幻獣様と異世界の乙女。9
あっという間に明日が守り月!
ヴィオの初担当月でもある。
守り月は、自分の守護する国を守る力が強くなるから、その間は色々な国に行く事ができて・・、幻獣同士で困っている事を解決しあったり、親睦を深めたりしているらしい。
・・親睦はすでにバッチリな気がする。
そして、身から出た錆とはいえ・・穢れに穢れたロズとダズ国を、手分けして浄化する事になった・・。
ヴィオとしては、何度も襲われた上に、呪われて危険な目に合ったし、異世界の乙女と一緒にいられない原因を作った国なので、大変不本意だろう・・。でも、ヴィオは幻獣としてしっかり仕事をせねば・・と、スメラタさんに浄化の方法を教えてもらっていた。・・うちの子えらいなぁ!!
っていうか・・、浄化・・どうするんだろう?
ベッドに腰掛けていると、朝の神殿のお祈りが終わったヴィオが私の腰にぎゅっと抱きついて寝転ぶ。・・・耳がピクピク動いて尻尾が期限良さそうにパタパタと振られていて、大変可愛い。
「・・そういえば浄化って、何をするんですか?」
「うん、まぁ雨を降らせる・・かな」
「雨・・・???」
思わず目をパチクリさせると、ヴィオはそんな私の様子を見て、ちょっと可笑しそうに笑う。
「穢れているから・・、水で洗い清める必要があるんだ。でも、毎日雨を降らせる訳にはいかないから・・、少しずつ・・だけどね。まずしっかり洗って綺麗にして、それからちょっとずつ幻獣の祈りで更に綺麗にしていくけど・・、相当時間がかかると思う」
「そ、そうなんだ・・・」
神社でも、手を洗ったりしてたけど・・
こっちの世界でも水で洗い清める考え方は同じなんだなぁ・・。
ヴィオはちょっと体を起こして、私の頬にキスするので驚いてしまう!
い、いきなりはちょっと・・。
「浄化はするけど、こっちの神殿からやるから・・、キサとはずっと一緒だからね!」
「あ、は、はい・・」
「キサ、大好き!守り月の時はお出かけしようね!」
「あ、そうか。お出かけ・・できるんですね」
だったら街とか行ってみたいなぁ・・。
ヴィオとお出かけ!の言葉に私の顔も明るくなると・・、ヴィオも嬉しそうに私を見つめる。
「どこに行きたい?一緒に行ける魔法をスメラタさんに教えて貰ったから、どこの国でもいけるよ?」
そうなの?!
スメラタさん・・本当にヴィオに甘いなぁ〜・・。
「まずは・・、私、パルマの国を・・とりあえず街を一緒に歩いてみたいです。ほら、私達・・ほぼ神殿の中で過ごしてたし・・」
ヴィオもそういえば・・という顔になる。
私達・・、この世界にお互い来てまだ周囲がどんな所か本でしか知らないからね・・。
「そうだね、自分の守る国をまずあちこち見てみようか?」
「はい!楽しみです」
私がそう返事すると、ヴィオは腰に擦り寄る。
「・・キサ、一緒にいてくれて嬉しい・・。どこに行くか、決めよっか」
頷いて、ヴィオの頭を撫でると嬉しそうに目細める。
うん、今日は大人扱い・・じゃなくてもいいのかな?頭を撫でると、子供扱いして!って言われちゃうけど、本日は良いみたいだ。この際なので、よく撫でておいた。
ニケさんやベルナさんとも警護の事もあるので、
場所を相談して・・
神殿の近くの街を歩いて、浜辺に行く事になった。
断崖絶壁の上に建てられた神殿だから、海もすぐそこだ!
ヴィオは二人きりで行きたかったらしいけど・・、いや、まだ幻獣様を始めたばかりですから。私に宥められていると、ニケさんがニヤニヤ笑って・・
「キサ!浜辺に色々落ちているものがあるんだけど、面白いものがあるんだぜ?」
「へ〜、どんなものが?」
「一緒に歩いて探してみるか?」
「「「ニケ!!!!!」」」
・・ベルナさんと、ヴィオの声が重なるけど・・、一緒に皆で探そうか。
ジロッとニケを睨みつけつつ、私を腕の中にすっぽり抱き込むヴィオ・・。まぁまぁ、私は君と一緒にいるから・・。そう思って、頭を撫でようかな〜、どうしようかな〜と思ってヴィオに、
「頭を撫でていいですか?」
と、聞いたら笑顔で頷いてくれたので・・
よく撫でておいた。




