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島内調査、魔獣戦

「先手必勝!!」


まずに出たのはリコであった。


真っ直ぐと、迷わず魔獣の懐へ潜り込み腹の溝あたりに一発正拳をかます。

手慣れた手付きであった。


しかし、そんな一発も、この魔獣にはほぼ効かない。


「くっ……! かてぇ……!」


渾身の一撃ではないしろ、大陸ではこの一撃をかませば大半はダウンするか、後ずさる。

だが、この魔獣にはそれが一切ない。


魔獣はすかさず、その隙を狙うようにその自慢の腕をリコ目掛けて振るう。

リコはそれに反応しきれず、回避が遅れた。そこへ間一髪、パオロが剣で割って入る。


だが、魔獣の腕力はパオロの想像を軽く超えており、そのまま弾かれた。


「ぐ……!」


飛んだ先には樹木があり、激しく背中をぶつける。受け身を取れなかったのだ。

リコはというと、左腕を損傷し、別の木に背中を預けている。かなり痛そうだ。


「強い……!」


これまでに、他地方で討伐してきたドラゴンに比べれば大したことはないが、それでも《迷宮ラヴィニス》へ潜ったときよりも強い怪物を相手にしている。

この強さは、長年冒険を楽しんできたパオロも流石に予想ができていなかった。


「序盤でこれか!」


しかし、この強さにパオロはワクワクもしている。

身体の体温が上がっていくのが分かる。興奮している。


それを自覚思考に入れることで己を奮い立たせてやるのだ。

『心にまだ余裕はあるぞ』と。

そうすることで幾分かは戦闘への緊張感が和らぐ。つまり、冷静になれるということ。


「さぁ、やるぞリコ!」

「あいよぉ……ッ!」


フラつきながらも、戦闘態勢を再び取り直すリコを確認するとパオロは飛び出す。そして、リコへ指示をくれてやる。


「片腕落とす!」

「がってん……!」


まず、パオロは魔獣に到達してから剣舞で敵の注意を引き付ける。

剣閃を唸らせ、魔獣の爪を丁寧に弾きながら、少しずつ前進させてやる。


リコはそのとき、魔獣の背中へ回っていた。

完全に、後ろをとった。

しかし流石は魔獣。野生の勘なのか、振り向いた。だが、もう遅い。


リコは魔獣の背中へ思い切りタックルをかまし、魔獣はバランスを崩して倒れはじめた。

そこへすかさず、倒れ込む勢いに乗せて刃を魔獣の腕へ接させる。


しかし――――。


「なっ……!」


刃が腕を切断しないまま、勢いが止まる。


「嘘だろ……!」


倒れそうになった魔獣は片腕で受け身のような回転を披露してみせ、剣を持っていたパオロはその勢いで吹き飛ばされた。


「パオロ!」


剣と共に抜け、魔獣から離れていく相棒を見てリコは叫ぶ。

しかし、今一番危険なのは自分だと、リコは理解する。

魔獣は目の前。二人相手でここまで手を焼くというのに、どうして一人でこれと戦えというか。


「おいおい嘘だろ! こんなのと、どう一人で戦えっていうんだ!」


魔獣は片腕を負傷しているにせよ、パオロを吹き飛ばす程度には力が有り余っている。

リコはこの数秒のうちに思考し、一つの結論へ至る。


「逃げるが勝ちだ……!」


全力で、パオロが飛んでいった方をめがけて走りだした。

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