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第一話 出発

みなさんこんにちは。俺は絶賛ニート中なんだが元気にしてるかい?

働くってつらいよね。俺は三日坊主なんて言葉は嘘だって信じてる。

だって一日働いただけで仕事ってやめたくなるんだもの。

だからみんな頑張ってね!俺は働かないけども!


とこんな文面を書いていたら親父に怒鳴られた。

「お前は何を考えているんだ。友達になんてことを言う!」


やたらと大声を出すのが趣味のおっさんを父に持つと言うのはとても悲しいことだ。


なにせうるさい、黙れ、言うことを聞け、しまいには俺についてこい、なんてかっこいい風なこと言うのに、

パソコンの操作一つ満足にできないのだ。


ちなみに俺も苦手なんだけど親父よりはましなので内心安堵している。


でも苦手だからと言って避けているとなぜだかテレビのリモコン操作まで教えることになっている。

永遠のなぞだ。


ということで今日も今日とて就活中なのである。午前中からハローワークは長蛇の列。


暇なので履歴書をチェックしたあとはスマホを弄っているだけだ。ここで資格の一つでもあれば安心できるのに俺の低いスペックを舐めてはいけません。


なるべく早めにいったんだけれども担当の人によれば俺の条件だと採用は難しいんだって。辛い世の中だ。


まあいいことと悪いことは同時に起きることだってある。つまりへこんだので家路をただ徒歩で帰ることにしたのだ。なるべく時間をかけて歩くこと数十分。


そこにあったのは……。


武蔵国分寺跡地。たしか聖武天皇が頑張って作ったお寺なんだっけ。親父が歴史オタクなので微妙に刷り込みが入ってるんだよな。


ついでにさらに歩くと府中駅があり大國魂神社おおくにたまのおおかみじんじゃもあった。

ここはくらやみ祭りで有名なんだって。ゴールデンウィークあたりにかけて開催されているとかなんとか。


でもまだ帰りたくない。だから京王線の分倍河原ぶばいがわら駅までを徒歩で進む。

するとそこにはなんか馬にまたがったおっさんの像があり。


「この人誰だっけ」


ぽつりと呟くとそいつの隣に牛車が現れた。

ワオなんか和風な雰囲気だぞ。


「新田義貞さまの像であります」


どこからか声がする。


「そいつってなにした人だっけ?」

「鎌倉幕府を倒した方でございます」


ふーん。鎌倉時代か。ってことは源頼朝とかその辺?


「時代は鎌倉末期、清和源氏の力が弱り、幕府を平家の血を引く北条家が牛耳っていた時に、あの方がご活躍したとのことをうかがっています」


やたらと慇懃な男だ。しかも妙に時代がかっているというか。


要するにただの好奇心だった。

「せっかくだからさ、それに乗せてよ」

「承知いたしました」


運転手は顔も出さず、牛たちを進める。


ああ極楽極楽、なんて息をついたら意識がぱったり途絶えてしまったのだった。

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