幻獣様と異世界の乙女。
ヴィオとずっと一緒にいられる!・・本当に嬉しかった。
ただその後、すぐに熱を出しちゃって・・
目が覚めた時に混乱して、なんでヴィオのそばにいるんだっけ??これって夢??なんて思っちゃって・・。ヴィオに笑われたっけ。
「夢じゃなかった」
って、呟いたら・・嬉しそうに抱きしめてくれて・・嬉しかった。
ちょっと・・いや、だいぶ照れくさかったけど。
「キサ?大丈夫?」
中庭のお花を考え事をしていて、知らず凝視していた私を心配そうにヴィオが声を掛けてきて、ハッとする。ようやく体を起こせるようになって一緒に散歩しているというのに・・。
「大丈夫・・、ちょっと考え事してただけで・・」
「そう?」
手を繋いでいるヴィオが、私の顔を大丈夫かと覗き込む。
や、やめてくれ〜〜!!
まだヴィオの大人になった顔を見慣れてないというのに・・。思わず顔を赤くすると、小さく笑って・・
「まだ慣れない?」
「・・慣れないです・・」
だから、こんなに格好良くなるなんて知らなかったんだもん。
せめて銀狼になって欲しいんだけどな・・。
それか、小さい頃のヴィオなら安心できるんだけどなぁ・・。
初めて異世界の乙女として祝福を受け、封印を解かれた私だけど・・、実は長く封印を解かれた事がなかったらしい。
あまりに前例がない事尽くしの私とヴィオに、スメラタさんが自分の国にある「異世界の乙女」について古文書を調べてくれたおかげで、今回の結果に結びついたけど・・。
私はお祝いの後、熱で倒れてしまって知らなかったけれど、スメラタさんがいうには、伝承がどこかで途切れていたり、事実と違う内容が書き加えられているものもあったらしい。
「・・恐らく、「異世界の乙女」を自分達に都合よく使いたい・・という作為的なものもあるだろう」
と、いう何気に怖い事をサラッと言ったそうで・・、
これではいけない!!と、マルクさんも、ベルナさんや他の神官さん達と一緒にパルマにある古文書を探し出して、一度各国の古文書を集めて、内容を確かめ合う事になったらしい。
そんな訳で、どんな力があるのか微妙な立場の私だけど・・まぁ、ヴィオと一緒にいられるし、いいかなぁ?って思ってる。・・とうのヴィオは、時々私を見て、何かを言いたげにしている事があって・・。その度に聞くんだけど、はぐらかされちゃうんだよね。
「ヴィオは、明日から本格的に仕事だっけ?」
「そう・・。ちょっと緊張する」
少し照れくさそうに話すヴィオに、新人っぽいなぁと微笑ましくなる。
初めて仕事する前日って、確かに緊張したなぁって思い出す。
「神殿でお祈りするんだよね?」
「うん、朝、奥の祈りの間に行ってお祈りして、それから礼拝堂に参拝に来た人に祝福するって・・」
「じゃあ、礼拝堂で見てますね」
そういうと、嬉しそうに笑ったヴィオ。
大きくなっても、こういう所は変わらなくて可愛いな。
と、マルクさんがこちらへやって来る。
「シルヴィオ様、明日の神殿のお祈りについてお話しが・・」
「わかった、すぐ行く」
あ、早速前日から準備かな?
私は部屋へ行こうとすると、そのまま手を繋がれて引っ張られていく。
「あ、あのヴィオ様???」
「ヴィオ!もう!二人の前だけでなくて、今は好き合っているんだから、様はいらないの!」
「え、ええ〜〜〜??だって幻獣様ですよ?」
「キサの前では、ただの幻獣だよ」
・・いや、ただの幻獣って何???
思わず笑ってしまうけど、どうやらそばにずっといて欲しいらしい。
まぁ、スメラタさんにしばらくヴィオに構ってやれって言われたし、仕方ないか・・。そう思って、手を握り返すと・・すかさず頬にキスされる。
「ヴィオ!!!」
「だって、僕の「異世界の乙女」だし」
ニヤッと笑っていう姿が、また格好いいから・・。うまく言い返せなくて、ジトッと睨む。もう!!いきなりはやめて欲しい。




