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第五十五話 御前

後醍醐天皇の御前である。


俺と喜助は大塔宮を連れて京の御所までたどり着いた。

それだけでない。成良親王と身体を拘束された北条時行の姿がある。

「さて今回の沙汰についてだが」

後醍醐天皇がおもむろに話し出す。

「新田義興、大塔宮をよくぞ無事に取り戻してくれた」

「はっ」


実際幽閉を決めたのは後醍醐天皇なので結構複雑だ。恐らく大塔宮も不安なのだろう。再び自分を信じてくれるかと。一度信頼を失うとそれを挽回するのは難しいことだから。

「父上これで私の無実は晴らされました。信じていただけますか」

「足利直義が部下の淵辺義博を使って私を暗殺しようとしたことを」


「そして私が帝位を簒奪をしようなどとは夢にも思っていないことを」

「全ては足利の陰謀だったのです」

大塔宮は必死な形相で後醍醐天皇に語りかける。

「この者共が私の命を救ってくれました」

俺と喜助に視線を送り大塔宮は軽く頭を下げた。

「私からも感謝の言葉をのべさせてもらおう」


「それだけではありません」

成良親王は付け足す。

「北条時行との戦いもかの者に大いに助けられました」

「それにこうして北条時行の身柄を京の御所まで運ぶことができました」


「さて北条時行についてだが」

「帝に逆らおうとなど愚かなことをしたと思っています」

「建前はいい」

「お主はこれからどうするかは私の采配にかかっている」

「お願いです。私をどうか陛下のお役に立てるよう働かせてください」

「どうしてだ」

「父のためです」

「父は亡くなりましたが朝敵の汚名を着せられました。しかし私は北条家の汚名を返上すべく帝のために働きたく存じ上げます」

後醍醐天皇は迷っているようだった。果たして彼が本音を語っているのか。だが俺には北条時行が本当の事をいっているようにしか思えなかった。彼は父思いの気の優しい男なのだ。


「あの、俺が申し上げるのもおそれ多いですが」

「よい話してみろ」

「北条時行は確かに反乱は起こしたけれど元々彼を担ぎ上げたのは諏訪頼重です。責があるとするならばそれは諏訪頼重とその一族にあるはずです」

「やめるんだ新田義興」

「彼は諏訪頼重を第二の父親として思慕していたはずです。でも同時に今は亡き北条高時のことも愛していたんだと思います」

「つまりなにが言いたいんだ」

「彼が言っていることは本当だということです。きっとここで生かしておけば北条家の汚名を晴らすべく身を粉にして働いてくれるでしょう」

「ふむ……」

後醍醐天皇は思案顔をして二、三秒黙り混んだ。

そして。

「よかろう。北条時行お前を恩赦する」

そして北条時行は後醍醐天皇から南朝の帰属が認められ。

「そして北条高時への朝敵恩赦の綸旨を発布する」

これで北条高時が朝敵だったのを撤回できたわけだ。

「ひとまずお前は北畠顕家のもとで働くとよい」

北畠顕家はかの神皇正統記を記した北畠親房の長男であり官位は正二位権大納言兼鎮守府大将軍、贈従一位、右大臣である。義良親王を奉じて陸奥の国に下向していた。

「そして新田義興」

「はい」

「大塔宮救出と北条時行拘束の恩賞に新田一族を鎌倉将軍府に任ずる」

かくして鎌倉の支配は新田の統治下のもと行われるようになった。

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