幻獣様と異世界の乙女。19
かなりの人数が隠れて、この機会を狙っていたらしい・・。
こちらの騎士さん達が、捕縛はしたものの他の人も呼んで・・急いで騎士団の方へ連れていこうとする。
ヴィオは、白銀の狼のまま・・
私を守るように、捕まえた人達をじっと見ている。
捕まった人達は、私達をギロっと睨んで・・
「「どうせ・・お前らは自分達の国しか守らないんだろう!!」」
え・・?!!
思わぬ言葉に目を丸くする。
捕まった他の人達も、ここぞとばかりに一斉に言い出す。
「そうだ!!ロズやダズの事なんて、どうでもいいと思ってるんだ!」
「自分達の国さえ良ければ、守護幻獣のない国なんて・・」
そうか・・
自分達の国を守ろうとしてるなんて・・この人達は知らないんだ。
そんなの仕方ない・・
仕方ないけど、ヴィオは他の幻獣さん達が心配するくらいロズやダズの為に力を使ってて・・。あのチカチカと弱々しく光るヴィオの力を思い出すと、無性に腹が立った。
「ヴィオが、他の幻獣が貴方達をどうでもいいなんて・・、誰が言ったの!?」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出て、
狼のヴィオも、ターシェさんも私を目を丸くして見るけど・・、勢いが止まらない。口々に言っていた人達も目を見開いて、こちらを見る。
「誰が!!いつ!!貴方達を心配じゃない!なんて言ったの!??」
私がそう言うと、最初に言葉を放った男の人が私を怒ったように見て・・
「もう何百年も守護幻獣もいない為に、こっちは苦労してるんだ!!それというのも、先祖の犯した罪のせいで・・」
「その罪のせいで・・って、言っておきながら私も、ヴィオも狙うのは何故!?そんな事をしなければ、もっと早く幻獣を迎えられたかもしれないのに・・、どうしてそんな事をするの!!?」
多分・・、今まで生きてきた中で一番怒鳴ってる・・。
こんなに怒鳴ったことなんてないから、もう心臓がドクドクいってる。
しかもなんだか泣けてきた・・。
なんで泣くの・・私。
ボロボロ泣けてきて・・、狼のヴィオが私の涙を舐めとろうとする。
男の人達は、私の様子をじっと見ていて・・、私は涙を手で乱暴に拭きつつ、なんとか説明しようとした・・。だけど、な、涙が止まらない〜〜・・。
「ヴィオは・・、呪われて・・、本当に大変だった・・。死にそうになったのに、ロズやダズが心配って・・言ってて・・、一生懸命お祈りしてるのに・・」
「キサ・・もういいよ」
「よくない!!力だって・・弱るくらい祈って、お清めだってしてたのに・・」
ヴィオが鼻先を、私の首元をすり寄せる。
そっと毛並みを撫でると、ヴィオが目を細めるので・・、涙を拭きつつ撫で続けていると、ターシェさんが呆気にとられている人達を静かに見渡す。
「・・聞いた通りだ。お前らの国が何百年も幻獣を迎えられなかった理由を誰かや、何かのせいにしている以上・・神は求めに応じない。それでも、こいつは何度も命を狙われ、大事に想っている「異世界の乙女」に対して、危害を加えようとしたにも関わらず、お前達を心配し・・祈っている」
「な・・、そんな・・」
最初に怒鳴った人が、目を見開き・・そして、項垂れた。
「・・・だって・・、もう何百年も」
ヴィオは、ゆっくりその男の人達の前に進み出る。
と、息を詰めてヴィオを皆一斉に見る。
私はヴィオが心配で、そっと側に寄り添うけど・・、大丈夫と言わんばかりに少しだけ目をこちらに寄越して・・、そして男の人にゆっくりと話す。
「・・全ての清めが完了するまでは、長い年月が掛かる・・。けれど、我々幻獣がロズやダズを見捨てない。それを約束する為・・雨を降らせる」
「・・・え・・」
「雨が降る度に思い出してくれ。幻獣は・・神は、ちゃんと見守っているって事を」
ヴィオがそう言うと、パラッと雨が降り出した!!
皆、一斉に空を見上げて呆気に取られている。私は、ヴィオを見て・・、
「この雨、ヴィオが・・?」
「ううん、神様だよ」
その一言に、男の人は嗚咽をあげる。
ニケさんが静かに立つように促すと、ゆっくり立ち上がり・・「すまない・・」と、一言呟いて、他の人達と一緒に騎士団へと向かっていった。
雨がやがて上げると、虹が出て・・。
できればこの虹を、さっきの男の人たちも見ていたらいいな・・と、思った。




