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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女。
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幻獣様のお世話係、解任される。13


目覚めてから、私は完全に回復するまでに一ヶ月近く掛かった・・。


手紙を出して、あれからすぐ返信をくれたヴィオはすぐに動き出していたらしい・・。わ、若さの差?いや、幻獣様と比べるのがそもそも違うのか・・。



毎日のように「大好き」「早く会いたい」と手紙をくれるヴィオに、私も毎日手紙を書く。会えないのは辛いけど、言葉を通して、ヴィオがいつもそばにいてくれるようで・・、それはそれで嬉しい。


今日も手紙を書いていると、スメラタさんが部屋に訪ねてきた。



「今日は随分と顔色がいいな」

「・・その節は本当にお世話になりまして・・」



そういうと、スメラタさんはクスクスと笑ってそばの椅子に座る。


「あと10日ほどで、シルヴィオのお祝いだな・・」

「・・・はい」


「ロズとダズだがな・・、お前達に掛けた呪いが原因で皆、関わった者は神の怒りを買って死に絶えたんだ」


え!!!?

声にならず、思わず目を見開いた。



「・・当然の報いだ。神の送った幻獣を自分の思うままに動かそうとしたからな・・」


「そ、そうなんですか・・」

「前例があったから、上手くいくと思ったのだろうがな・・」



ぜ、前例があったの?!

人を思うように動かそうとする事自体確かにあり得ないけど・・、亡くなったのか・・。私が複雑な顔をしていると、スメラタさんは小さく笑って・・



「キサのように、それをおかしいと・・そう思える人間があの国にいれば良かったんだがな」


「・・私もいつも正しくいるわけではないと思いますけど・・」

「そう思う人間を俺は信用するがな」



そ、そうなのか・・。

ちょっと照れて俯くと、スメラタさんが手紙を差し出すので私はそれを受け取る。



「マルクからだ。一応祭りの流れが書いてあるそうだ」

「・・そうだった・・。流れを覚えておかないと」



前はヴィオについていけば・・まぁ失敗をする事はなかったけど・・、今回はスメラタさんが魔力で私を包んでくれるけど・・そんなに時間は持たないから、キスの時だけ一緒にいるんだよね。



そして・・

それが最後のキスになる。



手紙をじっと見て・・、口を引き結ぶと・・

スメラタさんの手が私の頭を優しく撫でる。



「シルヴィオは幸せ者だな・・」

「私も幸せですよ?」



そう笑うと、スメラタさんは静かに微笑んでくれた。

そう・・会えるのは、その時だけ。でも、それでもいい。その一時を大事にして、これからを生きていけばいい。


胸がギリギリと痛むけど、

きっと思い出になる。


そう思って、手紙をゆっくりと見つめた。




10日間はあっという間だった・・。


会いたいけど、離れてしまう。

離れてしまうけど、会いたい。


気持ちがグラグラと揺れつつも、ヴィオの手紙は毎回熱がこもっていて・・、貰うたびに赤くなる。手紙で、こんなに恥ずかしくてたまらないのに、会ってしまったらどうなってしまうんだろう。


会いたいと、好きだと、こんなに離れているのに、毎回隣で囁かれているようで・・、読んだ後、顔が真っ赤なんだけど・・。その分だけ辛いんだけど・・。



朝から、スメラタさんの神官さんに化粧をして貰って、最後までルル君とターシェさんはどっちのワンピースにするかを激戦を繰り広げていて・・、


途中でやってきたアイムさんが、「これにしよ!!絶対シルヴィオ好きだろ!!」というワンピースを私にあっさり寄越して、ターシェさんと、ルル君に怒鳴りつけられていた。



・・まぁ、結局アイムさんの選んだワンピースで満場一致されたけど。



そ、そこまで気合の入れるのか??

白い花を、ヘッドドレスのように飾って貰って・・、鏡で見ると、なんだかお嫁さんのようだな・・って思って、一人で照れてしまう・・。



「キサ様綺麗です〜〜!」

「僕もいつか着たいなぁ〜!!」

「ほらー!!俺が良いって言ったのが一番綺麗じゃん!!」


「「黙れ!!鳥頭!!」」



・・ルル君とターシェさんの声が重なり、思わず笑ってしまう。

この三人の掛け合い・・最高である。


最後に口紅を引いてもらうと、スメラタさんが部屋へ入ってくる。



「さて、シルヴィオの乙女・・そろそろ行くぞ」

「お、お願いします・・」



濃紺のローブに金色の刺繍に縁取られた正装をしたスメラタさんに手を握られると、ちょっとあまりにも綺麗でドキドキしてしまう。後ろを振り返り・・三人に手を振ると「シルヴィオによろしくね!」と言われて・・、小さく微笑んだ。



最後のお別れに・・行ってきます!!



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