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67.祭りの気配

 ガジュ・アザッドとハクア・ドムは、幼少期からガジュのアルカトラ投獄までの間、ずっと共に過ごしてきた。「赤子の頃に川で拾った」ガジュはダラからそう聞いているが、この件に関してはずっと疑問を抱いていた。あの寒いユギ村に川などという豊かな自然は存在しないし、何故かガジュだけがダラからアザッドの姓を譲り受けている。


 ハクアは単なる孤児ではない。


 そう分かってはいたが、まさか妹までいるとは。ガジュが深い驚きに包まれていると、またも背後から聞き慣れた忌まわしい声が響いてきた。


「ノア!良かった、無事だったんだな……。お前に会いにベリオットを訪れたのに、学校から『仲間と共にオーガ討伐に行ったきり帰ってこない。何とか逃げ延びた仲間達から救助依頼が出ている』と聞いてな……。心配したんだぞ!」

「お兄ちゃ〜ん!心配しないで!私、この人に助けて貰ったの!ガジュ様、私の王子様!」


 現れたハクアにノアが抱き着き、全てを察したユン達が素早くガジュの前に立ちはだかる。因縁の相手とその妹。こうなってしまった時の対応は、すっかり手慣れたものだ。


「ハクア……。俺は妹の存在すら教えられないほど信頼されてなかったのか?まぁそりゃそうだよなぁ。妹がいるなんて言ったら何されるか分かんねぇもんなぁ!」

「つい最近見つかったんだ。俺も実際に会うのは今日で二回目。お前に言うタイミングがなかっただけだ。」

「何々?お兄ちゃん達、仲悪いのぉ?」


 分かっているのかいないか。睨み合う二人の間にノアの腑抜けた声が響き、空気が更に混沌としていく。ガジュとハクアが歪み合い、ノアとハクアが兄妹で、ガジュがノアの恩人で……。相関図を書いたら何本線があるのか分からないが、とにかく今すべきことは家に帰ることだ。


「シャルルちゃん、学校に印書いてるでしょ?今すぐ帰ろう。もう一秒の猶予もないぐらい今すぐ!」

「同感です。このままここにいたらガジュが森を破壊する気がします。」

「待ってくれ。少しガジュに話したいことがある。」


 ユン達が帰還を急ごうとした時、ハクアから声がかかる。こう言われては流石に帰るわけにもいかない。シャルル達はガジュの前から少し動き、あくまでガジュの暴走を止めようという心構えで横につく。


「何だよ。俺は一切話したいことはねぇ。そもそも俺はお前を殺すために黒曜等級を目指してるんだ。お前がこうもノコノコと現れるなら、今ここで殺してやってもいいんだぞ。」

「こんな所で冒険者同士が殺し合いなんてしたらアルカトラどころじゃ済まないぞ。俺を殺したかったら黒曜まで上がって、無法地帯のダンジョン内で殺すといい。それより、お前は今学校で教師をしているらしいな。」

「それがどうした。可愛い妹に会いに来たお前と違って、こっちは生きるのに必死なんでな。」

「先に言っておこうと思ってな。ベリオット冒険者学校創立祭、俺達はあの祭りに参加する。」


 ベリオット冒険者学校創立祭。


 つい最近教師になったばかり、加えて教職に全く慣れていないガジュからすれば記憶の片隅にある程度だが、校内では最大級のイベントだったはずだ。昼コースと夜コース。普段はネチネチと悪口を言い合っている二組が、正面切って模擬戦を行う戦いの祭りである。その規模はベリオット全体を巻き込み、付近の住人達はその派手な争いを酒瓶片手に観戦する。


「なんであんなもんに部外者のお前が参加するんだ。あれは学校の祭りだぞ。」

「あの祭りの趣旨は、新人冒険者達に集団戦闘の極意を学ばせること。それ故に、昼コースと夜コース両方に黒曜等級冒険者が参加して教員役を果たすんだ。いわば特別講師だな。俺達はその役だ。」

「へぇ、それで?お前らはどっちの味方するんだよ。」

「夜コース、ノアもいるからな。」

「はっ、丁度いいじゃねぇか。」


 ガジュ達は昼コース。そしてハクア達が夜コースの一員として祭りに参加するとなれば、気分は最高だ。創立祭には勿論ガジュ達教師陣も参加できる。つまり正当なルールの元にハクアを叩き潰せる、絶好の機会である。


「なんだかんだやり合うのは初めてだなハクア。覚悟しとけよ。てめぇの肉親ごと、俺が葬り去ってやるよ。」

「祭りだというのに物騒な奴だな。言わなくても分かるだろうが祭りはあくまで模擬戦だ。精々派手に盛り上がろうじゃないか。」

「ばいば〜い、ガジュ様!お兄ちゃんと違って私はいつでも会えるから!今度は()()()()で遊ぼうね♪」


 そういってガジュ達より早くハクア兄妹の方がその場を去っていき、残されたガジュの筋肉だけがただ躍動していく。

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