幻獣様と異世界の乙女。10
翌朝!
カラッと晴れた晴天にヴィオの顔も晴れ晴れとしている。
「キサ!まず朝の神殿のお祈りと、ロズとダズの清めをしてくるね!!」
「はい、行ってらっしゃい」
嬉しくてたまらないヴィオは私にそういうと、ニケさんに笑われても気にもせず神殿へ一緒に向かっていった。
うん、ちょっと嫌な相手・・とはいえ、
楽しみもあれば仕事も頑張れるようだし・・良かった。
私も起きて身支度を整える。
ヴィオのお祝いの時にテラスから街を見るくらいしか知らないので、ちょっと楽しみだ!小花のピンを今日も付けて、バッチリである!
待っている間に、スメラタさんから貰った本を読む。
この世界に関する事・・らしいが、ものすごく分厚い!辞書くらいあるんじゃないか?って分厚さだ・・。ヴィオもいくつかマルクさんから聞かされた話もあったようだけど、まだまだ知らない事だらけだ・・と、一緒に読んで驚いていた。
この世界ができた成り立ちから、幻獣が国に送られるようになった経緯も書いてあるんだけど・・、長い!現在、少しずつ読み進めている所だ。
なんでもこの世界・・。
神様が作ったのはよいものの、国が持つ力が弱すぎて・・そこに住んでいる人が次々に弱ってしまう・・。そこで神様は考えて、自分の力が強すぎて・・直接国に送る事はできないので、幻獣を送って・・幻獣を通して神様の力を注いだらしい。
だけど、今度は幻獣をちゃんと育てられない・・
または自分達の都合の良いように育てる人も現れて・・、
神様が選んだ「異世界」の人間によって育てる事にしたらしい。
なんというか・・神様もだけど・・異世界の人間も大変だな・・そう思っていると、ちょうどヴィオが仕事を終えてこちらへ戻ってきた。
「ただいまキサ!!」
「お帰りなさい、お仕事どうでした・・?」
「うん、スメラタさんの説明通りお清めもやってきたけど、大丈夫!うまく出来たよ」
嬉しそうなヴィオの顔を見てホッとした。
そっか・・、何か危険な目に合わなければいいな・・と思っていたので、胸を撫で下ろした・・。
ヴィオはそんな私の様子を見て、
「キサ・・心配してくれた?」
「それは・・しますよ。なにせ守り月初日ですし、初めてのお清めでしょう?」
ヴィオにそういうと、いきなりギュウッと力を込めて抱きしめてくる。く、苦しいんですけど!?
「ヴィオ?!!」
「嬉しい!そんな風に心配してくれて嬉しい!!」
当たり前の事なのに、そんな風に喜ぶヴィオが可愛くて・・、尻尾が思いっきり振ってるのを、テラスのガラス越しに見えて、ちょっと笑ってしまう。でも苦しいのには変わらないので離して欲しい・・。
朝食を一緒に食べてから・・
いよいよ一年を経て、街中を散策だ!!
う、嬉しい〜〜!!
不自由のない生活だったけど、以前のように気軽に買い物にも行けなかった身としては・・大変嬉しい!!・・とはいえ、ヴィオは大事な幻獣様だし、私も異世界の乙女・・なので、今回は変装していく。
「・・そういっても、ヴィオの耳と尻尾は大丈夫なの?」
「あ、うん。隠せるから・・」
そういって、魔法を掛けたのか・・
一瞬で耳と尻尾が消えてしまう!えええーー!!そんな事できたの?!
「し、知らなかった・・」
「普段も隠せるんだけど・・、キサ、尻尾とか耳・・好きでしょ?」
・・う、そ、その通りです・・。
頭を撫でるついでに、耳もよく撫でてます・・。尻尾も見ていて癒されてるし・・。
「・・よく見てますね・・」
「そりゃ、キサだもん!!」
胸を張られてしまった・・。
そ、そうですか・・。そんな会話を聞いていたニケさんと、ベルナさんに笑われて・・私はちょっと恥ずかしいです。
ヴィオは、髪を軽く縛ってターバンを巻いて、いつもはあまり着ないカーキ色の長いシャツワンピースを黒い帯で腰を締め、黒いパンツを合わせている。私もいつもは白いワンピースだけど、今日は紺色の長いシャツワンピースに濃い黄色の帯をウエストに巻く。
二人で見慣れない姿に、なんだか違和感!!
「なんか・・別人みたいですね」
って、ヴィオに言うと照れ笑いしてた・・。
横に立っているニケさんが「俺もいつもと違うぞ〜」と話すと、ベルナさんが呆れたようにニケさんを見て・・、そんな様子に笑ってしまう私だった。




