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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女。
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幻獣様のお世話係、解任される。14


スメラタさんに魔力で体を包んでもらってから、転移の魔法で、パルマの神殿の中庭に辿り着く。



色々な花々や・・大好きになったオミの花が変わらず咲いていて・・、思わず懐かしいのと、もう・・この光景を見る事がないのかと思うと、胸がぎゅっと痛む。



「キサ!」「キサ様!!」



声のした方を振り向くと、

ニケさんと、ベルナさんがこちらへ駆けてくる。


「ニケさん!ベルナさん!!お久しぶりです!!」


私もそばへ駆けていくと、ベルナさんは泣きそうな顔をしながら笑って・・



「呪いに掛かったと聞いた時は、心臓が凍りそうでしたが・・、無事な姿を見られて・・何よりです」

「ベルナさん・・・」



思わずぎゅっとハグしてしまった・・。

ニケさんが「あ、ずるい!」って言ってるので、思わず笑ってしまう。

ベルナさんは、私を優しく抱きしめると・・ニケさんを見て、



「ニケ・・、貴方はもうシルヴィオ様の護衛に行きなさい」

「何でだよ!!」

「すぐにシルヴィオ様をからかうからでしょう!」



じっと睨むように見ると、ニケさんは不満げにベルナさんを見て、「後でな!」というとヴィオの護衛に向かっていった。



スメラタさんは、そんな様子を笑って見ていて・・


「では、礼拝堂の方へ行こうか・・」


頷くと、スメラタさんが手を差し出して・・そっと握る。ちょっと照れるんだけど、今回、靴がちょっとヒールで・・歩きにくいので助かります。



中庭をぐるっと見て、テラスが見える部屋をちらっと見る。

・・あそこに一緒にヴィオと住んでいた。

この中庭で、ヴィオの剣の練習や、魔法の練習を見ていた。


あっちの屋上で、花火を見て・・雪遊びをして・・

思い出が詰まった神殿を見ると、もう泣いてしまいそうで・・、ぎゅっと拳を握って泣かないように耐える。



さようなら・・。



そう思って、前を向き・・スメラタさんと礼拝堂まで歩いていく。


途中で来賓席にスメラタさんは行き・・私は控え室へ神官さんに通されて、椅子に座る。


幕の隙間から、マルクさんの話す声が聞こえて・・

相変わらずちょっと小柄な印象なのに、よく通る声だなぁ・・って思って、その横顔をじっと見ていると、



「半年の年月も無事に終えて、シルヴィオ様は無事成人の日を迎える事ができた!シルヴィオ様・・どうぞこちらへ」



大きな声と、礼拝堂の入り口の扉が開き・・

大きなどよめきが起きる。


幕の間から、ちょっと顔を動かして・・入り口を入ると・・



銀色の長いローブを着て、腰に緑の腰紐巻いていて・・

手首に半年前に舞った時につけていた鈴がシャラっと鳴る。



長い髪を綺麗に編んで・・

颯爽と礼拝堂へ入って一人で歩いていくる姿を見て、思わず泣きそうになる。あんなに・・大きくなって、という親心と、格好いいなぁ・・と思う恋心と、複雑だけど・・嬉しい気持ちでヴィオを見つめる。



よくこの目に焼き付けておこう。



もう二度とあんなに近くでヴィオを見る事はないだろうし。

そう思って、真っ直ぐに見つめていると・・ベルナさんが見えやすい位置に私を移してくれた。す、すみません・・。小さく笑うと、ベルナさんは小声で・・



「・・ずっと、キサ様に会えるのを待っていたんですよ。昨日はずっとそわそわしてました」



ヴィ、ヴィオ・・。

顔が赤くなって・・小さな声で「そ、そうですか・・」しか言えない。



久しぶりに会ったヴィオにどう思うのか・・、思われるのか、

ちょっとドキドキしていたけれど、待っていてくれた事が素直に嬉しくて・・、もう一度マルクさんのお祝いの言葉を聞いているヴィオを見つめる。



「それでは、異世界の乙女より「契約の口づけ」を賜りたいと思います」



マルクさんのよく通る声に、体がびくりと跳ねる。

・・これで最後だ。



ベルナさんが私の頭にベールをそっと被せ、静かに私は立ち上がる。

泣かないで、ヴィオにお別れを告げよう。

大好きだと・・、何処にいても想っていると告げよう。・・そう想って、静まり返った礼拝堂の中へゆっくりと進んでいくのだった。



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