幻獣様と異世界の乙女。1
翌朝、ヴィオは朝早く起きる。
私も一緒に起きようとすると、小さく笑って・・
「奥の間は、僕しか行けないし・・まだ早いから寝てて。体治ったばかりだし」
「え、でも・・」
「・・そばにいられない間は、部屋にいてくれると安心するし・・」
どれだけ心配なんですか。
横になったまま、ヴィオを見上げて・・
「大丈夫ですよ?」
って、言ったけど・・決意は固いらしい。
私の額にキスをすると、私に毛布を掛けて白いローブに身を包んで颯爽と部屋を出ていった・・。
じゃあ、まぁ・・いっか?
しっかり二度寝をして、お祈りが終わったヴィオに起こされた・・。
私は変わらず白いワンピースを着て、一緒に朝食を食べに食堂へ行く。ニケさんと、ベルナさんも今日は一緒だ!
「ニケさん、ベルナさん、おはようございます!」
「おはようございます。先日は本当におめでとうございます!」
ベルナさんが満面の笑みでお祝いしてくれるけど・・
おめでとうって、封印を解かれた事だよね?
とりあえず笑って頷くと、ニケさんが私をまじまじと見て・・
「なんか変わらないな・・」
「え?封印を解かれると、何か変わるんですか?」
「それはわからねぇけど、だってけっ・・「「「ニケ」」」
隣に立っているヴィオがじっとニケさんを見る。
・・ん?
何かあったの???
私と、ベルナさんでニケさんと、ヴィオを交互に見ると・・、ニケさんがニヤッと笑う。
「・・もしかして、まだ言ってねぇの?」
「うるさい、黙れ」
「え〜〜、なんだそれ!面白すぎだろ!!」
ニヤニヤ笑うニケさんから、私を守るかのようにヒョイっと私を抱き上げて、食堂の椅子に座らせるヴィオ・・。何??何かあったの??ヴィオを見上げると、ちょっと顔を赤くして・・
「ニケの言う事は、全部無視して」
「・・仮にも剣の先生ですよ・・」
あまりな言いように、そう言うと・・ニケさんが「そうだそうだ〜!」と言うので、横にいたベルナさんに静かに叩かれていた。・・・相変わらずのコンビだな。
朝食後は、神殿に参拝に来る人へ祝福をする為に衣装を整えるヴィオ。
お祝いの時に付けていた、銀の鈴を手首につけ、
白いベールを頭の後ろにふんわりと掛ける。
「・・綺麗だね・・」
準備を終えたヴィオをまじまじと見て、そう呟くと・・
「キサのがずっと綺麗だよ」
ヴィオはニコッと微笑む。
うん・・、君は今日も可愛いなぁ。
神官さんと、ちょっとまだニヤついているニケさんが先導に立ち、その後ろから私とベルナさんが礼拝堂へ付いていく。なんでも、初めての参拝客への祝福は、レア中のレアらしく・・、満員御礼状態らしい。
その分、前回の事もあったんで・・警備がものすごい。
ズラッとニケさんと似た服を着ている人が、神殿の礼拝堂の中まで並んでいる。騎士さん・・なのかな?
礼拝堂の壇上の上には、マルクさんが立っていて・・
私とベルナさんは、壇上の斜め後ろに立ち、ヴィオが入り口から入ってくる姿を見る。
ヴィオの名前が呼ばれると、シンと静まり返った礼拝堂に、光がこぼれ落ちて・・、ヴィオの被ったベールが淡く光り、歩く度に鈴の音がシャラシャラと鳴る。
「幻獣シルヴィオ様による祝福を受ける幸いを・・」
そう言うと、シルヴィオの手から淡い光が出てくると、礼拝堂いっぱいに光が包まれて・・、雨のように体に光が染み込んでいく!?わぁ・・と歓声が上がって、私は周囲の人の嬉しそうな顔を見て、それからヴィオを見て・・
柔らかく皆を微笑んで見ているヴィオに、誇らしくなる。
あんなに立派になって・・。ああ、もう完全に親モードだな。
でも、大人になったヴィオの横顔を見ると・・、やっぱりなんというかドキドキしてしまう・・。この複雑な感情・・いつ穏やかになるのかなぁ・・。




