オールゴール機械人形アニュスデイ
雪の降る、戦争で焼け野原になった街。
その中、1体の女性型機械人形が、虚ろな瞳をしながら彷徨っていた。
暖かい家族、優しい使用人達。
彼らの待つ屋敷へと続く道を歩き続けている。
「さあ、みなさんご覧ください。
これが、我が屋敷に届きました機械人形です。」
屋敷に招いた出席者に、豪勢な箱を開け、美しい機械人形を披露する。
「貴殿も、遂に手を出しましたか」
「いい値はしましたが、その価値はありましたよ」
「どのような?」
「この機械人形は、記録のできるオルゴール人形なんですよ」
「記録を?」
ざわつく出席者に、主人は笑み浮かべる。
「口で説明するより、実際見てもらいましょう」
そう言いながら機械人形を作動さると、ゆっくりと目を開き箱から出て歩き出す。
機械人形は、ドレスの裾を手にしお辞儀をする。
「初めまして、わたくしはオルゴール機械人形アニュスデイと申します」
「アニュスデイ、みなに聞かせてあげなさい」
「はい、ご主人様」
一礼をすると、体内から記録紙や先ほどの会話を流すと、ホールに驚きと称賛の声が響く。
その後、アニュスデイは曲を流し始め踊りを披露した。
それからは、主人の為、ある時は奥方の為、子供達の為、屋敷の為とアニュスデイは曲を奏で踊り続けているはずだった。
隣国との戦争が始まり、幸せな時は静かに崩れて行き、主人も軍人として出兵する事となった。
アニュスデイは、主人を守って欲しいという奥方の希望で一緒に戦場に赴く。
戦場では、雑用や備品整理を行い、時には兵士達の心の安らぎを与えていた。
しかし、次第に戦況は悪化して行く中、主人の指揮する部隊も総攻撃に参加する事なった。
主人は自分のペンダントと、部下の品々をアニュスデイ渡し除隊を命じる。
「これらと、彼ら声を故郷に届けて欲しい」
「何故…、わたくしに…?」
どうして自分に託したのか、答えの分からないまま旅を始めた。
各地を渡り歩きながら、アニュスデイは彼らの品物と声を家族に渡し、感謝され、罵倒され、泣き崩れ、希望を持ち、怒りをぶつけ、多くの人達の感情を目にするのだった。
何故みんな感情が違うのか、何故あのように感情を表すのか。
アニュスデイには理解できないが、彼らの品と声は何ならかの理由があると信じ、旅を続けるのであった。




