幻獣様と異世界の乙女。15
そうして・・ロズとダズの内通者がいる可能性があるとスメラタさんから連絡を受けて、神殿では改めて警備や警護のする人達の洗い出しをしているそうで・・。
それまでは、ニケさんやベルナさんがしっかり警護する事になった。
「・・といっても、以前通りのような気もしますね・・」
「そうだね、でも騎士達はやっぱり緊張してるね」
朝のお祈りが終わって・・、仕事がひと段落したヴィオとベッドに腰掛けて話すけど・・。そっかぁ、やっぱり緊張・・しているんだ。
「ベルナさんなんかはいつもと変わらない感じだから・・」
「うん、ベルナはいつも優しいよね」
「・・ニケさんだって優しいですよ?」
「ニケは、時々嫌な奴だからなぁ・・」
こらこら・・。
私はヴィオをちょっと諌めるように見ると、ふいっと視線を逸らす。
「僕だって頼りになるでしょ?」
・・どうやらちょっと拗ねているらしい。
大きくなっても、小さい時と変わらない姿に小さく笑う。
「・・頼りにしてますよ」
そう言うと、嬉しそうに笑って私の頬を嬉しそうに撫でるヴィオ・・。うーん、大人のヴィオは照れる・・。今度は私が目を逸らす番だ。
「・・お清めも、だいぶ慣れましたか?」
「もうすっかり!雨をロズとダズに降らせて・・ちょっとずつ綺麗にしてる」
なかなか綺麗になるまでには、歳月が掛かりそうだけどね・・
そう話すヴィオはちょっと寂しそうだ。
「・・何かあったんですか?」
「うん、この間・・、国交が長い間ないにも関わらず、街の人がロズとダズが荒れているって言っていたでしょう?ケルムも苦労しそうって・・」
ケルム・・。
不死鳥のアイムさんの国だ。
私は小さく頷くと、ヴィオは真っ直ぐに前を見て・・
「国を守護している身としては、やっぱりロズとダズが他人事じゃないし・・、早く綺麗にしたいんだ。でも、贖罪を償わないといけない・・。その間、他の国も大変だ・・。もっと、どうにか出来ればなぁって・・」
私は、すっかり大人意見を言うヴィオを思わずまじまじと見てしまった。
本当に幻獣って優しいんだなぁ・・と、感動してしまった。
ヴィオは私の体をそっと抱き寄せる。
「・・本当はキサを傷つけたロズとダズを許せない気持ちもあるんだ・・。だけど・・」
「それはヴィオも同じで何度も狙われたし、呪いまでかけられたじゃないですか・・。でも、そう思いきれない優しいヴィオで、私は嬉しいですよ」
小さい頃から私を大好きだと、あれだけ言ってたんだもん。
それだけでも十分ですよ。
それよりも、顔の見えない・・自分を傷つけた国の人達を心配して、どうにかできないかと思っているヴィオの優しさが何よりも嬉しかった。
「・・・・・そういうヴィオ、好きですよ・・・」
小さい、小さい声でそう言うと、ヴィオが嬉しそうに笑ってくれた。
ううう・・、は、恥ずかしい。
なんとか話題・・、話題を変えよう!!
「星のカケラを瓶に入れておいたんですけど・・、まだいくつかあるんですよね。テラスにいくつか飾ったら、夜淡く光って綺麗かなぁって思ったんですけど・・」
私がそう言うと、パッと顔を明るくして・・
「じゃあ、瓶をもう少し貰って等間隔に置こうか?」
「あ、それもいいかもですね」
「決まり!ベルナかマルクに頼んで貰ってこよう!」
うんうん、そうしよう。
部屋の扉の前には、いつもの騎士さん達が警備してくれていて・・、マルクさんがいる部屋まで一緒に同行してもらう。何をするにもこんな感じで申し訳ないなぁ・・。
中庭に面した廊下を歩いていると・・
不意にドドン!!と何かが落ちてくる音がする。
騎士さん達は慌てているけれど、私とヴィオはふわり・・と温かい感覚がする。・・これって、もしかして同じ幻獣ってこと・・?そう思って二人で音のした中庭を見ると・・
「こんにちは〜!シルヴィオ、キサ〜!!」
この勢い・・、アイムさんかと思ったら、トーラ国の一角獣のターシェさんがニコッと笑って立っていた!!




