いざ、ナッタ文明へ
某冒険アクションゲームに影響されまくった物語です。
どうかご贔屓に。
――サン・ラドン調査団
世界最大のコスネリア大陸北方に位置する大国、フルレグロ公国から派遣された調査団。
ナッタ文明と呼ばれる、古代文明の謎を解明すべく集められた人々を指す言葉である。
そして今、ナッタ文明の遺跡群が残る最北の諸島「ホシニ・ナッタ・ピィ諸島」を目指して深碧の道を歩んでいる。
――ホシニ・ナッタ・ピィ諸島
人の領域から遠く離れた北の海に浮かぶ七つの島の総称。六十年ほど前にフルレグロ公国のとある貴族が金に任せて世界を一周しようとした際に発見された。
諸島名は古い言葉で「北の大地の島」を意味する。
「よぉ! やっぱお前も乗っていたか!」
よく晴れ渡った青空に、いかにも男らしい太い声が鳴った。
赤が強く染み込んだ茶髪の巨漢が、数歩手前にいる青年に声をかけている。
「久しぶりだね、リコ」
振り返りながら青年は巨漢に言葉を返す。
軽い鎧を着込んだ外套の下から、高貴そうな短い紫紺の髪が見える。さらにその髪の下から、濁りのない美しい煤竹の瞳が巨漢を脅すかのように見つめた。
青年の名はパオロ・マロスティ。
そこそこ世に名の知れた冒険家だ。
先程リコと呼ばれた巨漢もまた、知名度はそれほどないが冒険家である。
この二人は腐れ縁で、行く先、高確率で出会う。そして、共に冒険をして終わったら別れる。
所謂、冒険仲間。言い方を変えれば、相棒だ。
「にしても、領主様も思い切ったもんだなぁ」
リコは段々と遠ざかって消えようとしている大陸の影を真っ直ぐに見つめながら、呆れ混じりに言い放つ。
「あの領主様は知識に関して貪欲な方だ。いずれはこうなると、僕も思っていたけどね」
パオロはそんなリコへ、冷静な返しをしてやる。
「ま、この調査を思い切ってくれて僕も嬉しいんだ。あそこには、一度でもいいから行って冒険がしてみたいと思っていたからね」
近くの柵に寄りかかってパオロは空を見た。
パオロは冒険が大好きな青年だ。
後に、彼を語る上で最も有名な言葉である“冒険は夢探し”をまさに体現している。
その証拠として、これまでにも様々な逸話を立ててきた。
実現不可能と言われていたラヴィニス大迷宮の踏破とその詳細な地図。
コスネリア大陸中心部にあるフェルグラの森にて猛威を振るっていた腐竜の討伐。
コスネリア西部のカルキナ火山の火竜の討伐。
そのどれもが、常人では成し得ることのできない偉業だ。
そんなパオロは今年で、二十九を迎える。
――ナッタ文明
ホシニ・ナッタ・ピィ諸島にかつて存在していたと言われる文明。
当時にしては高度な建築技術を有していたようで、石造りの神殿や民家が数多く点在している。
しかし、島同士の距離がだいぶ離れているにも関わらず船や港の形跡が一切見られないため、これらの島に暮らした生命体がどのようにして一つの文明を築いていたのかについては大きな謎が残っている。
この謎を解明するため、パオロを乗せた調査団は進む。
そしてこの冒険が、冒険家パオロ・マロスティを最も有名にした冒険であり、冒険家パオロにとって最後の冒険となる。
しかしまだ、パオロも、誰もが、このことを知らない。