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第九話 転機

前回とノリがちがってほのぼのです。

日を改めて謁見すると、北条高時はフランクな三十代だった。

最初はたしかに酒乱を起こしたバカだな、と思ったが人望はそこそこあるらしい。

「そのもの名をなんと申す」

「九郎丸でございます」


口の聞き方はきちんとしている。まるであの夜が嘘だったように。噂によれば幼い頃より舅の安達時頼あだちのときよりや執事の長崎高資ながさきたかすけに実権を握られていたらしい。

「そなたは誰の紹介で参った」

「武蔵国の弥次郎からの紹介です」


だからこそアホを演じているのかもしれない、とふとそう思った。

おそらく周囲に合わせてしまうタイプなのだろう。

だが穏便に物事を解決しようとする姿勢はこの戦乱の世ではよくないぞ。


「九郎丸、これからはお主に仕えてもらうことになる」

「ははっ」


そして俺の思いとは裏腹にこうして自分は負け戦の方に走り出していた。

こういうときはとにかく言い逃れに限る。


「しかし俺には教養もないですし、武芸に秀でているわけでもないし、よろしいのですか」

「案ずるでない。弥次郎もお主のことを高く評価していた」


彼は小さく笑った。笑うと目尻にシワが寄って優しげな印象になる。


こうして北条高時の傍らにいること数日。

意外と穏やかな生活だった。高時は民衆のことも慮り、貴族の機嫌を取り、武士たちの話し合いにも口出しはしなかった。あれっ結構いいやつだね。


闘犬も好きだと言ってたけど、ただの犬好きでもあるらしい。これが唯一の俺との共通点だ。ワンちゃんって可愛いよね。猫ちゃんもかわいいけど気まぐれだからな。相手にしてもらえないとちょっと寂しいよね。


ということで北条高時の雑務をこなしつつ、ただひたすら流れる時間に身を委ねていた。

昼は政務、夜は宴会。

これが意外とまったりしている。俺は議事録の補佐をしたり、手紙の代筆をしたりしていた。

そうそう、字の読み書きは大体できたんだけど、修行僧に習ったものでは少し不十分であとから高時の部下に色々教えてもらった。


だがそんな平穏な日々も長くは続かず。

妖霊星の招く災害がやってきた。しかも予言通りに。


どうやら自害したはずの楠木正成が天王寺に出現したのだ。

俺は各武士に出兵の依頼する仕事につき、その中には出陣を渋るやつも結構いた。


だって相手はゲリラ戦術の使い手。しかもかなりの猛者。


「九郎丸、お主に新たな仕事を命じる」

北条高時は厳しい表情だった。

そしてそれは戦況が思わしくないことを示し。


「上野国の新田義貞に出兵を要請しにいくのだ」

「しかし彼は清和源氏の名門ではありませんか。いささか難しいかと」

「だからこぞお主に託すのだ」


事態は思わぬ方向に向かっていた。

太平記ではバカ扱いの北条高時ですがネットで調べてみると人望のある人だったらしいです。

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