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ファンタジーショートショート:デイリーボーナス

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

そう言うと小さな妖精のような女の子が現れては、僕の手のひらにアイテムを落とした。

「ありがとう!これは、ポーションかな?」

「違いますよ!勇者様!これはエリクサーです。どんなに重症でも一瞬で全回復する凄いアイテムなんですよ!」

魔法使いがアイテム鑑定を行い驚いたように勇者に説明する。

「え!そんなアイテムがデイリーボーナスでくれたのか・・・凄いなあの妖精ちゃん」

僕は魔王を倒すべく勇者として認定された。そんな僕には戦士や魔法使い、僧侶と言った仲間たちがいる。

そんなかけがえの無い仲間の内でも特に、仲間と言っていいのか分からないけど僕は仲間だと思っているのが、先ほどエリクサーをくれた妖精ちゃんだ。

彼女は勇者認定され、魔王討伐に向かう日に突然現れた。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

そう言って初めて僕にくれたアイテムは「鋼の剣」だった。魔王に攻められ、困窮極まって武器すら乏しかった僕たちには、そのアイテムがありがたかった。最初は、何でくれるんだろう?と思っていた。それを妖精ちゃんに問いかけても何も言わない。そしてアイテムを渡し終えると消えてしまう。それでもそのアイテムに命を助けられたことは1度や2度じゃない。だから僕は妖精ちゃんの事も「仲間」だと思って、いつもありがとうと感謝していた。

そうやって、妖精ちゃんからアイテムを貰いながら魔王討伐の下準備となる。聖剣の確保に向かっていた。

「勇者様!もう間もなく聖剣のある洞窟にたどり着きます。ここには聖剣の試練ともいえる強力な門番が守っているとか。ここ等辺で野宿して準備してからでもよろしいのではないかと・・・」

「確かに、僧侶の言う通りだね。ここで明日に備えよう!」

「魔法に使う触媒の確認と補給もしておきます!」

「じゃあ!俺は剣や盾の装備点検もしておこうか」

各々が明日の聖剣確保に向けて入念な準備に入る。その門番とやらが気になるけど、ここまで来たメンバーがしっかり準備するんだ。きっと大丈夫。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

次の日、起床した僕の手にはデイリーボーナスの聖剣が握られていた。

「え?どうゆうこと?今からこの剣を確保しにあの目の前の洞窟に挑むはずだよね?」

「わ、私にも訳が分かりません!ですが鑑定結果は聖剣と・・・」

魔法使いが鑑定しているのだから間違いはないのだろう・・・

「じゃああの洞窟の先には・・・?」

パーティー全員で洞窟を進むと、そこには巨大なゴーレムが倒れていた。

「これが、門番だったってことか?」

「すげえな!あの妖精ちゃん。ゴーレムぶった押して聖剣くれたってのかよ!俺の剣でもこいつに刃が通るか分からねえぞ?」

「妖精ちゃんの方が強い?」

妖精ちゃんへの謎が深まるばかりだったけど、でも僕の為に一生懸命聖剣を取ってくれたんだと思うと感謝の気持ちで一杯になる。

「でもこれで魔王を倒すことが出来るよ!」

こうして僕たちは魔王城へ向かうのだった。


「勇者様!やっとここまで来ましたね!魔王城はもう目の前です!」

「ここまで魔王幹部だの四天王だのと強敵揃いだったね。明日こそ魔王を討つ!」

「これで世界が平和に・・・」

「俺の武勇も世に知らしめることができるってもんだ!」

もう魔王城の直ぐ手前まで進んでこれた。明日には魔王と対決できるだろう。世界の平和のために頑張らないと!

「じゃあ今日はここで休もう・・・おそらくこの先まともに休める先は無さそうだからね」

そう言って僕たちは体を休めることにした。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

そう言って手渡されたのは、ある男の生首だった。

「うわぁ!なんだこれ!首?」

「ま・・・まさかそんな・・・」

魔法使いが鑑定してみたようだ

「何なんだいこの首?」

「勇者様・・・これ魔王の首のようです」

「はぁ!?」

皆が驚きの声を上げる。それもそうだ、今から倒しに行く相手だし、聖剣でないと倒せないはずじゃないのか?そもそも魔王城にもまだ敵はいたはず・・・

「取りあえず魔王城まで行ってみよう・・・」

魔王城は異様な静けさに包まれていた。

「モンスター達が全滅している?」

「おいおい!デイリーボーナスの為に魔王城墜として更に魔王の首までくれるのかよ!妖精ちゃん最強じゃないか」

「と・・・取りあえず魔王は倒されたのです!この首を持って凱旋しましょう!」

「そ、そうだね!魔法使いちゃん悪いけどこの首凍らせてくれる?」

「分かりました!」


こうして僕たちは、魔王を倒した勇者として国中から称えられた。あの魔王を倒してからは妖精ちゃんも姿を見せなくなった。もし現れたらお礼を言わないと・・・

そうこうしている間に、勇者である僕は姫様と結婚することになった。国中から祝福され結婚式も壮大なものになった。姫様の父である国王様からは僕を次の国王にしたいそうだ。そんな恐れ多い・・・

そんな結婚式も終えて深夜。ついに僕は姫様と初夜を迎えることになったのだ。姫様の居るベットに向かう僕。そんな時に久しぶりにあの声が聞こえてきた。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

妖精ちゃん久しぶり!と言うよりも先に悲鳴を上げてしまった。僕の手には姫様の首があったからだ!

「何事ですか!勇者様!・・・そんな!姫様!」

「勇者様が姫様を!」

「狼藉ものを捕らえよ!」

僕の悲鳴に押し入ってきた騎士たちが惨状を見て僕を捕まえようとする。

「違う!僕じゃない!」

「黙れ!ならその首は!その血まみれの手はなんだ!」

「知らない知らない!妖精ちゃんが!」

「何を訳の分からない事を!」

僕は動転して、騎士たちから逃げ出した!僕を捕まえようとどんどん追手が差し向けられてくる!

何日も何日も逃げて逃げた。

その間も

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

かつての仲間たちの首が送られてきた。きっと僕を捕まえようと国王から差し向けられてきたのだろう。

道中で見つけた洞穴に身を隠した。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

妖精ちゃんが恐ろしくてたまらない。なのに今日はそういったまま僕の前から動かない。どうしたんだ?そう言えば今日は僕と同じくらいの背丈になって普通の人のような・・・

「本日のデイリーボーナスは私です!」

そう言うと僕に覆いかぶさってきた。


それから僕は、ずっとこの洞穴に隠れている。あれから妖精ちゃんがボーナスと言って食料や水をくれているので生きていける。最早人間の住む世界には戻れないかもしれない。

「勇者様!本日のデイリーボーナスです!」

そう言うと妖精ちゃんが大切そうに自分のお腹を撫でた。

「本日のデイリーボーナスは、私と勇者様の愛の結晶です・・・」

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