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第六十三話 多々良浜の戦い

足利高氏はしぶとい男だった。

悪運が強いのかなんなのかとにかく生き残る男なのだ。


そしてついに多々良浜の戦いだ。

史実では菊地氏が足利軍を追い詰め大宰府を陥落させるのだが途中敵の少弐一族を倒したのを最後に足利二百五十の軍勢に負けてしまうのだ。


それで足利高氏は九州だけでなく四国にも勢力を広げ天皇方を脅かす存在となる。


とにかくここで足利高氏を止めるしかないのだ。

さもなくば大勢の人がなくなる。新田義貞も、楠木正成も。後の戦いで自害することになる。


だから俺がその運命を変えなければ。

運命を変えてみんなを救わなければ。


かくして俺は火槍を開発することに。

はじめて作られたのは中国の宋代。火薬を紙に包んだものもしくは節のとった竹の中に詰めたものを長い柄のさきにつけてそれに火をつけて爆発させていた。はじめは威力はなかなか出ずに音を出して威嚇するだけだったが、この火槍に金属片を混ぜて殺傷能力をあげた。


だがこれだけでは不十分だ。だから石火矢も開発することに。

これは青銅で鋳造されたもので砲尾から直接火をかけて発射する仕組みになっている。

ちなみに火薬を直接入れるのではなく子砲といってカートリッジ状の火薬と弾丸を装填して使用する。

これにより連射が可能になり火槍よりは使えるものができた。


船は準構造船を使用した。この時代のものだ。

準構造船とは丸太をくりぬいたものを前後に継いで船底部に舷側板を取り付けたものだ。

舷側とはふねべりのことで船の側面を意味する。


本当はガレオン船やジャンク船も作りたかったがそれはおいおいやることにしよう。


さて多々良浜だ。俺たちは準構造船に乗り長門を出て筑前に向かった。


「そろそろ決戦だな」

潮風が頬をなでる。それが心地よくて俺は甲板に上がっていた。

「俺ができることは何でもしてやろう」

そう固く決意したのだった。だってみんなを失うわけにはいかないから。

いくら俺が未来からやって来た人間で歴史の流れを理解しているからとはいえそのまま歴史通りに身を任せるわけにはいかない。その先に待っているのは身近にいる人間の死だから。

「喜助」

「はい何でしょう」

俺は喜助に声をかける。ずっとそばに控えていてくれたのか返事は早かった。

「獅子が自分の子供を崖に落とす話を知っているか」

「いえ。どんな話ですか」

「親獅子は我が子を産んで三日したら断崖から投げ落とす。もしその子に獅子としての才能があるならばその子は生き残るだろうという話」

「ほおその話は初耳ですな。しかしいささか酷な話でもありますね」

「お前もそう思うか」

だがもし今回失敗したらこれから待っているのはそういう話なんだよと言いそうになり口をつぐむ。

先程の言葉は楠木父子、桜井の別れである。

湊川の戦いの直前楠木正成は嫡子正行に言葉を残す。それは獅子の親は自分の子を崖から落とすが自分にその素質があるならば死ぬことはないだろうと。そして忠節を誓った相手に裏切ることは決してしてはいけないということを。彼は父の教えを守るが結果的に戦いの末亡くなってしまう。悲しい話だ。

「それにしても流れが急だな」

関門海峡は潮流が一日に四回変わるため航路は複雑だ。

「船酔いするといけませんから」

喜助はなにかを察したのか俺を中に入れる。

「そうだな。これから戦だ。体も休めないとな」

「義興様も無理をなさらずに」

これから大戦が待っているのだった。俺は喜助に従い多々良浜の合戦の作戦を練るのだった。



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