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第五十話

俺たち新田軍は着々と北条時行軍を追い詰めていた。

奇襲を仕掛けては敵の将を打ち倒し相手の士気を下げていった。


だが昼夜共に移動しているせいか俺たちの体力は日に日に落ちていった。

「いささか疲れましたね」

「そうだな新田義興」

我らが棟梁である新田義貞も血の気が多い男とはいえどこか顔色が悪かった。

ということで休憩を挟み元の計画に戻る。

「そろそろ元の計画に戻るとするか」

「北条時行軍を挟み撃ちにしますか」

足利直義軍が待っている菅原神社から敵を挟み撃ちにするように新田軍を移動させる。


前線ではすでに戦いが始まっている。

足利直義軍がどこまで持ちこたえてくれるかそれが問題だった。


俺たちは北条時行軍の背後をつくような形で敵に攻めいる。

「いきますよっ」

「皆のものついてくるのだ」

俺と新田義貞はいつもとの同じように先陣を切る。

陣形は三角形の陣である魚鱗を意識して形成している。


ザンッ


俺たちは太刀で相手を斬り倒す。

この調子で敵の背後を次々と狙っていき。


「うりゃあああああ」

鬼丸の切れ味も抜群だ。伝説の刀だけあって癖はあるが使い勝手がいい。


このまま勝てるのではないか、そう思ったときだった。


その空気を打ち消すような事件が起こる。


足利直義軍から使者が派遣されたのだ。


「足利軍が押し込まれています」

話によれば北条時行軍がものすごい勢いで攻めこんでいるらしい。


「聞いたか新田義興」

「これは不味いですね」


考えうる選択肢は二つある。


足利軍が持ち直すのを信じてこのまま戦い続ける。

それか彼らのもとに急いで引き返す。


「引き返しますか」

「この状況でか」


新田義貞の言わんとすることはわかる。

このまま勝てる戦を放り投げて援護するのが果たして正しいことなのか。

戦略として勝てるものなのか。

俺たちは決断を迫られていた。

相手を信じてこのまま挟み込むか。それとも味方の危機に立ち向かうべきか。


「でもこのまま戦っても俺たちの将軍が撃ち取られれば俺たちの敗けが決まります」


将軍とは成良親王のことだ。彼が無惨に殺されてしまうのは忍びない。

いくら足利直義がついているとはいえやはり不安なことには代わりない。


それに大塔の宮の命だってこの戦に破れれば危ないのであった。


俺たちの選択ひとつで全てが変わってしまう。

見知った顔の人間が死んでしまう。

どうしてもそれだけは避けたかった。


「戻りましょう」

「しかし」


「ではこう致しましょう」


俺は足利直義の使者と一緒に行動し、新田義貞はこのまま残る。

もちろん新田軍は攻撃を続け、俺は足利軍の様子を見に行く。


これでダメそうならば新田軍の援軍を呼ぶ。


「お前はそれでいいのか」

「様子見しにいくだけですから」


何より足利軍が裏切らないという保証もない。そういうもろもろを含めて菅原神社に戻るつもりだった。


「それじゃお暇させていただきます」

「ばか。これからが肝心だろ」

新田義貞から拳骨が一発入る。

「気を抜くなよ義興」

「あいわかりました」

かくして俺たちは別れることになった。

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