表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/88

第三十七話 鎌倉

辛うじて俺たちは生き残り幕府のある鎌倉に向かっていた。


俺は負傷している新田義興の代わりに指揮を勤めることになった。


今回の勝利で俺たちの軍勢はさらに大きくなり心強い限りだった。

ということで作戦準備開始だ。


鎌倉は海と山で囲まれた天然の要塞である。これを落とすにはなかなかのアイデアが必要となる。

ということで現在いるメンバーの紹介だ。


まず一人は言わずと知れた総大将の新田義貞。それに彼の弟の脇屋義助、負傷している新田義興は戦力外として彼の地元の越後にかえってもらう準備を進めていた。


一軍は極楽寺の切通へ。もう一つは巨福呂坂。そして俺たちはというと仮粧坂へ向かった。


それにしても切通と呼ぶだけあって斜面は急だし、馬で進むにも厳しいものがある。

その上敵の策略で弓矢で待ち伏せされたり、とんでもない罠を仕掛けている。


だがさすがは新田義貞。敵の妨害をものともせずに敵を凪ぎ払っている。

「新田義貞様」

「どうした九郎丸、いや今は新田義興か」

新田義貞は小さく笑った。

「あれもずいぶんと立派な男だったが今は戦に出られるような状況ではないからな」

「でも俺はいつか彼に元の仕事についてほしいと思うのです」

「そういうところがお前の気に入っているところなんだ」

新田義貞は目を細めて遠くを眺めていた。

「才知に優れ武勇に勝る義興でもお前の機転にはずいぶんと助けられたものだ」

「これからは私の右腕として頑張ってもらうぞ」

仮粧坂の敵は数を徐々に減らしていき最後は撤退していった。

「これで一つは完了したな」

「幕府軍もなかなかやりますね」

俺たちが言葉を交わしている際にも

町中は大混乱で鎌倉の住民は逃げ惑いまさに混沌とかしていた。

「あやつらは地の利をいかして戦いに挑んでいる分こちらの方が分が悪いな」

「だがこの軍勢には勝てるまい」

新田義貞はニッと笑った。

「これからあの作戦に出るぞ」

「あの作戦というのも」

「稲村ヶ崎を利用するのだ」

これは以前俺が案として練っていたものだった。

「ついに実践ですか」

「ああ、これはお前にかかっているぞ」

肩に手を当てて激励される。

「俺たちは極楽寺坂に向かいます」

だが極楽寺の切通は急で山がそびえ立っていて険しい道のりだ。

しかも盾を持った敵兵が列をなして待ち構えていた。

南の稲村ヶ崎には海兵が待ち受けていてまさに背水の陣の状態だ。


だが俺たちには秘策があった。

時間は夜明け前。辺りはうっすらと明かりがさす程度。


「新田義貞さま、あの準備を」

「ああわかっておる」


そして。新田義貞の海の龍神への祈りの言葉とともに剣が海に放たれた。

迷いのない動きで黄金色の太刀が稲村ヶ崎に落ちるや否や。


「なんだこれは」

敵勢の声とともに潮が引いていく。

そして弓矢を構えていた海兵たちも沖合いへ流されていく。


これが俺たちの秘策。

相手の海兵たちを海に流して敵を減らす作戦だ。


時間を干潮時に合わせて太刀を流すことでまるで奇跡が起きたかのように見える。

新田義貞の命令に従って作戦を練った甲斐がある。


そして新田義貞からの止めの一言。


「古代中国には水不足にあえいだときに岩に剣を突き刺して霊現の力から水が湧きでたという。また大和の国が新羅と戦をしたときも神功皇后が引き潮の霊力を宿した宝飾品で見事勝利を納めたという。皆のもの攻めるぞ」


かくして戦況は一歩前進したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作保元・平治の乱をテーマにした
『常磐と共に』
連載中です
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