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君は強いひとだから  作者: 冬馬亮
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再会



「・・・君は何をやってるんだ。5年は顔を見せないで頑張るとか、言ってなかったか?」


「すみません。ラエラさまが建物の陰に連れ込まれたのを見て、つい、こう色々と先走りました」



 呆れた声で文句を言っているのはテンプル伯爵。そして、そんな彼にぺこぺこ頭を下げているのがヨルンである。



 そう、父テンプル伯爵がラエラに付けた護衛・・・と思っていたお助け人は、実は護衛でも何でもなく、自主的に見守り役を買って出て、あれこれラエラの手助けをしていたヨルンだった。

 現在17歳、4年前のほっそり小柄な少年の姿はどこへやら、長身で引き締まった体格の精悍な美青年へと変貌を遂げていた。





「・・・それで、今回ラエラさまから金品を奪おうとしたのが、こちらの子ども二人です」



 これまで頭からすっぽりフードを被っていたヨルンは、最早すっかり顔を隠す気もないようだ。

 堂々と晒した素顔で、テンプル伯爵邸に連行した子ども二人について報告した。



 子ども二人、そう、ヨルンから拳骨(げんこつ)をくらった男の子と、女の子であった故に拳骨制裁を免れた彼の妹の事だ。二人は、伯爵の前でぶるぶる震え、ぐすぐすと泣いていた。


 ラエラを建物の陰に引っ張りこんだのは、8歳の男の子だった。そして、男の子の後ろにはもっと小さな女の子、6歳の妹が隠れていた。



「母親と3人暮らしだったようですが、少し前から母親が病に倒れ、商店街で店先の野菜や果物を盗んで飢えをしのいでいたようです」


 

 だが、母親の病気が一向に良くならず、今回の犯行に至った。母に薬を買いたかったらしい。



「ラエラが無事でよかったが・・・どんな理由があろうと盗みは盗みだ。お前たちは、ラエラを建物の陰に引っ張りこんでナイフを突きつけ、金品を奪おうとした。平民が貴族の令嬢を、だ。これは重罪に当たる。死罪でもおかしくないのだぞ」



 説明を聞き終えたテンプル伯爵が、恐怖で縮こまる子どもたちを睨みながら言う。

 ごめんなさい、ごめんなさいと謝る二人の前にヨルンが進み出、子どもたちに視線を向けながら口を開いた。



「その事なのですが、テンプル伯爵。この二人を僕に任せてもらえないでしょうか。少々考えがありまして」


「うん?」



 訝しむ伯爵に近づき、耳元でヨルンが何事かを囁く。

 一瞬、目を見開いた伯爵は、顎をさすりながら暫し考えた後、「うむ」と頷いて二人の処遇をヨルンに任せると言った。



 ハラハラしながら父とヨルンの遣り取りを見ていたラエラは、次のヨルンの言葉に、ほっと安堵の息を漏らした。


 ヨルンがこう言ったからだ。



「お前たち二人に任せたい仕事がある。きちんと働くと約束するなら、先に母親の薬代を出してやるし、働きに応じて報酬も出そう」


「っ、やる! やります!」


「あ・・・あたしも!」



 子ども二人は当然ながらすぐに承諾した。殺されるとでも思っていたのか、涙目で感謝を告げ、精一杯働くとヨルンに誓う。

 ヨルンは、自分付きの護衛(ラエラのお助け人をするヨルン・・・を護衛するロンド伯爵家所属の騎士)に、二人を別の場所に連れて行くよう命じた。



「さて、ラエラさま」



 ヨルンは振り向き、ラエラに向かって口を開いた。



「今日でなくてもよろしいのですが、話をする為のお時間を取っていただきたいのです。再会が予定より少し早まってしまいましたが、こうなった以上、お話もしておきたいと思いまして」


「・・・まあ、4年頑張ったしな。許してやろう」



 ヨルンの横で、テンプル伯爵が仕方ないなと肩を竦めている。どうやら二人は互いに遣り取りをしていたらしい。



「ラエラさま」



 ヨルンは、ラエラの手を取って恭しく頭を下げた。



「あなたには聞く権利があります、あの後にロンド伯爵家であった事を。全てきちんとご説明しましょう」






 






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