第二十六話
現状を説明しよう。小手指原にて陣を構えた俺たち新田軍と幕府軍。
一方は幕府に従わず謀反を起こしたとして追討される直前。
もう一方は勅命により国を揺るがす存在として翻意を起こされている最中。
なかなかシビアな戦いだね。
ん?ここで俺はなにかに気がついた。
そう。これって所謂太平記に出てくる小手指原合戦だよね?
たしかあれによれば俺たちは三十余度の戦を交えるのだとかなんとか。
って先程二回くらい戦ったけど命からがらなんですけど。
どうしよう。新田義貞はノリノリだ。
たしかに優勢になったり劣勢になったりを交互に繰り返し、じわりじわりと敵方をうまく追い詰めている。
彼ならば勝てると信じているのだろう、というかこの手の人種は絶対的な自信を持ち合わせている。それが時に長所となり時に短所ともなる。そして今現在彼は幕府軍に向かって先陣を切っている最中だ。
困ったものだな。俺も新田義貞に近づこうとさっきから相棒のポニーちゃんと奮戦しているのだが。
「これは先程のやからだ」
「皆のもの囲むのだ」
段々戦い方が正々堂々とした騎馬戦じゃなくて集団戦に持ち込まれていた。
「うりゃあああああ」
適当に怒号をあげつつ俺は大太刀を振り回す。いかんせんこれがたいそうパワフルで重量感がある。
つまりニートの俺には体力勝負であり短期決戦でもある。
「弓矢だけでなく太刀まで使いこなすとは」
「真っ向から勝負はやめだ」
案の定向こうは数で勝負してくるし。ぞろぞろと騎馬が集まってくる。
「これでは得意の太刀でも反撃できないだろう」
「弓矢はもう手にしていないようだしな」
絶体絶命の大ピンチ再来。これって勝ち目あるのかな。
正直喧嘩って一対一が正しいやり方だと思うんだよね。
「お前ら卑怯だぞっ」
「仕方あるまい。そなたは先程九郎丸と名乗った」
「九郎丸と言えば新田義貞と愛人との恋が悲恋に終わり川に捨てられたはずが生き残り、村では厳しい裁きを受けて追放されなお這い上がった剛の者と聞いておる」
「しかも異形の力を有しているとか。今回の山伏たちもお主の部下と聞いておる」
噂に尾ひれがついて俺のことがさも立派なことみたいにされている。
「それ全然違うからなっ」
「嘘をついた人間が自分から正直に言うはずがないのだ」
「しかも異形の力があるとすれば我々も正々堂々と戦っても勝利を得ることはできまい」
やつらの過大評価のせいで更ににじりよられ刃を突きつけられる。
「早く降伏するのだ」
「さもなくばこれが待っている」
銀の刃が妖しい光を放つ。このままじゃ生き残れないよ?
「ちょっと待ってくださいよ」
「怪しげな術を使うはずだ待てるはずがないだろう」
相手方の目は本気だ。どうやら俺は怪しげな山伏の長として恐れられているのは本当のようだ。実際はたまたま一緒にいた時期があって、戦の時に声を駆けたら新田義貞の人望で集まっただけなんだけど。
「皆のものやるのだ」
男の声とともに周囲が襲いかかってくる。
こんなときは……。
「逃げるが勝ちだあああああああ」
幸い俺の馬は他のやつらのよりは少しだけ足が早かった。駿馬というやつだ。
ポニーちゃんは敵方の隙をついて空いた場所をすり抜けていく。
ということで全速力で新田義貞のもとへと駆け抜ける。だが彼は戦いの最中だった。
「あのっ」
「これだけしか来ないのか。どうした怖じけづいたか」
「新田義貞さまっ」
「幕府軍のわりに覇気がないやつらだ。俺の敵ではない」
「だからっあのっ」
「朝敵を成敗してくれるわっ」
早く停戦しないとまずいのだが新田義貞は絶好調のようだった。




