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33.適性検査

「えー今から第六十二回適性検査を開始する。受験者は一列に並び、姿勢を正して話を聞くように。」


 翌日。ガジュ達『クリミナル』の一行は、冒険者協会の敷地内にある広場へと集められ、役人の話をぼんやりと聞いていた。周囲には数人の少年少女達が揃いのジャージに身を包み、同じくぼんやりとした表情で立ち尽くしている。アルカトラで着ていた囚人服とダラから譲り受けた防寒着しか服装のレパートリーがないガジュ達にとって、ジャージを支給された事は嬉しい限りだが、それ以外の点に関しては不満しか抱いていなかった。


「ねぇガジュ……。なんで僕らこんな面倒くさそうな会に参加させられてるのさ。適性検査?とか僕聞いたこともないんだけど。」

「俺も詳しくは知らない。数年前に冒険者の年齢制限が撤廃されて、十八歳未満も実力さえあれば冒険者になれると聞いていたが……まさかこんな試験があったとはな。」

「何でそこに僕らも巻き込まれてるのさ。ガジュとキュキュちゃんは成人してるし、僕の年齢は秘密だけど一応十八は超えてるよ?」

「全員不安材料しかないからですよ。十八歳以下の子供を冒険者にするのと同じぐらいには。」

「すみませんすみません。私が獣人であるばっかりに。すみませんすみません。」

「そこっ!静かに話を聞け!」


 横一列に並んだ四人がボソボソと言い合っていると、目の前の役人から盛大に唾が飛んでくる。


 脱獄囚が成果をあげても信用はしないし、金剛等級へ飛び級なんてこともさせない。だが試験ぐらいは受けさせてやろうじゃないか。


 冒険者協会によってその判断が下されただけでもかなり幸運なことだろう。ガジュ達はてっきり門前払いをされたものだと思っていたが、どうやら一応対応を考えていてくれたらしい。その対応というのが子供向けの適性検査というのに関しては不満が残るが……まぁ突破すれば問題ないだろう。ガジュはそう思考し、役人の話を傾聴する。


「適性検査は筆記試験と戦闘試験の二種だ。この二つの平均点によって貴様ら新人冒険者の等級は決定される。といっても両方満点でも白銀、加えてこれまで試験で金等級以上からスタートした冒険者はいない。飛び級などという甘いことは考えず、合格点を取ることだけに注力しろ。」

「質問でーす!合格点って何点ですかー!」

「百点満点中三十点だ。冒険者協会は常に人手不足だからな。その程度の人材でも受け入れる。」


 よくもまぁこのお堅い雰囲気の役人にそんな緩いノリで質問できるものだ。ガジュがユンに対してある種の感心を抱いていると、広場の脇から大量の役人が現れた。


「まずは筆記試験からだ。全員場所を移動してもらう。」


 筆記試験。その言葉を聞き、ガジュの顔が引き攣っていく。



 ◇◆◇



「おっつおっつ!シャルちゃん何点だった?」

「八十六点です。一般常識はともかく魔物の生態や魔法の知識が難しかったですね。」

「ひょえ〜!流石シャルちゃん!僕とは真逆だね。一般常識がかけすぎているユンちゃんは六十三点!何とも微妙な点数です!キュキュちゃんは!?」

「すみませんすみません。無学な愚か者なので四十五点です。計算問題や思考問題でしか点を取れませんでしたすみませんすみません。犬の知能ではこれが限界です。」


 数十分後。筆記試験を終えた三人は一堂に介し、それぞれの点数を報告し合っていた。


 筆記試験の内容は多種多様。冒険者活動に関係ない一般常識や計算問題、これから討伐することになる魔物の知識、パーティを組めば必ず共闘することになる魔道士との連携のため魔法の知識など様々だが、どれも元囚人達には中々に厳しいものだ。とはいっても合格点は三十点以上。三人は勿論、付近にいる冒険者志望の少年達もそこまで絶望的表情をした者はいない。


 日夜魔物と戦いその命を散らす冒険者達はいわば使い捨ての存在。


 適性検査というこの制度にしても、所詮は体裁だけの無意味なものだ。ユン達がある種の納得を抱きながら笑っていると、そこに見るからに悲しげな顔をした男が現れる。


「お、おかえりガジュ。どうだった?」

「まず言い訳をさせてくれ。七年冒険者をやっていた人間から言わせてもらうとな、魔物の生態さえわかれば冒険者なんて生きていけるんだよ。計算問題なんて使った事もない。さっさと功績をあげて金剛等級にでもなっちまえば、金の管理も何もかも冒険者協会がやってくれる。」


 広場に帰ってきたガジュは大層慌てたような表情で舌を回し、額から汗をダラダラと流していく。その様を見た瞬間、『クリミナル』の面々の頭に嫌な想像がよぎり、ガジュへ向ける視線が冷めきっていく。


「はぁ……。何点だったんですか一体。シャルより十二も年上で、七年も冒険者をやっていた男は。」

「うっ!に、二十八点……。」


 ガジュの口から放たれる絶望的点数に、ユンとシャルルの口からは嘆息が漏れ出していた。

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