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ファンタジーショートショート:母を訪ねて

 旅人の男が、とある村を訪れた。

「かなり大きな村だな?これなら宿屋もあるといいのだが・・・」

そう言いつつ村に入ると、早速村人に宿を訪ねた。宿も1軒だけだが営業しているようで直ぐに場所を案内された。

「1人なんだが、2日程泊まれるかい?」

埃を落としながら受付に居た男に尋ねると

「大丈夫ですよ。お1人様ですね。食事はいかがされますか?」

「どこか食べられるところもあるのかい?」

「すぐ目の前に酒場があります。うちでも食事は出せますが・・・夜は酒場に行かれる方が多いですね」

「なら朝食だけここで食べようか」

「分かりました。そのように・・・」

そう言いながら直ぐ手続きをしてくれる。提示された金額を支払い、鍵を受け取る。

「2階の左奥の部屋になります。朝食もご用意しておきますが、あまり起きるのが遅いと片付けてしまいますのでお気を付けください」

「あぁ・・・ありがとう」

「それと・・・注意事項なのですが、夜はある程度の時間になりますと酒場も締まりますので直ぐ帰ってきてください。帰れない場合は酒場にそのまま居てください。宿も閉めてしまいます。その際に戸を叩くや誰かの声が聞こえても無視してください。またお部屋の窓を叩く音がするかもしれませんが、それも無視してください」

「なんだそれは?」

「この村のルールなのです。これだけは守っていただかないといけないのです」

「まぁわかったよ。酒場も飯を食うだけだしな」

「ありがとうございます」

変なルールだと思いながら、旅人は部屋に向かうと荷物を下ろし軽く体を拭くと酒場へ向かった。


酒場では賑やかに、村の者たちが今日の仕事を終えて各々酒を楽しんでいた。旅人が珍しかったのか村人たちから「どこからきたのか?」「いつまでいるんだ?」「どこまでいくのか?」様々なことを聞かれた。男も何時もの事だと愛想よく返答している。

そうしているうちに酒場の店主が店中に聞こえる大声をだした。

「ほら!時間だ!もう店じまいするからさっさと帰った帰った!」

「もうこんな時間か!いけねぇ帰んねえと!」

村人たちが慌てて帰り支度をする。旅人もその速さにあっけにとられながらも自分も宿屋に戻ろうとする。

「なぁこの村はいつもこうなのか?」

旅人が村人たちに尋ねると

「そうだ。これがうちの村のルールだからな。守れない奴はいられないのさ」

そう言って帰っていった。

旅人も宿に戻るとさっきの受付がすぐに戸を閉めた。

「旅人さんで最後ですよ」そう言うとしっかり鍵も閉めて受付の奥へ引っ込んでしまった。

「さっさと寝るか・・・」

そう言って自分の部屋に戻る旅人。その時宿の戸が小さくノックされた。ノックしてきた位置からして子供の背丈だろうか?

「すいません・・・母を見なかったでしょうか?この村に居ると聞いているのですが」

子供が母とはぐれたのだろうか?

「受付さん?誰か戻ってないのがいないのかい?」

子供だったらと心配して奥に居るはずの受付に問いかける。

「あぁ、今日はうちなのか・・・旅人さん大丈夫ですよ。絶対戸は開けないでください。さぁ旅人さんも部屋へ・・・」

受付に急かされる様に自分の部屋に戻らされた。


翌日、昨晩の事を聞こうと受付に尋ねる。

「あの子供?子供なのかどうかわからないが、あれは一体・・・」

「まあ旅人さんもタイミングが悪かったですね。あれが来るのは村中ランダムなので、来ないとなんでもないんですよ」

「じゃああの声は毎晩どこかを訪ねているのか」

「そうですね・・・旅人さんこの村の近くに魔王が封印されている祠があるってご存じですか?」

「あぁ・・・俺はそれを見るために旅をしてきたんだからな」

「旅人さんも好きですねぇ」

「まぁ怖いもの見たさってやつさ」

「実はその魔王、母子でセットなんですよ。で封印されているのは母親の方でして・・・」

「と言うことは昨晩の子供は」

「はい、魔王の子供の方でしょうね。昔は両方封印されていたそうなんですが、子供の方が何かの拍子に封印が解けてしまって、そしたら母の気配を頼りにこの村までやってきたのでしょう。魔王と言えど単体だと本当にただの子供の用で、1人では何か脅威があるわけでもないようです。ですが万が一開けて案内でもしようもんなら下手したら母の封印も解けて魔王復活なんてなってしまったらおしまいですから。だから早く閉めるし、閉めたら何があってもあけないんです」

「なるほど。そうゆうわけだったのか」

「まあ怖いもの見たさで旅行されているんならいい土産話が出来たんじゃないですかね」

「はははそうだな」

男はそう言うと、村を観光し更にその近くに魔王が封印されているという祠も見ることが出来た。

そうこうしているうちに暗くなり、また酒場で飯を食っては時間だから帰れと促された。

「おかえりなさい。どうでした?」

「あぁ祠も見れたし、いい旅になったよ」

「まあ帰るまでが旅ですがら、今日はよく寝て明日からの帰路もお気を付けください」

「あぁありがとう。おやすみ」

そう言って自分の部屋に戻る旅人。その晩遅く、旅人の部屋の窓を叩く音が聞こえた。

「母を見ませんでしたか・・・」

その子供の声に反応する旅人

「魔王様!私はあなた様方の僕にございます。昼間のうちに封印されている場所も見てきました」

「本当ですか⁉では早速僕をそこへ案内してください」

旅人が窓を開けて魔王を招き入れようとした瞬間

「ぐぅえ!」

男の頭上から矢が降り注いだ。こと切れた男の部屋の天井から受付の男が出てきた。

「やはり魔王信奉者だったか。これで何人目だ・・・?」

「ちっ!」

「魔王の気配が消えたか・・・何時まで続くのかねぇ・・・」

受付の男のボヤキに応える者は居なかった。



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