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ファンタジーショートショート:山賊転生

「はぁ⁉」

がばっと飛び起きた。確かに俺は死んだはずなのに生きている。辺りを見回すと洞窟に居るのだろうか?暗い中に松明が一定間隔で置かれ照明代わりになっていた。その最奥で俺は何かの毛皮を布団代わりに寝ていたらしい。

「お頭ぁどうしたんで?」

俺の目の前に小汚い男が俺の事を「お頭」と呼びながら心配そうに見つめる。

「あ、あぁ・・・悪い夢でも見ちまったようだ」

言い訳に発した声の低さにも驚く。よくよく自分の様子を見てみると、小汚いと思っていた男と遜色ないくらいに小汚い。

「確かに、今日襲った商人に逃げられちまいましたからね!ひひ!でも大丈夫でさぁ!こんな洞窟早々見つけられやしませんぜ」

「あぁ・・・そうだな」

どうやら俺はどこかの山賊?として生まれ変わったらしい。まさか死んだと思ったらこんな形で生き延びれるとは思わなかった。ラノベの世界じゃあるまいしと思いながらもこっそり「ステータス・・・」なんて呟くと出てくる出てくる自分のステータス。職業には「山賊」と出ていた。

「ちっ・・・これじゃスローライフだの冒険だのって言ってらんねぇなぁ」

そうボヤキながら明日の事を考えながら眠りについた。


まだ朝も明けきらないうちに’’それ’’はやってきた。

「敵襲だ!兵士たちがどんどんこの洞窟に!ぐへぇ!」

俺の事を心配していた男の首に槍が突き刺さる。

「貴様がこの山賊の頭だな!」

言うが早いか、全身鎧を着た男に寝込みを襲われ何が何なのか分からないうちに俺は首を刎ねられた。


「ぶはっ!」

今度こそ死んだと思った。首を切られた時の熱さや痛みを思い出す。だがどうやらまたどこかに転生でもしたのかまだ生きている。しかし恰好はさっきと同じようだ。

「やっぱり俺は山賊か・・・」

しかもどうやら駆け出しのようで今から仲間たちと馬車を襲う算段のようだ。

「いくぞ!」

そう言ってもいきなり見ず知らずの男たちと振った事もない剣を手に襲い掛かるには無理があった。

「既にお前たちの存在は把握していた!」

護衛の戦士の斧の一撃に俺は剣ごと真っ二つにされてしまった。


「うわぁ!」

また生きている。

「まさか・・・’’山賊’’・・・」

どうあがいても山賊のようだ。しかも今回はもっと状況が切迫している。既に討伐に来た兵士たちによって捕えられ1人1人処刑されている状況であった。

「なんでこんなどうしようもない状況で生まれ変わるんだ・・・」

誰にも理解されないまま、首に縄を掛けられ吊るされた。


「ぐぅぉ・・・」

まただ・・・また生きている。また山賊だ。今度はまた洞窟のようだ。

「お前らぁ!今日こそは通った獲物を仕留め損なうなよ!」

どうやら今度は子分に生まれ変わったようだ。だがどちらにしてもこのままでは、どうせ死んでしまう。

「あぁ・・・嫌だ俺はいかない・・・もう山賊も辞める・・・」

そう呟くと周りを囲まれた。

「俺の部下に臆病者はいねぇ!そうだよなぁ!」

「お頭ぁ!そうでさぁ!」

「じゃあこいつは部下じゃねぇな!殺せ!」

あっという間に袋叩きにされてしまった。


また目を覚ます。先ほどまで殴られてた痛みを感じながら辺りを見渡すと、どうやら真っ白な世界に俺は寝ていた。そこに光の玉がふわふわと現れる。

「一応説明位はお情けでしてやろうと思ってな?お前さんには、これからも山賊として死に続けて貰う」

薄々感づいていた事ではあったが何故・・・?

「不思議そうだな。お前の居た元の世界と違い、この世界は魔王が居り、モンスターが跋扈する世界だった。そんな中では人々は稀に山賊にならざるを得なかった者たちが居た。」

まさにファンタジーな世界だったのか・・・

「だが、つい先日別世界から優秀な魂を転生させ勇者として送り込んだら見事に魔王を討ち取ってくれた。これにより徐々に世界は平和を取り戻しつつあるのだ」

既に勇者も居て魔王も討伐済み。なら俺の居る意味は?

「そんな中でも山賊の駆除は非常に手間がかかる。なのでその勇者の元居た世界からどうしようもない魂を抜き出し、厄介そうな山賊に無理やり入れ込んだというわけなのだ」

つまり俺はどうしようもない魂で、これからも山賊になって殺され続けると?

「そうゆうことだ。なんだ納得いっていない顔だな?」

そんなに俺はどうしようもない魂なんかじゃない!

「もうお前のしたことを忘れとるのか・・・思い出してみろ?お前が前の世界で死ぬ瞬間」

俺は・・・首に縄を掛けられて・・・

「お前は殺人から何からまあやったことがない位罪を重ねて死刑を執行された者の魂だ。向こうの世界でもそんな魂を持て余していてな?丁度いいから使いつぶす勢いでと言うことで貰い受けたのさ。」

じゃあ俺は・・・

「よし、じゃあこれからも世の中に山賊と言う者が居なくなるまでお前を使い続けるからな?居なくなった後までお前がまだ持っていれば、考えてやろう」


そうやって意識が暗転するとまた俺は山賊だった。即殺されるが、きっとまたどこかの山賊の死ぬ瞬間に転生させられるんだろう・・・段々俺は意識を放り出した。


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