投資の神ってどこにいるんだろう?
未来で、ぼくは知っている。
ドルは上がって、円は下がる。
ニュースでは当たり前みたいに、
1ドル=160円台という数字が流れていた。
でも今、スマホに出ているのは、105円くらいだ。
これって、つまり――
これから五十円以上も上がると知っている値段で、
いま、買えるということだ。
「先生、教えてください」
誰に向けたわけでもない言葉が、
部屋に落ちた。
答えは、もう出ている。
ドルを買って、
160円になったら売る。
それだけでいい。
ぼくはノートを開いて、
やることを二行だけ書いた。
いまはドルを集める
160円で全部、円に戻す
難しいことは考えない。
途中で上がろうが下がろうが、
知っているのは終点だけだ。
いま、できることは一つ。
集める。
少しずつ。
目立たないように。
周りには、
「お金ないんだよね」と言いながら。
増やすんじゃない。
ただ、集める。
為替だけじゃない。
もう一つ、
ぼくが未来で何度も見た名前がある。
NVIDIA。
AIの時代を支える半導体の会社だ。
前の人生で気になって、
あとから過去の株価を調べたことがある。
そこに並んでいた数字は――
1株 5ドル台。
具体的には、
2019年の終わりで約5.78ドル。
それが、
未来ではどうなっていたか。
ニュースに出ていたのは、
170ドル台、180ドル近い数字。
5.78ドルが、
170ドルを超えている。
これもまた、
ぼくが知っている未来だ。
だから、
為替の下に、もう一つ書き足した。
NVIDIAの株を集める
十分に上がったら売る
会社の名前と、
過去と未来の値段。
5.78ドル → 170ドル台。
理由は、それだけで十分だった。
やることは、ドルと同じだ。
いまは集める。
派手に買わない。
噂に乗らない。
「そんなの夢みたいだよ」と言われても、
笑って流す。
未来を知っているのは、
ぼくだけでいい。
途中で下がる日も来る。
怖くなる日も来る。
でも、
やることは変えない。
知っている場所まで、
降りない。
ノートには、
こう並んだ。
ドルを集める → 160円で売る
NVIDIAを集める → 170ドル台で売る
神様みたいな判断じゃない。
ただ、
知っている未来まで、
ちゃんと待つだけ。
ペンを置いて、
窓の外を見る。
投資の神って、
やっぱりどこにもいない。
いるとしたら――
未来を知っていても、
欲張らず、
決めた場所で終われる人。
それだけだ。
為替はこれでいい。
株も、これでいい。
あとは、
集めて、待つ。
それだけで、
前の人生みたいに散財して、
破滅する道からは、
きっと離れられる。
ぼくは、
そう信じて、
もう一度、この世界で歩き始めた。




