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第三話 足踏み

ということで俺は弥次郎さん家の馬小屋で暮らすことになった。


弥次郎さんはこのあたりだと結構有名な篤志家らしい。

ご家族もみんな親切でよくしてくれている。だけど食事のランクはもうちょっとあげてほしいな。


ここからだと鎌倉街道があると七人家族の次男次郎丸が教えてくれた。

ちなみに俺が前にいた時代でも現存する街道だ。今で言うところの聖蹟桜ヶ丘から分倍河原までの道である。


と話がそれてしまった。これもまた親父の影響なのがちょっと悲しい。


そうそう次郎丸のことだけど、彼はまだ子供なのでいつかは立派な名前をいただくのだと自慢げに話していた。焦らなくてもいいけどいいおとなになれるといいね。


ということで家のなかをじっくり観察。弥次郎さん宅は人の出入りが激しく、農業以外にもてを出しているようだ。時おり借上といった歩くの大丈夫?って心配になるほどふくよかな女性がお金の催促にやって来て文句をいっているのが目にはいった。


どうやら彼の家は鋳物で儲けているらしい。事業を拡大したいのかちょっと奮発しちゃったんだってさ。弥次郎さん大丈夫かな。


でも彼には自慢の人徳と経済力がある。俺を助けてくれたくらいだし。


「今日も仕事ちゃんとやってるか、九郎丸」

「はい弥次郎さん」


ノリはうちの親父のボリュームを三十パーセントオフにした感じ。バーゲンセールだったらお買い得だね。これもまた俺が怪しげな格好で田んぼに落ちていたからだろうけど。


現代のスーツなんてこの時代にはない。弥次郎さんはきれいにしたスーツを借上に質として渡し、西方より出でた宝物扱いでごまかしていた。なんでもありとあらゆる災厄にきくと吹聴していた。だから自然と態度も柔らかさが出ている。まあうちの親父が比較対象なんだけどね。


「お前は仕事熱心で他の小作人たちが誉めていたぞ」

「いえいえそんなことは」


ちなみに当たり前だけど通いの小作人もいるので俺の存在意義とかほぼないに等しい。さすが金持ちの弥次郎さんだ。鋳物はやめたっていいんじゃない?って言いたかったけどまあ厄介になってるからね。


「馬小屋の具合はどうだ?」

「みな健康そのものです」


ついでに馬飼さんにもお世話になって馬の扱い方も教えてもらった。この人は親切だけどあまり話したがらないのが難点だ。


「じゃあ俺は他のところに行ってくるからお前も仕事に励め」

「承知いたしました」


そのまま弥次郎さんは去っていった。


そして続く草むしり。

しかし暇だ。太陽に焼かれながら日中ただ雑草を探して抜く。生産性って言葉の意味を忘れかけるほど途方もなく地味な作業だ。

というか俺このまま草むしりだけで人生終わっちゃうの?


ということで一念発起して新たな作戦を練りにいくぜ1

もちろん馬飼さんにも手伝ってもらうけどね!

室町時代に入ると今までの借上は新しく土倉と呼ばれるようになり、手広く商売をするようになったそうです。ネット情報ですが何かの役に立てばと。

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