行間その一・呪いの胎児
『現実よ、真実の為に在れ』
それはこの世の神が定めた絶対原則なり。
一つ、生きとし生ける者は死を迎えるまでこの原則と共にある。
一つ、何人もこの原則を破ることを禁ずる。
一つ、原則を破棄した者の存在は許されないものとする。
この世界に生きる者であれば、幼い頃から強く教えられる教訓。
絶対原則とは絶対。神の領域に踏み込めば愚者として葬られるべき対象となる。ある時、そんな原則を前に真実を追求する研究熱心な夫婦が居た。
誰もが歩きたいと願う真実への道。しかし愚者が通ることは禁じられている。原則についての初めての研究を、この夫婦は『罪』と知った上で行おうとしていた。例え罰せられても、周囲から虐げられようとも、真実を求めるのが研究家だと、お互いに己の知識を交わしながら信じた。
だが間違いだった。
研究は始まって直ぐに失敗だとわかった。
これまでの失敗経験からの判断ではない、全身に悪寒が突き刺さったからだ。それも後戻りのできぬ失敗である。男は消滅し、女は倒れた。
呪いが降りかかったのだ。原則の隠された『四番目』の呪いに………。
一つ、神の領域に踏み込んだ者には『神の呪い』を与える。
無傷に見えた女ではあるが、腹の中には新しい生命が宿っていた。
何人も神の創りし真実を覆すことはできない。どれほどの権力者であろうと、どれほどの独裁者であろうと、神の前では全て無に等しき生き物である。だが、人がいつも挑戦して目指すのは神の頂であり、それも自然のルールである。
「………レナード、助けて………」