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第三十三話

目の前に繰り広げられる光景。


俺の義理の父親である新田義貞と兄に当たる新田義興。

今二人はピンチだった。


幕府軍の攻撃は容赦がなかった。二人を囲みこみ集団戦にもちこんでいる。

しかも俺たちは連日の争いで体力をかなり消耗していた。


気がつけば新田義興は肩で息をしている。いくら優秀であれど長期間の戦は彼にも厳しいものがあるようだ。


「待ってろ二人とも!」

全速力で俺は後方に戻る。確かに俺には大太刀は荷が重かったが家族の危険を前に引くわけにいかない。


「どりゃああああ」

近くにいる騎馬をボロボロにして守るべき人のところに駆け抜ける。


「俺たちは負けないぞ」

「幕府の裏切り者が何をいう」


みな一人一人はそこまで強くないけど揃うとかなりのちからになる。

正直彼らと一対一に持ち込むのが勝利の近道だ。


だが悠長に構えている暇もない。俺は全速力で入り乱れた軍の後方へと向かう。

時おり弓矢が飛んでくるが鎧のお陰なのか体に当たることはなかった。


「父上っ。横から敵が」

「それは分かっておる」


新田親子も上手くやっているように見えるが明らかに体に疲れが現れている。

当然だろう。作戦係は俺だけど、全員の指揮を執るのは彼らだからだ。

精神的にも体力的にも限界が近いのだろう。


「新田義貞さまっ」

「どうした九郎丸」


どうにかして近づくことができたが騎馬や歩兵が入り交じって俺は身動きひとつできない。

新田義興は冷静に敵を切り落としていくというのに。

これが実力の差だと思い知った。だけど。


「助太刀させてください」

「お前はやめておけ。ここは危険だ早く帰れ」


助けることを懇願したが突っぱねられてしまった。

「でもあんたたちを放っておくことなんてできません」

「見殺しになんてしたら最悪だろうけどな」


新田義興はふっと笑った。

「でもそれが俺の人生だと思っているんだ」


その瞬間だった。一人の幕府軍の男が県を振りかざす姿が目に入ったのは。

その刃は新田義貞に向けられていて。

「危ないっ」


俺が声をあげたと同時だった。

切っ先が人の体に当てられ、誰かの呻き声が聞こえた。


若い男の声だった。よく聞き覚えのある。


「義興っ」


彼は自分の父をかばったのだった。下腹部からおびただしい血が溢れだしてくる。


「これが俺の宿命だったのかもな」

新田義興は虫の息でポツリと呟く。


「父上を守れてよかった」


心のそこからそう思っているようだった。その表情はどこか穏やかであった。


「次に生まれたときもまた同じことをするのだろうな」

口の端をつり上げて笑う。


「九郎丸、父上のことを頼んだぞ」

それが一瞬の出来事だと理解できず俺は一人で立ち尽くしているのであった。



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