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君は強いひとだから  作者: 冬馬亮
29/58

結婚前の一波乱 ⓸





 ガタガタという騒音と、体に響く振動とでラエラの目が覚めた。 


 上部に覆いがかかっていてあまりよく見えないが、箱やら袋やら色々な物の中に埋もれるようにしてラエラは横になっていた。両手両足が縛られた状態で。


 周囲からは、人の話し声や物音が聞こえて来た。そして、それらが近づいたり遠ざかったりするという事は、ラエラは今移動中なのだろう。



 ―――荷台か何かに乗せて、運ばれているのかしら・・・?



 未だぼんやりする頭で、ラエラは考えた。



 迷子の女の子の手を引いて、護衛のダーヴィトと共に巡回騎士の方へ歩いて行った。

 遠くの騎士に合図する為にダーヴィトがラエラたちの前に出て、呼び寄せて話をしている間に、ラエラはまたしても建物の陰に引きずり込まれた。そしてすぐに口元に何かを当てられて、意識が遠くなって。



 気がついたら、ゴトゴト移動中の、恐らくは荷台と思われる何かの中にいた。



 ―――無差別の誘拐? それとも、誰かが何かの目的でわたくしを?



 と、そこで、ガタゴト動いていた何かが止まり、ラエラのいる方に近づく足音がした。



 ラエラは咄嗟に目を瞑り、未だ気を失っているふりをした。すると、パサリと布が取り払われる音がして、瞼越しに光を感じた。



「・・・なんだ。まだ寝てるのか」




 ―――この声は・・・



 男の声に聞き覚えがあった。


 男はラエラを荷物のように肩にかつぐと、スタスタと歩き出した。


 ラエラの顔は男の背中側。そっと目を開けて様子を窺う。気づかれるのが怖いから、目を動かすだけだ。



 景色はどこかの道の上から家の中へ。


 けれど入る瞬間、少し離れたところにあの男の子が立っているのを見た。一瞬だが目が合った。


 物陰に隠れてこちらを覗いていた男の子の顔は真っ青だった。



 男が入って行った家は狭く、すぐに目的の場所に行き着いた。扉を開く音がして、男が中へ進む。けれど数歩でまた止まって、肩にかついでいたラエラを無造作におろした。



 ぽすん



 予想していた硬い床ではなく、柔らかい感触だった事に驚くが、ラエラは必死で眠っているふりを続けた。



 縛られた両手両足をそのままにして、男の足音が遠ざかっていく。扉が閉まる音がしたところで、ラエラはそっと目を開けた。



 当然ながら、見覚えなど全くない部屋。ラエラはベッドの上に寝かされていた。



 一刻も早く逃げたいが、縛られた状態では起き上がる事すら手間取ってしまう。


 間が悪い事に、今日のラエラの外出はヨルンに秘密だった。サプライズで贈り物を準備してヨルンを喜ばせる筈が、とんだ事態になってしまった。



「ん・・・よし、これでなんとか」



 ゆっくり、というかモタモタと時間をかけて、ようやくラエラは起き上がった。


 だが、両足が縛られたままでは逃げるどころか一歩も動けない。ラエラが見た事もないような変わった結び目でキツく縛られた縄は、そう簡単には解けなさそうだ。


 ラエラは溜め息を吐くしかなかった。











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