣の風が吹く。

すると砂塵で視界が悪くなり周囲がほとんど見えなくなる。


(神風か)


元寇で日本側に吹いたとされる神風。それが足利高氏方に今吹いているというのか。

(これは難しい戦いになりそうだ)


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