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学園で虐められていた俺は復讐をしてみることにした

作者:

「おい、リーク。 金貸してくれよ」

「は? 嫌なんだけど」


当然の事のように一人の男が校舎裏で俺にカツアゲをしてくる。

このろくでもない男は俺と同じ教室のエンリッヒだ。学園でも、剣が得意だからといって調子にのっているクズのうちの一人だ。


学園生活も2学期になり、徐々に仲間内で剣が得意な奴らが集まったり、魔法が得意なやつが集まったり、または貴族組で集まったりと派閥が分かれる中、その中でも不良グループのような奴等に運悪く目をつけられてしまったのが俺―――リーク・カルステンだ。

身長は170cmと平均だが、剣も魔法も普通。体力まで平均といった何の突出した能力がなかったのが不良には凄く刺さったらしい。おまけに体重が75kgと、ここだけ人並み以上だったのもいけなかった。デブ呼ばわりされ、俺も反発しなかったのも調子にのらせる原因を作らせてしまった。

それからというものの、何か授業が終わったり、移動時間になるとこうやって俺にちょっかいを出してくるようになったのだ。


「おい、糞リーク。 デブのクセに生意気だぞ」


鋭いパンチが肩に飛ぶ。

ドンッと、鈍い音をたてて肩に拳を振り落とされるが、俺は大して効いていないが痛い素振りを見せた。


「ちっ……やめろ。 お前にやる為に親から仕送りを貰ってる訳じゃないんだぞ」

「いいだろ。 ケチくさいヤローだな。 今度は木剣でその顔を叩いてやろうか? 不細工な顔が整うかもしれないぞ」

「馬鹿馬鹿しいな。 下らないこと言ってないで次の授業に行くぞ」

「次は剣術の授業だからな。 ボコボコにしてやるよ」

「はいはい。 勝手にほざいてろよ」

「楽しみだな。 糞リーク。 お前が血反吐して悔しがる姿が目に浮かぶわ」


最近のエンリッヒは俺が何もしない事で完全に調子にのってしまってたな。

俺が本当にデブで大して何も出来ないような落ちこぼれと思っているからだ。


でも、実際は違う。俺には唯一無二のスキルがある。それは【肉体狂化(・・・)】だ。

普通の肉体強化の効果は1.25倍、重ね掛して1.20倍、更に重ね掛して1.15倍と減っていく。攻撃力と防御力、速さが上がる変わりに全体の効果が薄いのが特徴だ。

だから普通なら攻撃強化を使い、1.5倍、重ね掛をして1.45倍と効果を1つに絞って、バフをかける方が戦闘では効率的なのだ。


だが、俺のスキルは違う。攻撃力も防御力も、速さまで2倍、重ね掛しても2倍の効果が下がらないチートスキルだ。

このぶっ壊れ性能のおかげで逆に俺は困ってしまった。こんな壊れたスキルがあると色々目立ってしまうからな。俺は目立つのが好きじゃない。だから目立たないように普段はスキルを使わないようにしていたのだが。

これはこれでよくない状況になってきているのも事実だった。

こういったクソ野郎は、この歴史あるモノリス学園でも自然と湧いてくる。何処でも何かの切っ掛けがあれば誰にでも起こり得る光景だ。

この学園で虐められないためには剣か魔法で実力を証明しないと生きていけないのだ。

マジでダルい世界だよ。

まぁ、卒業したらソロでのんびりと活動していくつもりだからいいんだけどな。

でもまだこんなクソみたいな生活が3年もあると思うとうんざりする。

そう思いながら俺は次の授業に出た。





「よーし、次の相手はリーク。 前に出てきなさい」


剣術を指導していく中で、ドーラン講師が次に俺の名を呼ぶ。ここまで大人しくしていたエンリッヒだが、そのまま終わるとも思えない。ドーラン講師と立ち合いをしに前へ出るとエンリッヒから声がかかった。


