叶わぬ約束
時は残酷だ。
大切な人を忘れさせ、嫌な記憶も奪い去って行く。
時は甘い。
僕らにタイムリミットを与え、悲しみを与える。
僕らがどんなに必死で生きたって、楽に楽しいことだけして生きたって、所詮は全て同じこと。
タイムリミットを迎えたら、全てのものは0に返る。
努力も悪行も、楽しみも苦しみも。
だったら大切な人を忘れないで、嫌な記憶をずっと引きずって、そのままタイムリミットのない人生を過ごし、ずっと悲しいまま存在していたい。
それで僕らの存在が0にならないなら、僕はそうしたい。
彼女の儚く美しい人生が、他の0に埋れてしまわないように。
僕の彼女を愛していた、報われなくて淋しくて悲しい孤独なこの思いがこの世から永遠に消えてしまないように。
下校途中。
真実は俺の前を自転車を押しながら歩いていた。
夕陽がその先に見えて、赤く照らされた道がなんだか切なくて美しく見えた。
「彼方」
真実は俺の名前を呼んだ。
「なに?」
俺は素っ気なく答える。
すると真実は少しだけ振り向いた。 微かに目元が笑う。
「今度一緒に【でーと】しませんか?」
「…。」
俺は言葉に詰まった。
なんせ真実からそんな言葉を聞く日がくるとは思ってもみなかったから。
真実はいつも何を考えているのか全然分かんなくて、自分の意見やしたいことを滅多に表に出さない。
「どうしたんですか?私とデートするのが嫌ですか?」
「いや、そうじゃなくて。どうしたんだ?急に」
「どうしたとは? 貴方の彼女である私からお誘いするのは変ですか?」
「変じゃないけど」
そこで真実は、片手で自転車を支えながら、ついっと後ろを振り返った。
いたずらっ子のような笑みをたたえている。
「なら行きましょう?私は遊園地に行きたいです」
本当に今日はどうしたのだろう?
妙にしたいことを言うんだなと思いながら俺は彼女の誘いを承諾した。
(まぁ、こういう風に少しは言いたい放題してくれた方が良いんだけど…)
真実は満足そうにまた前を向いて歩き出す。
『 』
振り向きざまに真実の口元がまた動いた気がしたが、彼女は、もうすぐ沈む太陽の方向へ歩を進めてしまった。
真実が死んだのはその翌日だった。
はじめまして!
ななしと申します。七つの詩で七詩です!
この度は私の処女作となります「僕は君の隣にいつまでも~叶わぬ約束~」を読んでいただき、誠に感謝いたします。
もしこの物語に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
また次回もよろしくお願いいたします。
※RU-NA様
貴重な御意見ありがとうございます。
段落付けなどしてみましたが、どうでしょうか?
タイムリミットも0も、読む人に色々な意味で取れるようにしたつもりなので、あるいは、それで合ってます。
私としては
タイムリミット=寿命。人生の終わり。
0=私たちが死んだら、今までしてきたことが全て過去のことにされ、どんな行いをしても悪人も善人も、愚人も賢人も一緒になる。
という見方でとってます。
最初が論文のようになってしまっているのは、実は私、西尾維新さんのファンでして、こんなんで尊敬してると書くのもどうかと思いますが、この方の作風の様に、自分の、又は主人公の意見を書きたかったのです。
この出だしでしか書けないので、そこは大目に見ていただけるとありがたいです。