幻獣様のお世話係、解任される。12
さっきまでヴィオの所にいたのに・・。
ベッドに戻った私はキョロキョロと辺りを部屋を見回すと、ターシェさんがホッと息を吐く。
「・・キサ、ずっと寝てたんだよ」
「へ?どれくらい?」
「一ヶ月」
「「一ヶ月!!??」」
驚いてターシェさんの顔をまじまじと見る。
ほ、本当に!?
私には一晩くらいの感覚なんだけど・・。
「シルヴィオが、キサの名前を呼んだあの夜・・ベッドでこんこんと寝ていて・・おかしいと思ったルルが、スメラタに確認してもらったら、シルヴィオと同じ呪いに掛かってたから、驚くわ混乱するわ、まぁ、とにかく大変だった!!」
「・・ご、ご迷惑をおかけしたようで・・あ、ヴィオ!ヴィオは?!」
私がそう言うと、ターシェさんは笑って・・
「シルヴィオもさっき目覚めたって連絡が来た。だから、キサも起きるかなって思ったんだ。同じ呪いだから・・」
「そうだったんですか・・」
ヴィオが無事だと聞いて、私もようやくホッとした。
じゃあ・・やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。
って、待てよ・・。
会えなかったせいとはいえ・・、ものすごく大胆な事をしてしまったのでは??思い出すと恥ずかしいし・・、でも、あんな風にそばにいる事はもう出来ないと思うと、また悲しくなるし・・。感情がなんだかずっと揺さぶられ続けちゃうなぁ・・。
ターシェさんが面白そうに私を見て・・
「百面相してる〜〜」
「う・・、ちょ、ちょっと色々ありまして・・」
思わず顔を両手で隠す。
泣いていいのか、喜んでいいのか・・複雑だ。
でも、もう好きだと伝えてしまった。好きだけど、会えない。そばにいたいけど、いられない。それでも好きなんだと。今は・・、もうその事実だけを受け止めよう。
そう思うと、気持ちが少し楽になって・・。ターシェさんを見て・・
「・・なんかお腹空いたかも?」
そういうと、ハハっとターシェさんが笑って私の頭を両手でグシャグシャと撫でた。うん・・まずはただいま!
そうして・・
一ヶ月寝ていた私の体は、それはそれは弱っていて・・
歩こうとすると、体がヨロヨロするし・・、
なかなか食欲もわかないので、ルル君を大いに心配させてしまった・・。
今日は中庭まで歩いて、ようやく一息いれる始末である・・。こんなに力がなくなっているとは・・。はぁっとため息をついて、置いてある椅子に座ると・・ルル君がこちらへ何かを持って走ってくる。
「レオル様からプリンが届きました〜!」
「・・レオルさん、忙しいはずのに・・」
「消化にいいから食べておけってお手紙が!」
「しかもマメだね・・」
幻獣様の手ずからのスイーツを一般人が頂いていいのだろうか・・。
大変恐縮しつつ、プリンをありがたく頂く。
しかも美味しい!!!
「美味しい〜〜、お礼のお手紙書かないとだなぁ・・」
「お手紙といえば、こちらシルヴィオ様から届いています!!」
思わずプリンをむせそうになった。
「え、て、手紙?」
「はい、まずしっかりプリンを食べて元気になってから読んで下さい!!」
・・ルル君にはお見通しのようである。
あんまりにも食べない私を心配して、プリンを食べきるまではお手紙は渡さないらしい・・。美味しいプリンを堪能してから、手紙を渡してくれた。
ちょっとドキドキしながら封筒を開いて手紙を読むと・・
私が目が覚めて良かった・・、迷惑をかけてすまなかった。
あと・・、キスも好きだと伝えてくれた言葉も、全部夢じゃないと思いたい。
って書いてあって・・。
それは私も同じです・・って思うけど、こ、これに返信するの!?って思うと・・顔が赤くなるどころじゃないんだけどなぁ・・。気持ちが伝わって嬉しい半面、会えない辛さもあって・・、複雑だけど、今は夢じゃないと伝えよう。
私もヴィオが大好きだよ。
あれは夢じゃないよ。
同じ気持ちだよ・・と。
今は、そう言葉で伝えようと思って・・そっと手紙を撫でた。




