第二七話 小手指原合戦
絶好調の新田義貞に対してヘロヘロという状況に陥ってしまった俺であったが一縷の希望により休戦を進めることになった。時間はようやく日暮れ。そろそろ両軍とも疲弊していく時間帯だ。
ここでノリノリの新田義貞を止めなければ俺たちの軍は疲弊してしまうだろう。
ということで作戦変更。
この戦を翌日にまでに変更の約束だ。
これが案外難しい。幕府軍は裏切り者の新田軍に対して恨みもあるだろうし、この調子で追い詰めたいという願望もある。それをどうにかするのが俺の仕事で。
「あの俺たちそろそろ休戦にいたしませんか」
俺が意を決して幕府軍に交渉に当たる。だが当然芳しい評価が得られるわけでもなく。
「おまえは何をいっているのだ」
実際は俺たち新田軍の方が優勢なんだけれども。一度休憩を挟まないと体力が持たない。
いくら異形のものの力を借りたとしても所詮は人間同士の戦い。
山伏や天狗たちが協力してくれて戦況はなかなか上出来だったが致命的なダメージを与えるには至らない。
そしてなにより総大将の新田義貞が勢いにのって冷静さを失っている。
「新田義貞さま、そろそろ日没ですしこのあたりで休戦はいかがでしょうか」
「しかし今は丁度攻め時ではないか」
「軍のみなが疲弊しきってい降ります。このようなときに戦を進めるのはいささか危ないかと」
「たしかにそうであるが」
「おれが交渉にいっていきます」
北条高時と縁のあるおれが話にいけばどうにかなるかもしれない。なぜなら俺たちにはお互い過ごした時間があるからだ。たとえ翻意を起こした相手として狙われていても彼の心だって変わるかもしれない。
だから俺は使者として幕府軍に交渉しにいった。
「俺たちは今優勢ですが、そちらは厳しい状況ですよね」
「ああそうだが」
「そして今は日没。それならば戦は明日に見送るのはいかがですか」
「ずいぶんと強気だな」
「強気な人間は嫌いですか」
「困ったことに嫌いじゃない」
敵方の司令官は低く笑った。
「まあいい。それならば明日に戦に備えるか」
「つまり一時休戦ということでよろしいのですね」
俺たちは三十余度の戦を交えてようやく休戦にまで持ち運べた。
こうして新田軍は入間川に、幕府軍は久米川に布陣した。




