第十七話 話
話数がずれてました。修正すみません!
足利尊氏が反旗を翻したらしい、との噂が耳に入ったのは割合最近のことだった。
なんでも病み上がりなのに何度も鎌倉幕府に出動要請されて憤りを覚え、逆に反幕府勢力に召集され京に向かったのだとか。
俺はというと新田義貞の養子になるという誘いにたいして一つの答えを出していた。
「新田義貞様、少し話をしてもよろしいですか」
「ようやく決意できたか」
新田義貞は相好を崩して俺の話を聞いていた。
「この前俺の出自、才能、そして軍功さえあげればあなたの後継者にふさわしいという話をしていましたね」
「ああもちろんだ」
ならば、と俺は博打に出る。
「今度の鎌倉攻略、指揮を俺に任せてはいただけないでしょうか」
「なぜだ。お主は戦に関しては素人だろう」
予想通りの切り返しだ。だがこれも想定済みだ。
「もし新田義貞様の養子となるならば、それなりの功績が必要となるはずです」
腕を組ながら彼は俺の話を聞いている。
「そして同じく清和源氏たる足利尊氏も挙兵を考えているとのこと」
「確かにな」
険しい顔つきの新田義貞。彼も内心焦りを覚えているのだろう。
ぼやぼやしていると相手に先を越されてしまう。
そして俺も内心自分が指揮を執るべきだと思っていた。この戦で生き残るためにも未来を知っている俺が早めに行動するに越したことはない。
「だからこそ鎌倉攻略を是非とも任せていただきたいのです」
頭を下げて新田義貞に頼む。
「嫌だと申したら」
「そのときのことは考えていません」
彼は俺のことを試しているのだ。人を簡単に裏切れるのか、それとも連れていくのに値する人間かどうかと。
「大層な自信家だな」
「それでも構いません」
「そして最後にお願いがあります。北条高時の止めを指すのは是非とも俺にさせてください」
敵の総大将の首をとるのは侍として最高の栄誉だ。
これで新田義貞も俺が乗り気だということがわかったはずだ。
だが俺が狙っているのはその前に北条高時を逃がすことだ。
彼は自害するのは日本の歴史からも知っている。だから自害を装ってそれができれば彼を守ることができる。
「鎌倉攻略の指揮をさせてください。お願いします」
再び新田義貞に頭を下げて懇願する。
「お主も大きく出たな。さすが私が見込んだだけのことはある」
彼は笑っていた。
「もうよい。お主は仕事に戻るといい」
こうして俺は一つの決断を下すことになった。
だけど日々の仕事とは案外変わらない。
今日も今日とて猪関連のお仕事だ。
とても可愛らしい瓜坊たちが新しい小屋のなかをうろうろしていた。
これは放し飼いから得た反省だった。
丈夫な小屋を作り、頑丈な檻も鋳物屋の弥次郎さんにつくってもらった。
そしてこの瓜坊たちは、肉に飢えているお侍さんや庶民に、霊現あらたかな食物として売りさばいた。
これが結構儲かるんだよ。
ついでに以前柵があった場所は狩り場として、狩りが好きな武士、貴族の練習場とした。俗に言うカントリークラブってやつだね。
そんなこんなで俺は自らこの動乱に巻き込まれる所存なのであった。
清水の舞台から飛び降りちゃったね。