過剰の反映と地獄
ぼくは、時間の経過を緩やかに感じていた。
一日が長いわけじゃない。ただ、どこにも引っかからずに過ぎていく。
朝起きて、やることを確認して、終わらせて、夜になる。
その繰り返しだ。
手元にある手札を整理してみる。
金、肩書き、住む場所、仕事の流れ。
足りないものは、もうほとんどない。
その中に、
恋することだけは、まだなかった。
誰かと話すことはある。
必要なやり取りも、雑談も、それなりにこなせる。
でも、心が前に出ていくことはない。
触れた瞬間に、何かが変わってしまうような予感だけが、遠くにある。
君と出会うまで、あと四年。
その数字は、何度も頭の中でなぞってきた。
長いようで、短い。
短いようで、気が遠くなるほど長い。
準備は終わった。
これからは、自分を磨き、交友関係を構築して、君を迎える。
そう決めている。
けれど、準備が整った瞬間から、
ぼくはどこにも向かっていない気がしていた。
過剰に用意された未来は、
そのまま今のぼくを映している。
余白のない鏡だ。
そこに映るのは、
何も欠けていないはずなのに、
何も始まっていない人間だった。
これが地獄だとしたら、
きっと、静かすぎる地獄だ。




