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第五十七話 箱根・竹下の戦い

大塔宮は語る。これから足利と戦うのは苦しい道だと。

「私たちは竹下で待ち構える足利高氏を倒さなければならない」


今回俺たちは二手に別れて戦う。新田軍は箱根で防戦を。そして大塔宮と俺の軍は足柄峠の竹下で足利高氏を攻めることになる。両方とも関東最大の防御拠点である。


事前に打ち合わせをすることがかない、俺は新田義貞のもとを訪ねる。すると前には菊池武重が悩んだ顔をしていた。


「どうしました菊池殿」

「おおこれは新田義興殿」


「私はこの菊池槍を是非とも実戦で使いたいと思っておるのだ」

「菊池槍、と申しますと」

「これだ」


彼は短刀を竹の長柄につけた槍を俺に見せた。

「新田義貞殿が納得していただけるかどうか」

「うーむ」

俗に言う菊池槍とはこのことか。

菊地槍とは菊池武重が考案した戦術で千本の槍に対して三千人の兵士を倒したと言う。そのくらい威力のある戦術だったのだ。

またこれにより菊池千本槍といった槍での集団戦術が鉄砲伝来する前までは槍衾やりぶすまという有効な戦術として重宝されたのである。


「これならいけるんじゃないですか」

「そうかよかった」


そして新田義貞の前で同じものを披露する。

「今回の戦、私肥後の守菊池武重が先鋒を務めたいのです」

「どうしてだ」

「秘策があるのです。この菊池千本槍で相手を蹴散らすのです」

菊池武重は新田義貞に菊地槍を見せる。

「おおそれなら勝てそうだ」

「お前を先鋒に任じよう」

どうやら新田義貞は納得したようだった。それを俺がじっと見つめていると気がつくと彼は話しかけてくる。

「どうした義興」

「お話がありまして」

北条時行との戦いが終わってすぐに戦。それも分かれて戦うとなるとなにかと心配だ。

「今回分かれて戦うことになりますが作戦は滞りなく進んでますか」

「お前も大概心配性だな」

豪胆な新田義貞は愉快そうに笑った。

「それと大塔宮と俺の軍についてですが」

「作戦は二人で練るとよい」


再び大塔宮のもとを訪ねる。

「新田義興、作戦を練るとするか」

大塔宮が地図を広げて作戦に必要な場所に印をつける。

「前にいった通り足柄山の竹下は関東の防御の要だ」

「それを守るだけでなく足利高氏に一泡ふかせるのだ」

相手側も竹下と箱根が防御の要だとは重々承知の上だろう。なにか奇策を用意していくるかもしれない。

とすると考えうることは。

「今回は副将として大友貞載、塩冶高貞がやってくる」

それはつまり副将の二人が裏切るかもしれないということだ。


「足利が何をしてくるかはわからない。だがそう簡単にはやられないはずだ」

なかなか難しそうな展開になってきたぞ。と緊張した俺に対して大塔宮は思い出したように話始める。

「そうだ。礼を言うのが遅くなった」

「先日は東光寺にて救い出してくれたことを感謝する」


後醍醐天皇の御前でも俺のことを話してくれたし大塔宮は義理堅い人なのだろう。元々天台座主にまでなった方だ。武勇に優れ知恵もある。人格は申し分ないようだ。

「いえ。俺の方こそ後醍醐天皇から鎌倉将軍府の話をいただいたのも大塔宮のおかげですよ」


後醍醐天皇の名が出てきて彼は憂いを帯びた表情になる。

「父の命令で幽閉されていたことを思い出すときがある」

「あれは悪夢だ」

東光寺に軟禁されていたときのことだろう。そこでの過酷な生活が想像できて俺は返す言葉がなかった。

どこか遠くをみるような目をして彼は続ける。

「ああ見えて父は強欲な人だ。息子である私が言うんだ間違いない」

彼は息子として後醍醐天皇に思うところがあるのだろう。だからこうして俺に忠告するのだ。

「これから先どうなるかはわからない。だが父に踊らされてはいけない」

そして小さく笑う。

「父に許しを乞うた私が言うのも変な話だがな」

かくして戦いは再び幕を開けようとしていたのであった。

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