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第三十四話

新田義興はなんとか一命を取り戻したようだ。

俺たちは戦略的撤退により軍は少しずつ撤退していった。


父を庇って腹部に重症をおった新田義興の彼が療養中は俺に仕事が回ってきた。

全体の指揮、現状把握、やることは色々ある。まあ新田義貞に相談すればいいじゃないかと一人合点した。


「新田義貞さま、これから俺たちはどうしたしましょう」

「結果的に戦略的撤回をしたのだから今できることを考えるのだ」


今できること。それは新田義興の体調優先、そして代わりに俺ができることを探すことだ。

「それにしても俺に総大将を勤められる能力があるなんてなかなか思えません」

その言葉に新田義貞はにたりと笑う。

「それがわかっていればあとは義興にでも相談すればいい。あいつはああ見えて面倒見がいいからな」


新田義興は俺と同じように全線で戦っていた。それが敗因となったのだが。それでも彼の志は立派だった。

俺も彼の姿に密かに尊敬していた。俺と比べたら優秀な男だが気さくで話しやすい男だった。


こうして俺たちはああでもないこうでもないを繰り返して、戦に望む。

満身創痍とまではいかないが体力のいる仕事だ。


敵はどんどん新田義貞の陣に襲いかかってくる。


目の前には負傷した新田義興、いくつもの敗戦者、そして勇気のある新田義貞の姿が。


勝ちたい。だが俺のちからはニート並み。だから新たに弓矢を執事の船田から受けとる。

前回と比べてある程度慣れていたから今度は上手くいった。


敵の総代将目掛けて弓矢を放つ、

時おり近づいてきた騎馬兵も辛うじて太刀で凪ぎ払う。

『父上を頼む』

心のなかで新田義興の言葉が脳裏をよぎる。


彼はまだギリギリ生きている。戦場では何が起きるかわからない。

でも俺たちは仮にも家族だ。


守り、助け合い、そんなことをしながら成長していくのだろう。


俺たちが見舞いにいったときは新田義興は苦しげな表情をしているかぼんやりと外を眺めていた。

「新田義興さま、お加減はいかがですか」

「見ての通りだ」

腹部を負傷した以外にも腕に大量の傷跡。百戦錬磨という噂に嘘はない。

危険をおかしてまでこの人は戦い続けるのだろう。

それが彼のプライドなのだ。

「無理して倒れたらもとも子もなくなります」

「そのときはお前に指揮を任せる」

 そんな荷の思い仕事を巻かせられると緊張するな。

「義興さまではいかがですか」

「奴は今は動けないのだ」

「じゃあ義貞さまは」

「すでにやってのけたから頼んでいるんだ」

「我々清和源氏の誇りにかけて逆賊の北条家を滅ぼすぞ」

「平家の血を引くやからに負けてたまるか」

こうして本来なら戦略的撤回をするはずなのだが新田義貞は前進を続けるのであった

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