「ドーラン先生。 リークとは俺がやりたいです!」


授業中で、試験中でもない限り生徒間での立ち会いが認められている。

皆が見ている前で声をかけてきたということは、俺に恥じでもかかせたいのだろう。

それに周りも俺が虐められているのを気付いているのか、いないのか分からんが知らん振りだ。まあ、俺のことなんでどうでもいいだろうしな。


「分かった。 剣術の腕を見る稽古だからな。 くれぐれも本気でやってお互い怪我をさせないように」

「分かりました。 ドーラン先生」

「はい。 分かりました」


自信満々で何が分かりましただよ。お前、俺に本気でねじ伏せる為に向かってくるつもりだろ。

くだらない嘘つきやがって。

ま、でも立ち会いはするだろうと予想はしていた。後はどう切り抜けるかだ。

この立ち会いはスキル、魔法なしの剣術のみだ。このままの俺の身体だと少々不利だ。

攻めに転じるより、後の先で闘うしかない。


「両者、始めっ!」


「オラァっ!!」


立ち会いが始まり、エンリッヒは鋭い打ち込みをしてくる。それを俺は迎え撃つが、ヒラリと交わされる。

流石に剣術は得意と言っているだけはある。体術捌きも出来ている。俺はというと1つ打ち込まれる度に、重心をズラされ、凌ぐのに精一杯だ。


「おらおらっ! どうした糞デブ。 その身体じゃあまともに動けんだろ? 腕の1本へし折ってやろうか?」

「やってみろよ。 モヤシ」


俺から見たらお前なんて痩せたモヤシにしか見えねぇんだよ。髪まで女に好かれるために染めたりしやがって、気持ちわりぃんだよ。


「糞が、粋がってんじゃねーぞ!!」


狙った通り、挑発でエンリッヒの剣が大振りになったところを俺は剣を受け流し、エンリッヒの喉元に構えた。


「それまでっ! 勝負あり! 勝者リーク!!」

「ぐっ……………テメェ皆の前で恥をかかせやがって………覚えてろよ………」



俺がエンリッヒに勝てた事が、そんなに凄かったのか普段声をかけてこない奴等まで声をかけてくるな。


「すごかったねリーク君。 あんなに強かったんだ」

「すげーじゃねーかリーク。 驚いたぜ、最後の攻撃。 よく受け流せたな!」


俺は皆からの称賛を浴びる中、エンリッヒの小さく呟いた言葉が頭から離れなかった。


こうなるともう終わりだ。アイツは俺に復讐しに来る。近い内に一人で来るか、複数人で来るかは知らないが、必ず来る。そういうヤツだ。

だが、俺は恐怖より不思議と楽しみが勝っていった。これまで下らない嫌がらせやら、ちょっかいを出され続けてこっちもストレスが溜まってきていた。ここら辺が限界だ。


アイツは俺をデブと勘違いしているようだが、それは大きな間違いだ。

俺は、筋肉だけで75キロある。その証拠に腹はシックスパックに割れている。

全部これも肉体狂化の為だ。攻撃力も防御力も素早さも全て2倍になるチートスキルを最大限活かすために俺は小さい頃にスキルが発現してから筋トレを毎日欠かさなかった。


おかげで今では重さ200キロのクソでかい鉄の塊も持てるようになった。

それが肉体狂化を使うと400キロ、重ね掛けをすると800キロまで跳ね上がる。攻撃力強化を同じように重ね掛けで使っても435キロと倍程違う。自分で言うのもなんだが、これはもうバケモンだ。

それが攻撃力、防御力、素早さと3つ同時に強化されるとなると楽しみでしかない。

木剣を持って行こうかとも悩むところだが、斬ったら本当に真っ二つになる可能性があるので俺は素手で立ち向かうことにした。いざとなったら逃げればいいだけの話だ。


彼奴等は俺の都合よく放課後、校舎裏に呼び出した。ぞろぞろとチンピラみたいな奴等が10人もよく集まったものだ。何かとストレス社会だ、俺相手に日頃の鬱憤を晴らすつもりなのだろう。1年のバッヂだけじゃなく2、3年生まで交じってるとか俺を殺すつもりか?


「糞リーク。 さっきはよくも皆の前で恥をかかせてくれたな。 ここに呼び出された理由は分かってるよなぁ?」

「ああ。 俺を殴ってストレス解消でもするつもりなんだろ?」

「そんなもんじゃねぇよ。 ギタギタにして動かなくなるまで痛めつけて、そうしたら回復させて同じ事を繰り返して、もう死にたいと思えるような地獄を味わせてやるよ。 なぁ?皆」

「いいねぇ。 楽しみだ」

「俺達も本当に交じっていいんだよな?」

「いいですよ先輩方も。 こいつに先生に言う勇気なんてないですから、それに勇気もなくなるくらい地獄を見せてやれば、明日からペットとして扱えますから、先輩方も好きに使ってやって下さいよ」

「よぉっし! まじでボコボコにしてやろうぜ」


ぞろぞろと俺の周りを真剣を持った男達が取り囲む。普通だったら中々のハードモードだ。だが、それでこそ遠慮なくこちらも動けるってもんだ。お前らがクズでこっても助かるよ。


「これで遠慮なくこっちも本気が出せる」


「はっ? お前この状況で何言ってやがる? 頭でもイカれたか?」


スキル『肉体強化』

スキル『肉体強化』

スキル『肉体強化』

スキル『肉体強化』



全身にとてつもない力が宿る。今の状態は元の状態からで言えば実に16倍だ。筋肉に纏う魔法の膜とでもいうのだろうか。制服の上からでも筋肉が膨張してパンプしていることが分かる。最早人間じゃない、これはモンスターだ。


だが、まず最初に潰すのは支援魔法使いだ。

俺のように攻撃力強化を複数人に使われるのは避けておきたい。

俺は、ダッシュを決めて一瞬で支援魔法使いの元に向かう。

周りも目で追いきれない速さに誰も俺の速さについて来れていない。瞬歩とでもいって差支えないだろう。かつて勇者が使っていたとされる高速移動を、学生の俺が使っているのだ。


