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第三十六話

北条家は自身の威信にかけて全力で挑んでくる。対する俺たちはというと太刀と弓矢で応戦していた。


誰かが三浦一族に連絡を取ってくれたようだ。深手をおっている新田義貞や義興の命のためにも味方が大いに越したことはない。


「なんだ」

「俺たちの戦はまだ続いている」

「だから協力を頼むというのか」


「ああ。その通りだ」


三浦一族の代表がしかめ面で現状を聞いてそれに俺たちが答える。


「ならば致し方ない」

「礼はあとできっちりいただくぞ」


三浦一族はニヤリと笑う。

この借りは高くつきそうだ。


こうして長きにわたる戦は彼らと力を会わせて北条軍を立ち退けることに尽力した。

敵の技は弓矢が中心だからそれをすり抜け太刀で騎馬を倒していく。


「うりゃああああ」


大声をあげてでもいないとやってられない。


他のみかたも疲弊が見えてきてまさにピンチだから俺も新田義貞と一緒に敵陣深くまで太刀を振るう。


そのなかでも三浦一族の力は絶大だった。


「おのれ北条めっ」


大群をつれて戦う三浦義勝はまさに百人力だ。


こうして北条軍は徐々に劣性になり退却にまで至った。


「新田義貞さまっ」


戦が終わり真っ先に俺は彼のもとに駆けつけた。


「どうした九郎丸暗い顔をして」

「だってあなたが死んでしまうかと案じていたので」

「それより義興の方を見てやれ」


「自分のことは自分が一番よくわかっている」


浅い息を繰り返す新田義貞を介抱しているとぼそりと彼の声が聞こえた。


「大丈夫ですか」

「なに軽い傷だ」


仕方なく新田義興の方へ向かうと彼は満身創痍でぐったりしていた。


「薬はあるのか」

「この傷で生きているのが奇跡のようだからな」


「私も武芸に日々鍛練していたがここまでとはな」

「そんな言い方やめてくださいよ」


「九郎丸お主にたのみがある」

「なんでしょうか」


ボロボロの義興を見ていたらどうにかしてやりたいと思ってしまった。

俺が彼を助ける方法があるのだろうか。


ただじっと見守ることしかできない。


そうして彼の息がどんどん浅くなっていき。


「死なないでください」

「それは約束できないかもしれないな」


そしてかすれた声で笑った。


「お前に俺の代わりを勤めてもらいたいんだ」

「ということは」


「これから先お前は俺の代わりに指揮を執ってほしい」

「そんな滅相もない」


「お前にはずいぶんと助けられた。だけど最後の望みだ」

「最後なんて言わないでください。その傷だってきちんと治療すれば治るはずです」

「それは叶わない夢かもな。だからひとつだけたのみだ」


「俺の代わりに新田義興として生きてくれないか、九郎丸」

「どういうことですか」


「お前には武芸の才能がある。そして機転が利く。だから傷をおって先人を切るのはお前が向いている」

「でも義興さまこそ武芸、教養あふれた人間ではありませんか」


「その言葉はありがたくいただく。だが打倒北条のためには俺には大きすぎる」

「でも」

「これは誓いだ。お前と俺との」


「俺は十分戦って父親に尽くしてきた。それももう限界かもしれない、そう思うのだ」

「というのも」


「俺は父上と比べるとたしかに武芸は劣っている、あれは天性のものだ」

「なにもやめなくても」


「この戦いでようやくけりがつけられるのだ。頼む」

「はい」


渋々頭を下げる。本来なら彼こそが中枢にいるべき存在だが。

こうして俺は新田義興として生きることになった。

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