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30.魔物達の後始末

「ガジュ!あまりに火力を出しすぎです!シャル達が避難誘導を済ませているからといって怪我人が出るかもしれないような攻撃を放つのは道理に反します!」

「そんなこと言われても仕方ないだろ……。安心しろ、ちゃんと凍龍は撃破した。見てくれこのどでかい死体。これを冒険者協会に見せたら俺達はあっという間に金剛等級だぞ!」


 クレーターと呼ぶべきえぐれた地面の上に転がった凍龍の死体、その上にガジュは転がり駆けつけたシャルルに破壊の成果を見せつける。周囲に寒さをばら撒き、地面と魔物を喰らいながら村を襲おうとしていた古代の魔物。全てが脅威的な凍龍を一撃で撃破した。『クリミナル』の面々からすれば然程驚きようのないその事実に、ハクア達は震えていた。


「こんな……こんな事が出来たのか。昼夜を問わず暗くなるだけでこの破壊力……七年も気づかなかったのが不思議なぐらいだな。」

「俺自身もそう思うぐらいだ。思い込みってのは無慈悲なもんだな。」


 羨むような、惜しむような視線がガジュに向けられ、嘲笑うような、戯けるような笑みを返す。『カイオス』で荷物運びをしていた時とはもう違う。ただ圧倒的なまでの破壊力だけを持ったガジュは、一同に指示を出していく。


「これで問題は半分解決した。後はスノアスキュラだ。空の明るさからして、俺達が倒した分とハクア達が倒した分、ついでに凍龍が倒した分を含めてもまだ百には届いてない。さっさと始末をつけるぞ。」

「げっ、まだユンちゃんを働かせるの……!?僕のお陰でガジュは本気を出せたようなものなのに!」

「前半のスノアスキュラ退治でお前何もしてないだろ……。労働量でいえばお前はまだまだ最下位だ。キュキュとシャルルなんて動きっぱなしなんだからな。」

「いえ私などという犬は働くために存在しているので気にしないでください。寧ろあんな量の蜂蜜を食べておきなが戦いもせずスキルを使うだけなど申し訳ないぐらいです。すみませんすみません。」


 雪が溶けて下の草が露出した大地に頭を擦り付け、キュキュがいつものように謝罪を繰り返す。そのやかましい言葉を遮るようにハクアが剣を抜き、その細い刀を一拭いする。


「労働量の話をするなら俺が一番下だ。今回の依頼は箸休め程度に思っていたし、使える魔力もなかったから手をこまねいてたが……ここまでされたら俺も本気を出すしかない。スノアスキュラは、俺が倒す。」


 ハクアがそう言って凍龍の肉片に剣を突き立て、一瞬で大きな肉の塊が枯れ果てていく。まるで何かを吸収するかのような動きの後、ハクアの剣は光り輝き刀身から光の槍が放たれていく。


「対象、スノアスキュラ。抹殺しろ。」


 それだけ言い放ち、光の槍は四方へと離散。それを一瞥し、ハクアは剣を納めた。


「相変わらず便利な力だな。魔道士でもないのに魔法染みた力が使えるんだったか?」

「あぁ、俺の剣の中には精霊が住んでいる。俺は倒した魔物の魔力を餌として捧げることで、こいつに魔法を使わせる事ができる。それが俺のスキル、【魔法剣】だ。」


 ガジュもよく知っている極めて便利な力。住んでいるのは光の精霊らしいが、放てる魔法は多種多様。先ほど使用した遠距離攻撃や剣に光を纏わせた近接火力の強化、加えて光のシールドに高速移動。そこにハクア自身の剣術が加われば、倒せない魔物などそれこそ凍龍ぐらいだろう。


「スノアスキュラはこれで全部倒したはずだ。どうするガジュ、今から喧嘩でもするか。」

「あぁ?言ってるだろ、俺は正当な喧嘩しかしねぇ。お前を殺すのはお前らに奪われた生きる権利を取り返してからだ。」

「それならここでお別れだな。凍龍を倒したのは間違いなくお前だ。いくらでも冒険者協会に成果を主張するといい。それとこれもくれてやる。」


 吐き捨てるような言葉と共にハクアから白い袋が投げ捨てられる。訝しみながらガジュがその中身を確認すると、袋には何匹かのスノアスキュラの死体が詰められていた。


「凍龍が出現する前に俺達が倒したスノアスキュラだ。それと村を探せばたった今倒した五十匹弱の死体も転がってる。全部回収してそっちの手柄にしてくれ。」

「何だ急に優しくして。俺の力を見て今更悔い改めたか?言っておくが俺はお前らの仲間に戻ったりはしない。」

「そんな事は分かっている。お前が凍龍を倒してくれなかったら俺は死んでいた。その場合は袋の中のスノアスキュラも、今倒した分も蘇ることになっていただろう。。こいつらを倒せたのはお前のお陰でしかない。スノアスキュラも凍龍も功績はお前が得るべきだ。」


 これ以上の言い合いはしない。そう宣言するようにハクアは踵を返し、レザ達を引き連れてその場から去っていく。厳しいのか優しいのかガジュにはよく分からないが、貰えるならば貰っておこう。ガジュがそう思った時、ハクアの口から言葉がこぼれ落ちるのを耳にした。


「ガジュ……真実を見極めろよ。」


 真実。その言葉の意味を考えながら、ガジュは凍龍の死体を解体し始める。

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