「…………え?」

「まずはお前だ! オラァ!」


本当に気持ちよく人を殴れた時、拳に殴った感触がしないとは、本当にこういう事を言うのだろう。

ピンポン玉のように弾け飛んだ支援魔法使いは歯が何本も折れて、後ろの壁にめり込み意識を失った。


「……まずは1人」

「お………お前、今、何やった!?」


隣に構えて動揺した2年の先輩と思われる剣士の攻撃をリークは素早く交わし、次に腹を思いきり殴り飛ばす。


「ぐぼえぇぇぇっっ!!!」


みぞおちにモロにヒットした2年の先輩は、汚いゲロを撒き散らしながら、宙に5メートル程浮いた後、地面に叩きつけられ気絶した。

内蔵が破裂したかもな。まぁ、どうでもいいけど。


「はい、二人目。 早く一斉にかかってこいよ、手応えないとつまらねぇだろ。 群れることでしかイキがれない連中共が」


「テメェ…………舐めやがってぇぇぇっ!!!」


一斉に襲いかかってる野郎どもを俺は迎え撃つが、制服を掴まれてもまるでビクともしない。攻撃力強化を施した男に斬られても薄皮一枚程度の傷だ。攻撃力よりも防御力の方が圧倒的に勝っているのだろう。

気持ちいい。最高に気持ちいい! アドレナリンがドバドバ出て俺を快感に導いていく。


マジでこんなことなら始めからコイツラを集めて殴りとばしておけばよかったと後悔するわ。

地面に叩きつけた男は地面にめり込み、投げた男は軽く10m以上飛んでいく。しかもまるで投げた時に重さを感じない。剣を弾いたら相手の手が折れ、蹴ったら足が逆の方に向いていく。

ものの数十秒にも満たないほどで残る相手は回復魔道士とエンリッヒだけになっていた。

甚振るってこんなに気持ちがいいもんなんだな。恐怖する顔を見ていると、まるで俺が魔王にでもなった気分だ。


「ひっ……………なんだよお前、俺達の前では本気じゃなかったとでもいうのかよ」

「俺がいつ本気を出したなんて言った? 面倒くさいからずっと隠してたんだよ。 でも、クソみたいなお前が俺にずっとちょっかい出してきたかもんだから、ぶっ飛ばしたくなってきてさ。それでちょっとな………」

「ほんと悪かった! 今までのこと全部謝るから許してくれ。これからは仲良くしよう! な? 頼むリーク!!」

「そうだよな。 俺も悪かった。今まで実力をずっと隠してて」

「あ…………ああっ。 これでお相子様だ! だから仲良くしよう」


俺はエンリッヒの手を取った瞬間、手を力強く握り潰した。その瞬間、ぐしゃっと鈍い音がしたが、全然気にはしていない。勿論わざとやったからだ。ここまでのことやろうとしておいて、俺がこれくらいで終わらせる訳がないだろう。


「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!! 俺の手があぁぁっ!!!!!」


奥で震えている回復魔道士に俺は声をかけ回復してやるように促す。

ブルブルと震えながら回復魔法を唱えようとしているが、恐怖で思うように呪文が唱えることが出来ないようだった。


「エンリッヒ。 お前俺に地獄を見せるっていったよな…………」

「あれは冗談だ、本当に冗談なんだ。 お前に少し社会の厳しさを知ってほしくて言っただけのほんの冗談なんだ。 だから許してくれ!」

「冗談の奴が真剣を持って校舎裏にぞろぞろ集まるかよ。 俺が、なんで回復魔道士を残しておいたのか分かるか?」

「………………え?」

「お前を二度とこんな考えを起こさないように、徹底的に恐怖を植え付ける為だよ」

「ちょっ、待ってくれよ。 まじで………」

「お前と同じことをこれからしてやるよ。 じっくりと甚振って、何度も回復して、精神が崩壊するまで繰り返し、入念に、執拗に、時間をかけて調教してやる覚悟しろ」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」


俺はその後エンリッヒたちと長い時間をかけて遊んでやった。骨が折れようと回復させ、歯が折れようと無理矢理繋げさせ、拒まれても強引に連れ戻し、涙が枯れ果てるまで。俺顔をみるだけで震えが全込み上げてきて上手く喋れなくなるまで学園での生活の仕方を教え込んだ。



今ではというと。すっかり連中も大人しくなってしまい、俺にちょっかい出す奴等もすっかり消え失せてしまった。

教室での俺の過ごし方はというと。


「エンリッヒ。 喉かわいたな」

「はいっ!!!!! すぐ飲み物を買ってきます!!!!」

「お前、俺が今何を飲みたいのか分かってるのか?」

「剣術の授業の後なので、甘みの効いた飲み物がいいかと思います!!!!」

「気が利くようになったじゃないか。 じゃあ、それで頼むわ」

「はっ、お褒めに預かり光栄です! 急いで買って参ります!!!」


俺は学園での生活は一変した。不良のような奴らは俺の下僕となり、今では犬のように走っている。だけど俺は知っている。いずれ俺に復習しようと暗殺や、刺客をコイツらは隠れて送り込んでくるだろうと。

でも、それを踏まえてた上で俺は今の学園生活を楽しんでいる。

隠れて暴力を振るう。また同じような快感を味わいたくて。









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